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メディアグランプリ

生と死は同じ線上にある


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:手塚幸忠(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
「病気についての詳しい話は、前の主治医から聞いていますか?」
 
「骨髓異形成症候群という病気だということは聞いていますが……」
 
「申し上げにくいのですが、余命は既に終わっています。やりたいことがあれば今のうちにやっておいて下さい。」
 
母の主治医が変わり、最初の診察時、息子である私も一緒に来て欲しいと先生から言われ、診察室に入って言われた言葉がこれだ。
 
骨髓異形成症候群という病気は血液のガンで、悪化すると白血病となる。白血病になると、免疫力が無くなって、最後は死ぬ病気である。
 
母はこの病気が発覚してから、病院の治療のおかげで、体調はひどく悪くなることはなく、一人暮らしができるぐらいに元気だった。
 
病院に呼ばれた日も、母は比較的元気で、新しい主治医の先生がどんな治療方針を話してくれるのかと、期待と不安の中でのこの会話である。一瞬頭が真っ白になった。
 
「ホスピスに行くなど、いくつかの選択肢がありますが、どうしますか?」
 
ホスピスとは、不治の病の人が、死ぬまでの間、痛みを緩和したり、心を落ち着けたりしながら、死を待つ目的で入院する病院だ。
 
今、母はこんなに元気なのに、余命は終わっていると言ってみたり、ホスピスに行けと言ってみたり、この先生は何を言っているのだと、話を聞きながら怒りを覚えた。
 
「絶対治してやる!」
 
私はハリやお灸を仕事とする鍼灸師であり、20年近い治療経験もある。今まで多くの人を治療してきたというプライドもある。「この先生を見返してやるんだ!」という気持ちで治療を行った。母も入院ではなく、家で過ごしたいという。病院で治療する方法がもう無いのであれが、私が東洋医学の力でなんとか回復させようと、週に2~3回実家に行って治療を行った。
 
自宅で頻繁に治療するようになって、母の身体をみてみると、治療の効果が目に見えてあった。まずは、単純に元気になるということである。家に行った時に、身体がだるそうにしていて、話すのも少し辛そうにしていたのが、治療が終わると活舌が良くなり、顔色も良くなる。また、肩こりが取れるので気分もスッキリするという。
 
そして、一番驚いたことは、髪の毛が黒くなってきたことだ。年齢が85歳の母は、この10年ぐらいで髪の色も白くなり、病気になってからは、完全に白髪となっていた。しかし、治療を頻繁にするようになって少ししたら、髪の毛の根元がだんだんと黒くなってきた。実は東洋医学では髪の毛の状態は、生命力とも関係すると考えており、髪の毛の状態が良くなってきたというのは、良い兆候なのである。
 
もう一つ驚いたことは、旅行に行った際に、私の妻と子供が風邪をひいてしまったにも関わらず、母だけ体調を崩さなかったことだ。旅行中に私の子供の体調が悪くなり、旅行先の病院へ行ったら、そこで風邪をもらってきてしまった。旅行は車で行ったので、狭い車中で誰からが病原菌を持っていたら、高い確率で感染する。案の定、私と妻は喉が痛くなってきた。母は免疫力が下がる病気であり、実際に今の免疫の数値は人よりも極端に低い。母に感染したらどうしよう、と心配していたのだが、結局母は体調を崩さずに、過ごすことができた。
 
良い兆候が沢山あったので、これは病気が治るのではないかと期待して、病院の検査に行った。しかし、検査結果は変わらず悪いままだった。数値が悪化はしていないが、良くはなっていない。
 
そして数か月が過ぎ、徐々に検査結果も悪くなり、最終的には白血病に移行。その後は、少しずつガンの痛みが強くなりはじめ、一人暮らしが出来ない状況になってからは、緩和ケアチームに協力してもらいながら、2週間ぐらいで息を引き取った。
 
今回、家で治療をしながら母を看取るという体験をして、治療をしながら母とゆっくりと話しが出来たことが一番良い思い出となった。また人の死というのを、時間をかけて見ることができた。徐々に弱っていき、ゆっくりと次の世界へ旅立っていく姿を見ることで、生と死というのが同一線上にあり、死というものが特別なものではなく、生の先に普通にあることなのだということが実感できた。
 
緩和ケアチームの方々の態度を見てもそれが良く分かった。死後の母への接し方が、生前の母への接し方と同じで、優しく、そして尊厳を持って接してくれたのが印象的だった。これと対照的だったが、葬儀屋だ。火葬場へ連れて行くために母を部屋から外へ出すのだが、葬儀屋の人たちは、母を“遺体”として扱い、尊厳を持って接していないのが良く分かった。これは、やはり生と死の両方を連続でじっくりと見ないと分からない世界なのだということが身に染みて分かった。
 
私は母の病気を治すことはできなかったが、最後の2週間の寝たきりの状態以外は、一人暮らしができており、元気に過ごすことができたのは、良かったなと思っている。また生と死というものを、身をもって教えてくれた母には感謝しかない。私は医療に携わる者として、これを活かして、沢山の人の健康に貢献できれば、母も喜ぶのではないかと思っている。
 
 
 
 
***
 
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2023-08-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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