メディアグランプリ

あの時のニワトリさんは、果たして幸せに為れたのだろうか


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記事:山田THX将治(ライティング実践教室)
 
 
20年程前の今時分のこと。
通り掛かった目黒の街で、聞き慣れぬ呼び込みが聞こえて来た。
 
「クリスマスといえば、チキン!」
「チキンといえば、〇ンタッキー!!」
 
現代なら、音声ロボット『呼び込みくん』の電子音に取って代わられるだろうが、未だそこまでAIが発達していない時代だった。
声の主は、ニワトリの着ぐるみを着た(多分)女子大生と思われる二人組だった。
 
前を行き交う人々は、笑いを堪える様にして足早に立ち去っていた。
私はどこか、他人事とは思えず、声にはしなかったが、
 
『ガンバレ!』
『買って頂けよ!!』
 
そして、何故か、
 
『幸せに為れよー!!!』
 
と、叫んでしまった。
声は出さなかったが。
 
ニワトリ女子大生は、胴体が着ぐるみなので大丈夫そうだったが、タイツ一枚の足は寒そうだった。
それより、手袋をしていない(業務上出来ない)手を、寒そうに息を吹きかけていた姿が痛々しかった。
 
 
私がこの、ニワトリ女子大生に目を奪われたのには、この時期と私情が有ったからだ。
 
クリスマスといえば、誰もが家族・恋人・友人と共に楽しく過ごすものとされている。しかし、ソシアルワーカーがそうしてしまうと社会が維持出来ない。
他にも、その時期その時節が、書き込み時と為る業種の方々は、皆が楽しんだり休んだりしている日も、働いて頂かないと世間が回らない。
それが仕事と言ってしまえばそうだが、本当に頭が下がるばかりだ。
 
かく言う私も、家業が製麺屋だった為に、同じような経験というか、生活環境の中で成長してきた。
何せ、記憶が有る限りに於いて、NHKの紅白歌合戦をマトモに観たことが無かった。
何故なら、大晦日には“年越し蕎麦”の習慣が有り、製麺屋にとっては一年で一番繁忙な時期だったからだ。成人してからというもの、年末の仕事を終えるのが、元日の陽(まさに元旦)が昇る前なら、ラッキーという状態だった。
必然的に他業種よりも早く、師走(12月)に入る頃には気忙しく為っていた。
12月半ばともなると、仕事の段取りで頭が一杯と為っていた。当然、クリスマスなんぞを心から喜び楽しむ気にもならなかった。
正直なところ、クリスマスをカノジョと御洒落な処で過ごす友人達が羨ましかった。
 
それでも若い頃は、無理して友人達に張り合っていた。
テレビでは、山下達郎の曲に乗って、新幹線ホームの柱陰に隠れる牧瀬里穂(当時の)が、信じ難いほど可愛かった。そうこうする内、自分のカノジョは牧瀬里穂バリと勘違いする程だった。
何故なら、私の自由に為るクリスマスイブの時間は、周りの1/3程度だったからだ。
短時間デートと為って仕舞う後ろめたさが、私をそんな気持ちに駆り立てていたのだろう。
 
 
自分の心内だけならまだ良い。
これが、周り、それも若い人に対してとなると、そうはいかないし後ろめたくも感じて仕舞う。
 
年末の繁忙期には、私の会社でも多くの学生アルバイトを募集した。
給与は優遇したが、年末の製麺工場は間違っても良好なアルバイト先とは言い難い。真冬に冷蔵庫作業が多いので、兎に角寒いのだ。
それに、工場現場なので長靴を履かねば為らないからだ。履き慣れない長靴は、とても重く感じて脚に疲れが溜まるものだ。
 
私は、アルバイトに来てくれた学生さん達に『有難う』だけでなく、
 
「年を越せば、ゆっくり休めるからね」
とか、
「こうした下働きは、将来役に立つよ」
更に、
「縁起物を扱っていると、きっと幸せがやってくるよ」
 
と、半ば口から出任せに話しかけていた。
“年越し蕎麦”は立派な縁起物だ。
 
しかし、私の所でアルバイトしてくれた若者達が皆、幸せに為れたかどうか知る由もないが。
 
 
今年も昨日(クリスマスイブ)・今日(クリスマス)と、フライドチキンを扱っている店には多くの購買客が訪れていた。
残念ながら、ニワトリの着ぐるみは見掛けなかったが、店内の厨房では多くの若い人が一心に働いていた。
 
店内で働く彼等が、幸せに為るかどうかは不明だ。
ただ、現在は製麺業を実質的に離れ、年末は、最悪でも大晦日は仕事をせずに済みそうな私は、店外から店内厨房に向かって、
 
『お疲れ様です』
そして、
『新年は、幸せが訪れます様に』
 
と、最敬礼とはいかない迄も、会釈しながら願ってしまった。
 
 
20年程前のクリスマスに見掛けたニワトリさん。
彼女達には果たして、幸せは訪れたのだろうか。
私は、そう願ってやまない。
 
 
もしかしたら、元気な二人だったので、お笑いタレント等に為ったのかもしれない。
あの明るさは、そんな想像も可能だ。
 
それに、もし、お笑いさんに為っていたなら、この時期のニワトリの着ぐるみは、この上なくオイシイ筈だしね。
 
 
そんなことを思い返した、今年のクリスマスだった。
 
 
 
 
***
 
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2023-12-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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