メディアグランプリ

成瀬は天下を取らなくていいから主人公


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記事:村人F(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
主人公とは何か?
そう言われて思い浮かぶのはマンガに出てくるようなキャラクターだろう。
『ONE PIECE』のルフィのように「海賊王に俺はなる!」と大きな夢を語る男。
はたまた『セーラームーン』の月野うさぎのように「月に変わってお仕置き」してくれる女の子。
このようにみんなが憧れるスペシャルな力を持つ存在が主人公として描かれる。
 
それでいうと小説『成瀬は天下を取りにいく』の主人公、成瀬にはそのような要素がない。
ちょっと行動が変わっているだけだ。
閉店が決まった西武大津店に毎日通ってテレビ中継に出る。
M-1に出場し1回戦で敗退する。
女の子なのに高校入学したタイミングで坊主になる。
私達が普段思い浮かべる主人公たちほど派手な力を持っているわけではない。
 
だが帯には「かつてなく最高の主人公、現る!」なんて書かれている。
世界を救うスーパーヒロインというわけでもないのに。
いったいなぜ、そんなことを言われるのか。
 
その理由は「なぜか見てしまう」の一言に尽きる。
本作は成瀬を眺める様々なキャラクターの目線で描かれているのだが、彼らはなぜか成瀬から目を離せないのだ。
幼馴染の島﨑さんはずっと眺めていたいからM-1に出る時の相方を務めるなどゾッコンである。
成瀬はクラスの中で浮いているからと近寄らないようにしている大貫さんも、なんやかんや言いながら頭の中にはずっと彼女の存在がある。
このように成瀬は特に凄いところがあるわけでないのに、周りから主人公として見られてしまう特殊性を持っているのだ。
しかもルフィやセーラームーンのようなスペシャルなパワーがあるわけでもない。
これは他に例を見ないキャラクター属性といっていいだろう。
 
しかし、だからこそ私達の人生にも勇気を与えてくれるのだ。
主人公についての認識を、成瀬が変えてくれるから。
 
考えてみれば、人生の主役はいつだって自分であるはずだ。
それなのにこの言葉が安っぽく見えるのは、華やかな主人公たちが存在しすぎだからである。
 
大谷翔平選手のようにホームランをガンガン飛ばす現実離れした大選手。
数万人の前で絶叫ライブをぶちかますアーティスト。
 
こういった多くの人の心を魅了させる力を生まれもって体感しているから、「自分は脇役なのだ」という心境に変わってしまうのだ。
 
だが、成瀬は違う。
他と比べて派手な実績が無いにもかかわらず、確固たる主役になっている。
これは彼女の生き方に、真の意味で「主人公」要素があったからだろう。
 
それは思い立ったら即行動する。
これを徹底していることだ。
 
西武大津店に毎日通うのもM-1に出るのも大した理由はない。
ほぼ思いつきに近いレベルで行っている。
だが、その程度の動機では普通はできないことでもあるのだ。
女の子が坊主になるなんて現実世界ではかなりの覚悟がないと無理である。
 
しかし成瀬は、さらっとそれをやってしまう。
だからこそ、ついつい見てしまうのだ。
そして気がついたら1、2ヶ月は彼女のことばかり考えてしまう。
これこそ、かつてない主人公である証拠なのである。
 
その上で気付くのだ。
主人公になるために特別な力なんて全く必要ないことに。
別に身体がゴムのように伸びなくても、変身スティックがなくてもいいのである。
もちろん「かめはめ波」みたいな必殺技もいらない。
 
何故か見てしまう。
そういう魅力があれば、それだけで主役になれるのである。
 
だがよく考えてみると、これを実際に成し遂げているキャラクターはほとんどいない。
大抵は「超サイヤ人」や「北斗神拳」のような特殊能力に頼ってしまう。
つまり成瀬は、かなり珍しいタイプの主人公とも言える。
 
だから、みんなが見るのだ。
私も目が離せないのだ。
やっていることは地味でも、私には思いつかないことを何かしてくれるから。
これを現実社会でも可能なレベルで披露してくれる。
それゆえ、成瀬はかつてない最高の主人公なのだ。
 
私達が生きる世界はマンガが小説に比べると大変地味である。
かめはめ波なんて打てないし、杖を振ったところで衣装が変わることもない。
 
だが、それでも十分面白いことは出来るのである。
なにせ成瀬は、主人公という大役を滋賀で普通に学校生活を送るだけで成し遂げたのだから。
 
つまり、この世界も面白いのだ。
別に天下を取りにいかなくても。
この小説が教えてくれた、世の中のなんとも無いことが物語になる事実に心をときめかせながら、ちょっとした日々を楽しんでいこう。
 
 
 
 
***
 
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2023-09-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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