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負け犬の遠吠えからライティング・ゼミに至る理由


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:小林久子(ライティング・ゼミ2024年2月コース)
 
 
約20年ほど前、「負け犬の遠吠え」という酒井順子さんの本がベストセラーになった。その本では、「30代以上、未婚、子なし」の女性は「負け犬」なのだそうだ。その頃まさに30代で、独身、もちろん子供なし、見た目平均、しかもそれに加えて、彼氏なし、当時アメリカ留学中で学生だったため、仕事もない、貯金ないという、負け犬の中でも、ぶっちぎりに負け犬度の強かった私は、日本で大ブームとなったその本を読んだ。
 
読んでみると内容は若干創造とは違った。古い記憶によれば、確かに私のような(当時)30代以上の女性は負け犬なのだが、意外と高学歴で高収入の仕事をもち、美人だったり、結婚に興味がなくても、どういっても言い訳ととられるのだから、負け犬という言葉を甘んじて受けて、おなかを見せて笑いましょう、ということだったと思う。とある雑誌に載っていたこの本の紹介では、著者の酒井さんは、おしゃれで青山に遊びに行ける都心育ちのそれなりにリッチな家の出身らしく、そういう人が書く本なので、当然「キー、悔しい」という訳でもなく、やはりどこか余裕がある。ちょっと眉を上げながら「しょうがないよねぇ」と、当時のやはり流行っていた勝ち組・負け組というランク分けに対して、斜めに見ているのだよと、解説がされていた。それを読んだ私は、「そうだよねー、ごもっとも。負け犬で間違いなし」と納得、異国の空の下、お金も彼氏も、友人もあまりいない孤独な貧乏学生だったが、目標に向けて頑張るのだと、心を決めていた。
 
そしてそれから20年後、今の私がいる。当時と同じ、未婚、子なし、彼氏なし。もちろん30代ではない。でも今は、無事に留学も終え学歴も仕事あるし貯金もそれなりにできて、買いたいものはいつだって買える。はたから見れば何不自由ない、おひとり様。でも何でしょう、あの頃と違い、負け犬という言葉が突き刺さる。それは、結婚したかったとか子供が欲しかったということではなく、一番大事な頑張るものを今は持っていないから。あの頃は何もなくても目標があってそれに向かって進んでいると信じられたから、誰に何を言われても平気だった。
 
端的に言えば、この20年間うまくいかなかったということだ。自分がやりたかったことで結果が出ず、すでに50代。人生後は下り坂、若者に道を譲るべきという空気が漂い、引退もカウントダウン。コロナで失われた数年は若者だけではなく、アラフィフ世代にも厳しかった。コロナの雲を抜けたらすでに人生の終盤と、なんだか浦島太郎の玉手箱を開けた気分。しかもオンライン生活で、ちょっと生の実感が薄い。なんとなくスマホやインターネットをスクロールして気分を紛らわす、人生の時間とお金を消費するだけの生活。日常にからめとられ、どこもかしこもさび付いてしまった……みたいな感じ。
 
だから、だから、たぶん、それが今ライティング・ゼミに申し込んだ理由なのだ。やっぱりもう一度、人生最後というにはちょっと早いけど、また頑張ろうと、まだ頑張りたいと思って、書いてみようと、ライティング・ゼミに申し込んだ。いつも時間がないからあれもこれもできない、課題も書けないのにお金を払うのはと、理由をつけて色々なものを先延ばし、このゼミももう何年も前から知っていたけど、今回はやろうと、今、締め切りの朝の3時からこの課題を書いてます。
 
そしてもう一つの書く理由は、書くことで自分をさらしてみようと思ったから。負け犬の遠吠では、負け犬はその場ではなく一人で遠くに吠えている状態だ。勝負に出て相手に向かって吠えているわけではない。私は20年前は、世間一般に言う結婚や子育てという舞台で戦っていたわけではなく、私は私のリングで戦っていた。それが何であれ、自分の舞台で戦っている人は、負け犬ではない。負け犬は、リングの外であれだこれだと考えて、観客もいないのに吠えている。負け犬は、やはり負けたくない、傷つきたくないのだ。自分が持っているものを失いたくないし、人から批判されたくない。だから遠くで吠える。今はすぐにSNSでたたかれるし、身バレも早い。でも、もう一度リングにもどって直面しよう、自分をさらして身についた錆を落とすのだ。
 
負け犬の遠吠えは、20年前の考えでは、クールにスルーするための一つの方法だったかもしれない。ある分野で負けと認めて吠えるだけ。あるいはもしかして、一つのリングから降りて傷だらけで振り返って、ああすればよかったこうすればよかったと後悔して、吠えているのかもしれない。20年後の今はなんてったって多様性の社会だし、負け犬という言葉は過去のNGワードだろう。それでも今は遠吠えをやめて、リングに戻って書いてみよう。やっぱり私は負け犬でも遠吠えじゃなくてじたばたしたい、あきらめの悪い負け犬なのだ。
 
という訳で、これからライティング・ゼミでは、よろしくお願いします。
 
 
 
 
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2024-03-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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