メディアグランプリ

42歳のオヤジがサンタクロースにもらった素敵なもの


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記事:久田一彰(ライティング実践教室)
 
 
サンタクロースが父親と知ったのは、小学1年生の時だったと思う。当時読んでいた雑誌か何かの裏の広告に、「やっぱりパパがサンタなんだ!」というような一文が載っていた。
 
小学生の私にとっては、衝撃的な一文で、プレゼントをもらうよりも、正体を知ってしまったこと、もうサンタクロースは信じられないということに衝撃を受けた。これは未だに破られることのない、人生最大のネタバレである。今まで読んできたミステリー小説の最後のどんでん返しもこれを越えることがない。私のときめきを返せと思いたいが、知ってしまった記憶は戻らない。まさに、「覆水盆に返らず」だ。
 
だから、私は自分の息子には、正体がバレないよう細心の注意を払っている。まだ3歳であるが、今のところバレてはいないようである。
 
妻と息子は妻の実家に帰っているので、クリスマスプレゼントをもらった感想をLINEのビデオ通話で聞いてみた。
 
「今日おもちゃ誰にもらったの?」
「サンタさん!」
 
画面の向こうで無邪気に喜んでいる3歳の息子は、サンタさんにもらったとはしゃいでいる。よしよし、この答えはまだサンタクロースの正体はバレていないと安心した。さりげなく欲しいものを聞き出したおかげである。しかし、子供の気持ちはサイコロを振るように毎回コロコロと変わる。一回確認しただけでは心許ないので、おもちゃ屋に行くたびに、「サンタさんに何お願いするの?」と何度も聞いて確認した。惜しみなくマーケティングスキルを発動させ、確信がもてたところで、今年のプレゼントを決定した。
 
この時期、世界中のママ・パパは凄腕の諜報部員として、子供の好きなものは何かとあの手この手で必死に聞き出している。きっと小説・映画『007』に出てくるジェームズ・ボンドさながらにさりげなく、漫画・アニメ『スパイファミリー』に登場する主人公、ロイド・フォージャー、ヨル・フォージャーばりのタッグを組んで活躍をしているのだろう。その甲斐あって、今年もクリスマスプレゼント作戦は成功したと言える。
 
もちろん、私の父や母にも、『007』に出てくる、秘密兵器を開発している博士「Q」やボンドガール、『スパイファミリー』の情報屋フランキー・フランクリン並みに、LINEや直接会って話をしながら協力をしてもらったからだ。
 
そんなある日、父からLINEメッセージが来ていた。
開けてみると、
 
「今日ゴジラを見ました。ゴジラ史上最高です。ストーリー、特撮見事! 迫力もある。後は話で、文章では言い切れません」と、肝心の中身はスパイの暗号文のように隠してきた。観たのは『ゴジラー1.0』のことだろう。
 
普段短いメッセージしか送らない父が、これだけのメッセージを送ってきたのは、それだけ興奮しているのだ。私も父の影響を受けて特撮映画や特撮音楽が好きだ。父というよりは趣味の楽しみ方を教わった師匠のようなものだ。これは私も『ゴジラー1.0』を観て、父と話さなくてはと思った。
 
1人で映画館に行き、
そして、
興奮して静かに泣いた。
父と話がしたくなった。
だから、2人で出かける計画を立てた。
 
その日は奇しくも12月25日になった。
 
映画に出てくる『震電』という戦闘機が、「筑前町立大刀洗町平和記念館」に撮影に使用された実物大模型として常設展示してある、との情報をキャッチしたので、誘ってドライブがてら出かけた。もちろんBGMはゴジラに関係のあるサウンドトラックだ。
 
父が運転する車に乗り、高速道路を約1時間走った。ドライブしながら、最近のこと、ゴジラ音楽のことなどを話す。たわいもない話だが、ここ最近2人きりになることはなかったので、なんだが恥ずかしいような新鮮な感覚だった。途中のレストランでランチをする。ここでも料理のこと、ビールのことなどを話す。展示を見終わって、帰りも車の中で話をする。こうしてゆっくり話すのは何年ぶりだろうか。
 
昔は、父と母、そして弟の家族4人一緒に車で出かけていたのに、いつの間にか独り立ちして新しい家族を持ち、離れていった。家族というものは磁石みたいなものだ。S極とS極のように反発することもあれば、S極とN極のようにくっつくこともある。家族との関係をS極にするのかN極にするのかは、自分の心持ち一つである。だからもし、家族に会いたくなったら、自らの中にある磁石を起動させるといい。
 
おかげで、このドライブはかけがいのない時間=父からのクリスマスプレゼントになったみたいだ。私の休みにドライブに付き合ってくれ、安全運転してくれた父にお礼を言いたくなった。
 
「素敵なクリスマスプレゼントありがとう」
「うん、じゃあね」
 
そう言って多くは語らなかった父は、自分の車に乗って母の待つ家に帰っていった。角を曲がる時、車のブレーキランプが赤く光り、サンタクロースの赤を連想させてくれた。
 
そうか、やっぱり父がサンタクロースだったんだな。そう思うと、あの時のネタバレは伏線で、時を超えて綺麗に回収されたのだった
 
 
 
 
***
 
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2023-12-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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