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メディアグランプリ

書けるか書けないか、それが問題だ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:工藤洋子 (ライティング実践教室)
 
 
想像してみて欲しい。
 
あなたは今、役所に来ています。
ちょっと面倒な手続きをするために、あれやこれやとたくさんの書類に記入しなければなりません。
 
さあ、そこで窓口に備え付けのペンを手に取り、いざ書かん、と書き始めたところで。
 
もしそのペンがものすごく書きにくいペンだったら、どう思いますか?
インクがつくならまだしも、もしかすれてうまく書けもしないようなペンだったら?
 
私なら……キレるね。
 
「これだけの書類を書けと言っておきながら、このペンは一体なんだってんだ?!」
 
と。
 
書き心地の悪いペンで字を書くことほど精神と手首に破綻をきたすものはない、と私は信じている。だから、そんなことがないようにいつも書き心地のよいペンを持ち歩くことにしている。
 
ま、世間から見れば変人奇人の類いかもしれない。
ペンのひとつやふたつ、多少書きにくくても死にやしないだろう、と普通の人なら思う。
 
しかし、だ。
我が家には常に書きやすい筆記用具しか子どもの頃から置いていなかったのだ。ペンならインクの出具合は当然のこと、重心の位置やグリップの握り具合まで、鉛筆ならトンボか三菱もしくはuniのもので、木の部分もきちんと重量感が感じられるもの。
 
私の母は「文房具マニア」であった。
今ならいわゆる「オタク」一直線だ。
 
だから私は文房具には常に「書きやすさ」を一番に求める。
特に大人になって鉛筆やシャープペンシルよりもペンを使うようになってからはなおさら、
 
滑らかさ
 
に重きを置いてペンを選んでいる。
 
滑らかに書けないペンなんて、パンクした自転車と同じだ。無理に走らせているうちにフレームが歪んでしまう。自転車だってペンだって、どこかで何かの事故がおきる。
 
それでも。
大半の人はペンが多少書けなくても、別にたいしたことはないんじゃないか、とそう思うかもしれない。
 
しかし、実は事故は起きるのだ。特に私の仕事では。
 
私の「通訳」という仕事では、書きやすくてインクがたっぷり入っているペンは想像以上に大切な必須アイテムだ。
 
世の中の大半の人はおそらく通訳と関わる仕事はしてないだろう。だが、海外から有名アーティストやスポーツ選手が来日したときに、きっとテレビの画面上に通訳がいるのを目にしたことがあるはずだ。
 
東京オリンピックのときも、日本のプロ野球で海外選手のヒーローインタビューの時などもそうだ。アメリカで今大活躍の大谷選手にもチームで専属の通訳が付いている。おそらく、その通訳はたいていメモパッドなどを手に持ってペンを構えていることだろう。そして、インタビューならその相手が話したことを逆の言語に訳すことが仕事である。
 
そのとき。
もしペンのインクが出なかったら?
メモ用紙の上にペンを走らせようとしたら、引っかかってうまく書けないとしたら?
 
控えめにいっても通訳者の頭の中は大パニックだ。『あしたのジョー』のように頭が真っ白になってしまう。ああ、今日のヒーローがあんなにいいこと言ってるのに、通訳が焦ってしまって意味を取り違えちゃったら?
 
インタビューは台無しだし、私には明日から仕事が来ない。
 
そこでどうするのか?
必死で頭の中にメモを取ることになる。
つまり、通訳する内容を「暗記」する訳だ。
 
じゃあ、別にペンは要らないじゃないかって?
いやいや、これは恐ろしく脳のリソースを消費する上に、失敗の可能性も高い大変リスキーな手法だ。何回も繰り返し英単語を暗記する受験勉強なんて、これに比べたら牧歌的とさえ言えるほど。たとえうまくこなせたとしても終わったら疲労困憊、その日はもう何もすることができないほどのダメージが残る。
 
実は手元にメモがあっても、別に通訳者は訳す内容をすべてメモに取っている訳ではない。メモはあくまで記憶を呼び起こすきっかけのようなもので、別になくても訳せないことはない。ないのだが、手元に書き殴ったメモがあるとないとでは雲泥の差だ。メモは保険のようなもので、通訳者の精神を支えてくれる我らが守護神、まさに「御守り」なのだ。
 
よい仕事をするためにはメモが欠かせない。
メモを取るにはサラサラと書き殴ることができる紙とペンが必須。
 
だから。
滑らかに書きやすいペンは必要不可欠かつ最重要な、通訳者にとっての「三種の神器」なのだ。
 
ちなみに。
私の呼ぶその「三種の神器」の残りは、紙と水だ。その場で1人だけずっとしゃべっているのは通訳だけなので、喉を潤すことも大切だ。
 
話す内容を記憶するための道具が、紙とペン。
そしてそれを発声するために必要なサポートが、水。
 
私見ではあるが、それをもって「三種の神器」と呼ぶ。
 
では、
 
「通訳者にとって最大の悪夢は何か?」
 
ここまで読んでくださったみなさまなら想像が付くだろうか。それは、
 
「仕事でメモを取ろうとしたら、インクが出なくて死ぬほど焦る」
 
という状況だ。書いても書いてもかすれるばかりで字が書けない。予備のペンを取り出そうにも話している人は止まらない。
 
悪夢だ……いやはや、想像するだに恐ろしい。
 
そんなことがないように、いつも手元には書きやすいペンを準備しておく。文房具店に行ったら、新製品のステキなペンがないか、試し書きに余念がない。
 
そんな私も既に母同様、すっかり「文房具オタク」なのだ。
 
 
 
 
***
 
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2023-08-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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