メディアグランプリ

大自然で心を整える、軽井沢の極寒サウナ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:ともとも(ライティング・ゼミ12月コース)
 
 
「無理無理無理無理無理―――――!!!!」
 
私は水風呂の前で、体から湯気をモワモワと立たせながら絶叫していた。
 
今まで温泉施設にあるサウナに入ったことはあるが、ものの3分で苦しくなった。水風呂には足の先をちょっとつけただけで、「うわっ! つめたっ!」となり、それ以上入ったことがない。いくらサウナで体が熱くなっているからと言って、急に首まで水風呂につかるなんて、まるで自殺行為ではないか。
 
昨今のサウナブームで、自宅がある軽井沢の周辺に、新しいサウナ施設が出来始めた。そしてついに会社から、「サウナの記事を書いてほしい」という依頼が来て、私は調子よく受けてしまった。
 
しかし今さら、「水風呂がつらくてサウナに入れない」なんて言えない……。
仕方ない、取材に行く前に一回プライベートで修行に行ってみようと思い立ち、予約を入れて行ってみることにした。
 
家から車で15分ぐらいのところにあるそのサウナは、フィンランド式だった。水着に着替えてシャワーを浴びたら、さっそくサウナ室へ。
 
そのサウナは木造のログハウスのようなつくりで、中は下半分が燻されて、すすで真っ黒になっている。
しかし薪ストーブの炎が心地よく踊り、薪がパチパチとはぜる音を聞いていると、それだけで心地よくなってきた。
 
室内は90℃を超えているが、薪の遠赤効果のおかげか、刺すような熱さではなく、じんわりと徐々に熱くなってくるようだ。
 
サウナハットを被っていると、頭や顔が熱くならない。これはすごくいい。やがて汗がじわじわ出てきた。
熱い…… まだまだ…… でも熱い…… 熱い…… あつーーーーい!
 
サウナ室を飛び出すと、目の前に水風呂が。水温計を見ると、14℃となっている。これに入れというのか! そこで無理無理―!と絶叫していたわけだった。
 
しかし、せっかく修行に来たのだと自分に言い聞かせ、清水の舞台から飛び降りるような気持ちで、足先をチョンと水につけてみた。
「冷たいッ!無理!」 でも少しずつ足を入れ、大きく息を吸って、息を吐きながら肩まで身を沈めてみた。「ふーーーーーー」
 
冷たーーい! でも我慢して数秒たつといつのまにか、まるで体が氷の上で溶けるような感覚になってきた。
あれ? 気持ちいい。わー、水風呂に肩まで入れた!
この年になっても、自分の中の壁を突破できたぞ!
 
そして1-2分入ったところで、外気浴スペースへ。
そこには、コールマンのインフィニティチェアーが並んでいる。そのうちの1つに腰掛け、リクライニングしてみると、そこには夕やけ空が広がっていた。
 
あー、今日もキレイな夕焼けだな…… あれ、空ってこんなに広かったっけ?
 
足元には薪ストーブがたかれており、足先がポカポカする。自然の静寂に包まれ、風の音と薪のはぜる音しかしない。体が少しずつ乾いてきて、足の指の間を風がさわさわと吹き抜けていく。
 
……さむっ!
 
あわててサウナ室へ戻る。これで1セット終わり。これを3セット繰り返すと、整いの境地へ行けるらしいので、がんばってみる。
 
水分補給をしながら2セットが終わり、3セット目へ突入。
アロマオイル入りの水で、セルフロウリュしてみる。
 
じゅわ~
 
いい音がしたと思った瞬間、熱波が顔に直撃する。
がまん、がまん、熱い、あと少し…… 熱ーい!
 
がまんできなくなってサウナ室を飛び出し、水風呂へザッパーン!
水風呂はもうすっかり怖くなくなった。そしてキーンと冷たい水に慣れたころ、外気浴スペースへ。
 
その時だった。インフィニティチェアでリラックスしていると、タオルに異変が。ふわふわだったタオルが堅い。なんと、タオルが凍っていたのだ!
 
そう、ここは軽井沢。1月下旬といえば、1年で1番寒い時期なのだ。最低気温は-10℃を下回り、最高気温でさえ0℃を超えない日が続く。
夕方からサウナに入った私は、3セット目に突入した時には、とうとう外気温がマイナスになっていたらしい。
 
最初はあんなにサウナがいやだのなんのと言っていたのに、外気温がマイナスの中でもサウナに入って水風呂に入り、タオルが凍るほどの気温で外気浴をするなんて……。 困難がまるで刺激に変わったのだ。
 
空を見上げると、日はすっかり沈み、満天の星空が広がっていた。
 
冬は空気が乾燥しているので空が澄み、星がとてもよく見えるのだ。まるで映画スターウォーズのオープニングのように、星屑がちりばめられている。
 
そして頭がボーっとしてきて、何だかふわふわしてきて、深いリラックス感に包まれた。そう、とうとう整いの時が訪れたのだ。
 
あぁ、これが整ったということか…… と思ったその時、急に体が冷えてきた。無理もない、外気温は氷点下なのだ。
 
そこでとなりの五右衛門風呂へ、一直線。板の上に乗ってしゃがみ、ゆっくりと体を沈めると、じわぁ~と温かさが体を侵食していく。マジで最高だ。
 
ふと自分の体をみると、無数の「あまみ」ができていた。「あまみ」とは、サウナに入浴した後、腕や足などの皮膚上に赤い斑点ができること。まるでキリンの網目柄のようである。
 
収縮した血管と拡張した血管が混ざっている状態で、つまり「サウナでしっかり温まり、水風呂でしっかり冷やされた」ということ。今日の修行は大成功! 達成感でいっぱいだ。
 
サウナ室で熱い時には「熱い」ことしか考えられず、水風呂では「冷たい」ことしか考えられなかった。そして外気浴では頭がボーっとして、ただただ気持ちよかった。
 
日頃からの煩悩を押し流すことができて、本当にいい体験。
サウナ記事も、きっといいものができるだろう。心が整って、すっかりポジティブになって帰宅したのだった。
 
 
 
 
***
 
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2024-01-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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