女性を食事に誘うとき、私はジムで腹筋をする
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記事：Shota（ライティング・ゼミ10月コース）
「女性を食事に誘うとき、私はジムで腹筋をする」
と聞いたとき、
「少しでも良いところを見せたいからだろう」
そう思った方は見事に騙されている。推理小説で言うと、真犯人がいるのに無罪な登場人物を犯人と名指しする、少し抜けている刑事の推理だ。
真犯人や著者に見事に騙されてしまった。
もし、少しでも良い格好をしたいなら、腹筋ではなく上腕二頭筋等、目立つ場所を鍛えるか、美容室に行って髪型をきれいに整えてもらうだろう。
では何故、ジムで腹筋を行うのか。
それは、私のとある性格が関係している……。
「草食系男子」
という言葉は現代も使われるのだろうか。
ゆとり世代と言われる私が使っている言葉も、Z世代と呼ばれる人からしたら、もう古く使われていないかもしれない。
草食系男子とは、その名の通り、草食動物を表す。これを人間に置き換えると、
「恋愛に消極的な男性」という意味になる。
私がまさにそれだ。
恋人は欲しくないと思ってはいない。だが、実際に女性を目の前にすると緊張して言葉がでないのだ。
草食系男子が苦手とすることは、実際に会ったときの会話だけではない。
ライン等のメッセージも苦手なのだ。
「この文章を送ったら、相手は不快に思わないだろうか」
「この絵文字より、あっちの絵文字の方が好印象だろうか」
と、未来に起こるかもしれない、ありとあらゆる不安が脳内に浮かんでくる。このときの脳内活動量は、ノーベル賞を受領した研究者をも凌ぐだろう。
そんなある日、私は友人から一人の女性を紹介してもらった。
実際に会ったことはなく、お互い顔も知らないまま、ラインでメッセージだけを繰り返していた。
「そろそろ食事に誘おうか」と思いながらも、どう誘っていいのか分からない。
「今度よければ食事に行きませんか？」
と、自身のスマフォに打ち込んでも、このメッセージを送信したら嫌われるのでは？ とネガティブ思考が働き、スマフォに打ち込んだ内容を全て消去してしまう。これを何度か繰り返した。
そこで私が考えたのが、ジムで腹筋をするという方法だ。
「どういうことだ、意味が分からない」
そう思うかもしれない。
ヒントになったのは、私がジムで音楽を聴きながら筋トレをしているときだった。
私は筋トレをするとき、シャッフルで音楽を聴いているため、知らない曲が流れることが頻繁にある。そのときは筋トレ中であってもスマフォを操作して自分の好きな曲に変更するのだが、私は曲一つ選ぶときでさえ迷ってしまう。
どの曲を流そうかな。と！
しかしある日、腹筋をしている最中にイヤホンから知らない曲が流れたため、腹筋の途中でスマフォを操作することになった。
ここで私は気づいたのだ。
「腹筋の途中で曲を決めるとき、悩んでいる余裕がない」と！
それはそうだ。
腹筋中に、どの曲を聞こうか。なんて考える余裕はない。
同時に思った。これは奥手な自分が女性を食事に誘う時に使えるのではないか。と！
女性を食事に誘う際、当然ながらメッセージを送る。私はその内容を悩んで中々送信ボタンが押せずにいた。
だが、腹筋をしながら食事に誘うメッセージを考えれば、悩む余裕がないのでは？ そう思ったのだ。実際に実行したところ効果は抜群だった。
腹筋をするために、体を後ろに倒して、背中が器具につかないギリギリの位置で体を止める。その状態を維持すると、お腹がねじれるように痛いのだ。そんな状態で女性を食事に誘うメッセージを考える。そうすることで、余計なこと、つまりネガティブなことを考えなくて済んだのだ。
「こんなことを送ったら嫌われるんじゃないか？」
なんてことを考え、中々メッセージが送れなかったが、腹筋中にメッセージを送ることで余計なことを考えなくて済み、その分スムーズに、かつ、シンプルな内容のメッセージを相手に送ることができた。
「実際にメッセージを送ったあと、送った内容に後悔するのでは？」
と思うかもしれないが、そんなことはなかった。
なぜなら、相手の返信が気になり、自分の送ったメッセージなど気にする暇がないからだ。
今まで、どれだけ無駄なことで悩んでいたのかが分かった。
私と同じく、草食系男子と呼ばれ、女性にメッセージを送るときに悩んでいる方がいれば是非、腹筋中にメッセージを送ることをお試しいただきたい。
余計なことを考える暇がなくなり、スムーズにメッセージが送れることだろう。
その腹筋中にメッセージを送った女性とはどうなったのか？
その女性とは二人きりで食事に行き、帰りぎ際、こう言われた。
「まるで面接みたいでしたね」と。
私の中身が無い質問攻めに疲れ果てたのだろう。
だが、当時の私はその言葉の意図が分からず、
「今日は楽しかったです！ ありがとうございました」とメッセージを送信した。
しかし、いや、当然ながら、そのメッセージに既読がつくことはなかった……。
相手を食事に誘っても、その相手を楽しませることができなければ、恋愛は次に発展しない。トーク力などを身に着け、相手を楽しませることもこれから学んでいこう！
既読にならない送信済みのメッセージを見ながら、私はそう決心した。
＊＊＊
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