メディアグランプリ

学び直しは社会人が受けるべきもう一つの「健康診断」


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:嘉村友里恵(ライティング・ゼミ10月コース)
 
 
リスキリングにリカレント教育……。最近、何かと社会人の学び直しが話題に上がることが多くなったように感じる。SNSを開くとウェブデザインやプログラミングなどを学んで転職を促すサービスや、大学の社会人向けプログラムの広告をちらほら見かける。IT業界を中心とする人手不足が理由となり、社会全体で学び直しを後押ししていると伝えるニュースも耳にする。
 
「いやいや、私は仕事が忙しくて勉強なんて無理」「転職なんて考えていない」

学び直しと聞くとそんな言葉が頭をかすめる人もいるはずだと思う。だがそんなあなたにぜひ知ってほしいことがある。学び直しは働く人全てに必要ないわば、健康診断のようなものだということを。
ちょうど1年前の昨年秋。私はとある大学のオンラインコースを受講していた。
 
当時は新聞記者として働いていたものの、所属していた部署は比較的仕事の流れが緩やか。時間に追われ、難しいニュースと格闘して成長していく同僚に置いていかれたくないという焦りを感じていた。それなら余裕があるうちに自分ならではのスキルを身につけておきたいと考え、以前から関心があったコミュニケーションや場づくりを学び直すことに決めた。
 
4カ月にわたり、夜間や休日にリアルタイムの授業を受けつつ、レポート課題をこなした。
自分のお金で自分が好きなことを学びに学校に通うのは初めての経験。新たな知識や考え方に触れる度、自分の身の回りの世界の輪郭がよりはっきりする感覚にとてもわくわくした。
 
一方で、週に数日とはいえ仕事終わりの約3時間の授業は気力と体力が試された。仕事の原稿よりもレポートの締め切りに追われてしまっていた時期さえある。
 
だが何よりも苦労したのは、受講生がグループをつくって取り組む実習だった。

コース中盤で始まった実習では、お題や条件を与えられた上でグループごとにワークショップを企画して実施することになっていた。メンバーは5人で、職業も住んでいるところもばらばら。夜の授業で初回の打合せを行ったが、とてもその時間だけでは終わらない。その日を境に連日連夜の話し合いが始まった。
 
お題をどう解釈するか議論し、自分たちが目指すワークショップの形を丁寧に言語化する。進行役が話す言葉一つ一つも、それが本当にその場面に最適かどうか突き詰めて考えていく。こうやって私のグループではどんなに小さなことでも、時間をかけて合意形成をしながらワークショップを作り上げていった。

だが、その過程が想像以上に辛かった。
 
記者として働いていると基本的に1人で何をするかを決めて動き、仕事を完結させることが多い。何をするにも誰かと話し合わなければ前に進まないことがもどかしく、ストレスを感じることもあった。それに、職場では緻密な段取りよりも、どちらかと言えばガッツで課題を乗り越えることが求められてきた。仕事柄、人と関わることは得意な方だと思っていたが、打ち合わせをすればするほど、自分がいかに共同作業に不慣れで、計画よりも勢いで物事を進めてきたのかを突きつけられた。
 
その一方で、実習があったからこそ知った自分の強みもあった。「いつも良いアイデアを出してくれてありがとう」「その『自己開示』のおかげで前に進めた」。実習終了後にあったグループのメンバー同士でメッセージを贈り合う時間ではそんな言葉を寄せてもらった。議論が止まってしまった時に何気なく投げかけた提案や質問がそのように受け入れてもらえていたとは思わず嬉しかった。
加えて、誰かと一緒に何かをすることへの考えも変わった。なかなか前に進まず辛いとばかり思っていた打ち合わせが、あるタイミングから嘘のようにそれぞれのメンバーのアイデアが融合し、企画としてまとまった。結果的にワークショップも好評を得た。
 
「頑張ってよかった」。そう思えたと同時に、1人でなかったからこそなんだとも痛感した。バックグラウンドが違う者同士が一つのものをつくろうとすることはとてもエネルギーがいる。だがその分思いもしない良いものが生まれることがあると身をもって知った。
新たに分かった苦手なことと得意なこと、そしてこれからの働き方を変えてくれそうな気づき。おそらくどれも、職場で毎日働いているだけでは知ることができなかった。
 
社会人になって年数を重ね、ある程度の成功体験も増えてくると良くも悪くも自信がつく。それによって自分が密かに抱えている課題や可能性が見えなくなってきていたところを、学び直しがメスを入れてくれていたように思う。
 
昨年の学びの経験があったからこそ、今年の春に想定外の異動をしてエンジニアやデザイナーの人々と働くことになった際も、自分との違いにめげずに何とか仕事を続けられたように思える。もしそうしていなかったら……と思うと少しだけ怖い。

この自分の思わぬ現状を掘り起こして、日々の改善につなげてくれるところこそが、まさに健康診断と通じている気がする。
 
「え、こんなに血圧が……」「ああ、この数値が意外に良い!」。普段過ごしている中で健康の度合いを知ることは難しいが、定期的に体の隅々をチェックするからこそ理解できる「自分」がたくさんある。そして悪い部分があれば生活を見直したり、医療の力を借りてより健やかであろうとする人が多いだろう。体と同じく自分の暮らしを支えてくれる仕事の「健康診断」を受けることはきっと特別なことではないはずだし、受けることで日々の充実度が変わってくることがあると強く思う。

資格やスキルの必要性だけで学び直しをするかしないか判断するのはもったいない。「これ、何だか面白そう」。そんな小さな興味だって足を踏み出す立派な理由だ。
 
「え、勉強しているの? すごいね」から「勉強しているの! 私も」へ。あちこちの職場のおしゃべりがそんな風に変わっていけば、個人の日常も社会の未来も少しだけ明るくなるのではないかと密かに思っている。
 
 
 
 
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2023-11-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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