口元コンプレックスは魅力のもと。
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記事:kana(ライティングゼミ・6月コース)
「友達に歯ぐきって、あだ名つけられたんだが」
憤慨して、思わず母に愚痴を言った。
そう、私は「上の歯茎が見えやすいこと」が悩みだ。
満面の笑顔で写った写真は、だいたい歯茎がどーんとむき出しになっている。
歯茎が見えていると、どことなくワイルドな感じがでてしまう。
歯を見せて笑っても上品な笑顔になる友人たちが、うらやましかった。
印象や雰囲気のことだけではなく、実質的な問題もある。
青のりや菜っぱ、わかめなど、ヒラッとした食品は、とても歯茎に張り付きやすい。
ほとんどの人たちは、歯茎に付着した食品が他人に見えることはない。
しかし私たち「歯茎むき出し族」は、歯茎に張り付いた食品を、ディスプレイしてしまうことがある。もちろん意図せずに。
Web面接で画面に写った自分の笑顔に、それを発見した時はとても絶望した。
幼少期からおそらく歯茎は見えていたと思うが、気にせず生きてきた。
しかし、ひとたび指摘されると、急に気になり出してうまく笑えなくなった。
カメラを向けられたら、普通の人は口角を上げる。
私はその時に、口角につられて上唇が捲り上がらないように、一生懸命力を込める。
こうして、口に意識が行きすぎて目が笑っていない、ぎこちない笑顔が出来あがるのだ。
そんな中でやってきた、コロナ禍のマスク生活。
歯を見せる状況も減り、私は歯茎のことを忘れて過ごしていた。
そうして社会人3年目になろうとしている頃、ついにマスク着用が個人の判断になった。
コロナ禍の真っ最中に入社したから、会社の人に素顔を晒すことなく過ごしてきた。
「この子、歯茎出るんだな」
会社の人に、心の中でこう思われるのを想像すると、少し、いや、かなり憂鬱だった。
そんなある日、美容院にいった。
いつもの美容師のお姉さんに、マスクを外す不安について話をしてみた。
すると彼女は、自分のコンプレックスについて語り始めた。
「口元を見て、ガチャピンと言われたことがショックで」
「ガチャピン!?」
小柄で、目元が大きくはつらつとした印象の彼女からは、ガチャピンの印象は湧かない。
「歯の先端が丸いから。ガチャピンって歯が丸いでしょう」
「確かに……」
「女優さんの歯の先端が、真っ直ぐ直線に揃っているのはなんでだろうって子どもの頃思ってたの」
知らなかった。歯の先が丸いことをコンプレックスに思う人がいるなんて。
コンプレックスというよりむしろ、歯の先が丸いことは、彼女のハッキリした強い目元の印象を柔らげて、よりチャーミングに見せているとすら感じていた。
自分の歯茎が気になりすぎて、歯の先の丸さに意識を向けたこともなかった。
この会話は、そんな私の視野を広げてくれた。
口元が気になるのは、どうやら私だけではないらしい。
マスク必須生活が終わると同時に、化粧品やホワイトニングの売れ行きが上がったそうだ。
大手新聞のネットニュースによれば、全国のドラッグストアでの前年同期比の売上は、口紅で30%、頬紅で25%も増加したという。
この数字からも、どれほど多くの人が口元が見えることに対して意識をしたかが窺える。
職場の方は、「顔に自信がないからと、娘がマスクを外すのを嫌がっている」とこぼしていた。
「なーんだ、怖いのはみんな一緒か」
一人でコンプレックスについて、考え込んでいると不安な気持ちになる。
しかし、いろんな人と話したり、世の中のニュースを知ることで、だんだん私の気持ちはおおらかになっていった。
私のコンプレックスは、人から見たらチャーミングなのかもしれないし、口元の悩みくらい、誰しも一つ二つ持っているのかもしれない。
お気に入りのリップを塗って飲み会に参加して、「私のチャームポイントは歯茎でーす」と笑顔で言ってみようかな。
同じように、コンプレックスがある人と、話が盛り上がるかもしれない。
歯茎の悩みを面白おかしく話したらみんな笑ってくれるかもしれない。
もしかしたら、隣の男の子に「歯茎が見えていてかわいい」と思われる、なんてラッキーもあるかもしれない。
私は今日もマスクを外して、周りの人たちと歯茎を剥き出して笑いあいながら生きていく。
***
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