メディアグランプリ

共感とかじゃなくて


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記事:カナコ(ライティング・ゼミ8月コース)
 
 
先日、ある展示会を見に行った。
東京都現代美術館主催の「あ、共感とかじゃなくて」だ。
 
感想を一言でいうと、「意味が分からない」
 
「共感」というのは、誰かの気持ちや経験などを理解する力のことである。
優しさや思いやりを生み出す、大切な力。
しかし、簡単に共感されると、自分の気持ちを軽く見られたような気がすることがある。
「分かるでしょ?」と共感を押し付けられて、嫌な気持ちになることもある。
誰にでも、「共感」されたくない時、したくない時がある。
 
そこで、この展示会では、「共感しなくてだいじょうぶだよ」というメッセージが込められているらしい。
 
5人のアーティストがそれぞれのメッセージ性をもって作品を展示しているのだが、どの作品も実に意味不明なものばかり。
 
最初のブースに至っては、架空の企業の紹介動画(10分程)が4本流れるのだが、どれも今までの自分の経験を結びつけようとしても、全く上手くいかず、混乱に混乱を重ねる形となる。
 
もっと先に進むと、大きな壁があり、その壁には小さな穴が空いていて、そこを覗くと反対側が不思議な見え方で映る。
 
見終わった時、モヤモヤした気持ちと共に、分からないって面白いとも思えた。
 
今まで、何でも正解を求めて、正しさとは何かを考えて生きてきた。
「でも、世の中って分からないことだらけなんだ、そうだった、そうだった」と
何か諦めのような、納得のような、改めのような不思議な気持ちが沸き起こる。
 
何も考えずに、ただ毎日に身を委ねて生きていると、いつの間にか考えもしなくなること。
 
でも、人と人ってそんな簡単には分かり合えないし、「分かる」って思うのは傲慢なのだ。
振り返ってみると、私は人とのコミュニケーションを上手く取れないタイプだった。
 
小学校の時は、なかなか友達が作れず、友達が作れない子どもの親の会が立ち上がって、コミュニケーションをとるのが難しい子ども同士が集まって色んなところに出かけたなあ……。
海に行ったり、豊島園に行ったり、銭湯に行ったり……。
今となっては懐かしい思い出だし、そうやって親達が考えて作ってくれたコミュニティの中で社会性を育んでもらったんだなあと思うと、有り難い気持ちでいっぱいになる。
 
中学校では、部活の同じ学年が3人しかおらず、いつも2人対1人の1人の方だったなあ。
他校との合同練習や試合があった時の移動では、列になって歩く時、必ず一人で、一言も話さずにとぼとぼ歩いていたっけなあ。
教室では、話す友達がいなくて、いつも寝たフリ。
話しかけられても、話題に困って会話が続かずに、結局傷つく始末。
 
高校では、女子同士のグループ争いを引いて見ていて、「いつも冷めてるよね」と言われてた。なんとなく、友達作りに必死になる気持ちが分からなくて、一人でいるのが楽だった。
 
こういう話をすると、「分かる!」と共感してくれる人がいる。
共感してもらう瞬間は何となく嬉しい気持ちになるが、あとになって、「私はなんであの話をしたのだろう」と疑問に思う。
別に共感してほしいわけではない。
たぶん、こういう人間もいると認めてほしいのかもしれない。
「別にいいよね、こういう人がいたって」と。
 
そんなことを考えながら、「あ、共感とかじゃなくて」の展示会を振り返る。
 
きっと「分からないことをそのままにする」
ということが大切なのかもしれない。
 
「意味が分からない」と思った時、今までの自分が積み重ねてきた知識や経験と結びつかないという状況になる。そうなったとき、「自分とは違う」とすぐに切り捨てるのか、もしくは、「なぜ、今自分は意味が分からなくなっているのだろう」と俯瞰するのか、「この作品を作った人は、何を思ってこの作品作りに膨大な時間をかけたのだろう」と想像するのか。
 
捉え方は様々であるが、これからの世界で人と繋がり豊かな生活を送って行くには、少なくとも、「即切り捨てる」もしくは「ディスったり、攻撃したりする」ということは避けなければならない。
 
そのためには、「分からないという状態」や「曖昧な状態」に耐える力が必要になる。
 
私は、現在小学校で教師として働いて14年目となる。
この10年で比べても、集団生活が合わないと感じているであろう子どもの数は増え続けている。
 
これをどのように捉えるか。
答えは一つではない。
そして、当然解決策も一つではない。
 
この難しい問いに対して、すぐに解決策を求めようとすると教師と子どもの間に溝が生まれる。
子ども達は、一人ひとり、しっかりとした理由をもっている。それを、「共感するでも同調するでもなく、ただ聞き続けて、考え・意見を認める」ということを繰り返していると、ふとした時、ラジオの周波数のようなものが合うタイミングがくる。
 
そのタイミングで、教師の考えを伝えると受け止めてくることがある。
 
それが、私にとっての今現在の解決方法である。
 
子ども達が求めているのは、「ただありのままの自分を認めてもらうこと」なのかもしれない。
 
 
 
 
***
 
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2023-08-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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