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小学4年生ごろから「めんどくさい」と言い始めることについて、塾講師が考えること

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:香月佑水(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
塾講師を始めて数年が経ったころ、ある年齢になると子供たちが言い始める口癖に気がつきました。
 
「宿題めんどくさい」
「この計算めんどくさい」
「漢字書くのめんどくさい」
 
塾にやってきた小学生が、目の前のこと一つ一つに、それは丁寧に「めんどくさい」というラベルをつけ回っていました。
めんどくさいをそんなに連呼されると、流石に私も気になり始めます。
 
塾は勉強する場なので、やんわり注意するべきなのかなと思いました。
でも。
それより先に心によぎっていた事のおかげで冷静さを取り戻し、思いとどまりました。
(あれ、この子これまでこんなに、めんどくさいって言葉、連発してたっけ)
という疑問でした。
 
次に来た時も、そのまた次の時も。
「どうしたの?」
と聞いてみても、
「だってめんどくさいんだもん」
さも当たり前だと言わんばかりに返ってくるだけ。
しかもどうやら本人、最近になってめんどくさいを連呼し始めたことに無自覚な様子でした。
 
つべこべ言わずにやりなさいと言ってもいいのでしょうが、心の中の私が問いかけてきます。
(どうして急に口癖みたいに言い始めたんだろう)
 
他の子たちの様子をよくよく思い返してみて、気がつきました。
小学4年生くらいからでしょうか。
時おり
「めんどくさい」
と発し始める子が出てくるのです。
 
4年生になったとたん「めんどくさい」と言い始めた他の子を見て、「なるほど」という確信みたいなものが心の中に生まれました。
 
成長とともに、どうやら「めんどくさい」が口癖になる子がいるみたい。
確かに、4年生くらいから急に勉強が難しくなっていくイメージはあります。
 
その日も塾で、
「学校の宿題ドリルがめんどくさい」
という声を聞きながら、ふと思い浮かんできたことがありました。
お家でも多分「めんどくさい」を連発している子を、近くで見ているであろうお父さんお母さんの様子です。
 
うちの子はそんなに勉強が嫌なのかとか、
そんなことばかり言って、そのうち勉強についていけなくなったらどうしようとか、
不安がよぎるのではないかなと。
 
勉強したくない子と、せめて学校の勉強くらいはという感じで勉強させたい親の間でバトルが起こることを、塾に入る前のご家庭から勉強の悩みとして聞くことが度々あります。
 
「めんどくさい」も、バトルの開始の発火剤として十分な威力を発揮するでしょう。
だって、マイナスの言葉を何度も聞くと、聞かされた方もきっと疲れてしまいます。
「いいから宿題やりなさい」とイライラを込めて言葉を発してしまうこともあるのではないかと思うのです。
 
「もう、親の言うことは聞かないんです」と、先生の方からどうにか言ってあげてくださいという感じで、お願いされることもあります。
 
じゃあ、言わせなければいいのか?
注意して、言わないようにさせれば解決するのか?
 
その疑問への答えは、子供たちの姿から教えてもらいました。
「めんどくさい」と言いながら、結局は、ちゃんとやっている姿に。
 
だから、「めんどくさい」ばかり言ってないで、早くやりなさい、と言ったことは結局ありません。
塾という環境だからやってる、というのはあると思います。
 
じゃあ、急に出てきはじめるその口癖は、一体なんなんだろう?
そう思っていたある日、気がつきました。
「めんどくさい」と言うほとんどの場合、その言葉の中に嫌悪感のようなトゲが入っていないのです。
 
(心底、心から嫌で嫌でしょうがない、ほんとに仕方ないからやろう、という極限の意味じゃないのかもしれない)
学年が上がるごとに勉強は少しずつ難しくなっていきます。
小学1年生の頃は漢字の勉強ひとつとっても「一、二」から勉強するのに、それからどんどん複雑になっていきます。
 
うーん、確かにめんどくさい。
 
(事実として、だんだん面倒になることに対して、「めんどくさい」が口をついているだけなのかもしれない)
そう思うと、子どもの口癖は一種の挨拶みたいなものなのかなと、私の中で変換されたのでした。
 
挨拶、なのでなんなら私が先に言うようになりました。
「今日勉強する計算、めんどくさいよね」
「この漢字、画数いっぱいあってめんどうだね」
こんな風に。
 
子ども達から見たら、少しずつ難しくなっていくことを毎日毎日勉強していくのは、確かに大変だと思います。
大変だなと心に思ったことを、ポンと口に出してしまっているだけなのかもしれません。
 
「めんどくさい」
という声を聞いたら「うん、確かにこれはそうだよね」と返すようになりました。
挨拶なので、おはようと言われておはようと返す、そんな気軽な感じで。
 
それから、「めんどうだけど、困ってることはある?」と聞くようになりました。
 
出来る、けどめんどくさいだけなら、極端で単純な話、やればいいだけです。
でも、出来ないだと話は別です。
ただ、出来ないという言葉は全てを否定してしまいそうな響きがあって、私は使いたくないので、困ってるという言葉を使います。
困ってることを解決して、出来るようになってもらうことが必要です。
 
それから。
「今日の計算、ちょっとめんどうだよね、でもよく頑張ってるね」
という感じで、挨拶の先回りを始めるようになって、不思議なことが起こり始めました。
だんだん「めんどくさい」と言う子が少なくなってきたのです。
 
大人から見れば「出来て当たり前のこと」も、子ども達から見れば「人生で初めて知ったこと」だったりします。
子どもたちにとって身近な大人の一人である私が共感することが、安心感に繋がるのだろうと思いながら、「めんどくさいところだけど、困ってることない?」と先回りの挨拶をするのでした。
 
 
 
 
***
 
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2024-03-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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