メディアグランプリ

子どもの「やる気スイッチ」が突如現れて全力で押した話


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:及川彩子(ライティング・ゼミ10月コース)
 
 
「ママ、暇なんだけど。なにしたらいい?」
 
9月の平日14時。
私が在宅勤務をしている部屋に娘が入ってきて、不機嫌な様子で声をかけてきた。
 
小6の娘は不登校だ。
 
娘の欲しい言葉は何だろうか。それを考えて言葉を返したい。
推敲せずに、頭に浮かんだ言葉をそのまま反射的に返してしまうのは避けたい。
しかし私は今、オンライン会議中でそれが難しい。
 
「したいこと、ないの? ママ今会議中だから、自分でやりたいことを見つけてください。なかったら、ぼんやりぼーっとしてたっていいんだしさ」
余裕なく、やっつけ返事100%を投げ返してしまった。
 
「なにそれ。それがないから聞いてんじゃん」
不機嫌さを増した娘が、部屋のドアを強く閉めて出ていった。
 
はい、不正解。ブブー。
わかってましたけど、今この状況ではこれ以上無理です。
自分で自分にツッコミを入れ、やり過ごす。そんな毎日が続いていた。
 
不登校の兆しは、さかのぼること5年前、1年生の最初からあった行き渋り。
3年生の時には、教室の騒がしさが嫌だ、自分に向けられたものではなくても、先生の大きな声が怖い、と訴え、登校に付き添う日や、休む日が増えていった。
登校した日は、「楽しかった!」と元気に帰ってくる。朝の様子との差が大きい。「行ったら楽しいのに、朝は行く気が下がってしまう」という状況が親には理解しきれず、毎朝「行こうよ」と説得して登校に付き添う日々が続いた。
そして学年が上がるにつれて、難しくなる勉強についていくことができなくなった。
宿題が出来ない。出来ていないことをみんなに気づかれたくない。分かっていないことを先生に分かってほしい。先生から自分に気をかけて欲しい。でも、みんなからの注目は浴びたくない。
糸の絡み具合がどんどん複雑になり、ほどくことができない状況だった。
 
寝る前に「明日は行く」と言ったのに、朝には「やっぱり行かない」と気持ちが変わってしまう。「行きたいけど、行きたくない」と、葛藤している様子は、限界を迎えていた。
 
「行きたくないなら無理に行かなくていいんじゃない?」と声をかけたら、娘は、心の底から安心した表情を見せた。しばらく休もう、と腹をくくり、小5の3学期から、完全不登校の日々が始まった。
 
学校に行かなくても、学ぶことはできる。通信教育、オンラインの講座やスクールに、家庭教師もある。コロナ禍も後押しして、選択肢は探せばたくさん見つけられた。なんとかして娘と学びの機会とをつなげたいと、検索しまくって娘に合いそうなサービスの情報を集めた。
 
しかし、誤算があった。
娘は長い期間、学びから離れたことで、「学習意欲」をなくしてしまったのだ。
 
分からない勉強に取り組む意味が見いだせず、学校以外の学びの選択肢をいくつ見つけたところで、娘にとっては興味のないことだった。
 
「勉強ってやる意味ある? やらなくて将来自分が困ったって別にいい」
 
そんな言葉を返されて私は頭を抱えた。
「学校へ行かなくてもいい」は本心だけれども、学びは止めて欲しくない。「休息」という名のもとに、youtubeとゲームとネットフリックスを見続ける日々が続き、時間がどんどん過ぎていく。
 
「どうしたらいいんだろう」私は焦りを募らせるばかりだった。
フルタイムで働きながら、「見守る」という名目で「放置」するほかない状況。何も進まない・変わらない毎日に苦しさが増す一方だった。
 
そんな中、「不登校」をテーマにしたオンラインセミナーを見つけ、藁にもすがる思いで参加した。登壇者は、子ども時代に不登校を経験していて、子ども・親の気持ち両方を汲んだ言葉に涙しながらセミナーを聞いていた。
 
 
「『暇だ』の連呼は、前向きになっているサインです」
 
 
登壇者のその言葉を聞いて、ハッとした。
今、娘はまさにその言葉を連呼している最中だった。
 
同じ場所にうずくまっているように見えても、子どもの中では確実に前に進んでいて、背中を押すのは今なのだ、と登壇者は言った。
 
この状況を打開したい! どう声をかけるとよいだろうか? と、はやる気持ちを抑えながら、お風呂の中で、寝る前に、ご飯を食べながら、娘と交わしたやり取りをかき集めていくと、娘が発している言葉には「動き出したい」という内容が散りばめられていたことに気が付いた。
 
見つけていた選択肢のひとつを娘に話してみたところ、好感触。期を逃すな! と、急いで仕事を調整し、急いで面談してもらい、本人と施設の見学に出向いた。あれよあれよと話が進んで、通いだすようになった。
 
想像もつかないような前進だった。
少しずつ進んでいければいい、と思っていたステップは、いきなり階段5段抜かしで進んだことに信じられない思いだった。
 
通いだして1か月。張り切りすぎて疲れで翌日に寝込んでしまうこともあるが、「自分の居場所をみつけられた! 勉強するのって楽しい!」と気持ちの変化を口にして喜んでいる娘をみると、タイミングを見逃さずに動けてよかった、と思う。
苦しくてもがきながら情報を集めたことも、泣きながらセミナーに聞き入ったことも、「休もう」と声をかけたことも、すべてが「今」につながっていたんだと感じる。
 
いまから何年も経って振り返った時に、「あの時、やる気スイッチを押せてよかった」と思えるように、「今」からまたスタートして、未来につながるように伴走していきたい。
 
 
 
 
***
 
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2023-11-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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