メディアグランプリ

ヤタガラスの靴下


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:きむらあや(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
八咫烏(ヤタガラス)とは、日本神話に登場する巨大なカラスだ。
古くから一般的に、三本の足を持つ姿が伝えられていて、導きの神と言われており、日本サッカー協会のシンボルマークにもなっている。
日本神話にもサッカーにも明るくないので、私が知っていることと言えばこれくらいだが、阿部智里氏の「八咫烏シリーズ」がとても好きで、この2月にシリーズ最新刊が発売され、さらにこの4月からはアニメ放送が始まることもあり、ふとした時によく思い出されるモチーフである。
 
 
 
全く話は変わって、恥ずかしながら、めちゃくちゃものを失くす。
 
手袋やマフラーはもういくつ失くしたか覚えていない。今年もまた手袋を一組なくしたので、もう自転車用にコンビニで買った軍手しか使っていない。マフラーは買うことをやめた。
 
傘はお気に入りのものほどよく失くす。どういう原理かわからないが、コンビニで買ったビニール傘は失くさないのに、歴代のちょっと背伸びして買ったかわいい傘たちは、何回かしか使わないうちに私の手をすり抜けて消え去ってしまう。
 
失くす理由はだいたいいつもパターンは決まっていて、電車や飲食店やタクシーなどで、カバンとは別の場所に置いてボーッとしているうちに、そこを出ないといけない時間になっていて、慌ただしく立ち去っていくときには、カバンと別の場所に置いたものの存在を忘れてしまっているからだ。一度忘れ物はないか、と振り返るだけで、失くさないで済んだことは何十回とあるだろう。
私の脳のメモリ容量だと、スマホとサイフとカバンを忘れずに持つことと、急いで出ることを意識するので精一杯らしい。
 
 
 
一方、外出時に置いてしまってつい忘れてしまうのはまだ理屈がわかるのだが、私の場合、靴下もよく失くす。
 
家の中で脱いで、洗濯をしているはずなのに、気が付くと片割れがなくなった靴下で引き出しが満載になっている。
 
私のせいで何組の靴下が夢半ばで解散させられたことだろう。好きなお笑いコンビが解散したような寂しさを覚える。靴下がお笑いコンビと違うのは、解散したらピンで活動することも難しいということだ。それでも捨てるに忍びなくて、相方が見つかって、再結成できるかもしれないという希望を胸に、引き出しにつまった片靴下を眺めるのである。
 
 
 
さらにさらに、恥を重ねて告白すると、洗濯するたびに畳んでしまうということも、私にはちょっと難しい。なるべくやりたくない。洗ったものはハンガーにかけっぱなしでそのままクローゼットにつっこむか、乾燥機をかけたものは専用かごにいれており、気が向いたときに畳んでしまう。畳む前のものが必要になったらかごから漁って取って着る。
 
書いていてめちゃくちゃ恥ずかしいが、同類の方もたくさんいると信じて、続ける。
 
そんな洗濯の仕方をしているものだから、朝、靴下のペアを探し出すマッチングの作業が非常に面倒くさい。上記のように、なぜか片割れがなくなることも頻繁にあるため、「この山を探していても、今手に持っている靴下の相方は出て来ないのではないか……」という疑念を抱きつつ、カゴの中身をぐるぐるかき回す。全く時間の無駄である。朝の忙しい時間に数十秒のロスは大きい。
 
しかし、最近、そんな日常が変わった。Twitter(現X)で、ネットの賢者より知恵を授かったのである。
「靴下は全く同じものを何足も買え。マッチングという概念を失くせ。」
即、Amazonで、無難な丈で無難な色の靴下を6足まとめて買った。
 
これが非常によかった。ズボラな洗濯スタイルは変わらないが、毎朝の靴下のマッチング作業から解放され、着替えの際のタイムロスがなくなった。ありがとうTwitter(現X)。こういうことがあるからやめられない。
 
 
 
不注意であること、ズボラなことは確実に私の短所だ。自覚はもちろん、大いにある。でも、最近ではそのことを自分で過剰に攻めてももうしょうがないと思っている。
 
子どものころからたくさん失敗して怒られて悩んできても、なかなか直らなかった。そんな自分の性質そのものを改善しようとするよりも、無理しなくてもなんとかなるシステムを考えたり、採り入れたりするほうが楽しいのではないか。
 
そんなふうに、自分の特性をそのまま受け入れて、向き合い方を考えられるようになると、家族や友人やなど身近な人にも同じように考えられるようになると思う。多様性を受け入れることは、自分の芯と向き合うことから始まるのではないだろうか。
 
それでも、どんな対策を考えていても、なにかやらかしてしまうことは必ずある。それも、私の場合は頻繁に。そのときはせめてネタにしてシェアしたり、自分でおもしろおかしく突っ込んだりして、昇華させて軽く受け流してしまおうと思っている。消化ともいえるかもしれない。
 
この記事は、ただただ自分の恥を重ねて告白しているわけではなくて、自分の変わらないダメな性質について向き合って、昇華する、もしくは消化するために書いている。ここまで書いたことによって、私自身はもうだいぶ気が軽くなっているので、読んでくれた方にちょっとでも笑ってもらえたら幸いだ。
 
 
 
先日、久々にたまった洗濯が終わった衣類を畳んでいた。
 
冬用に何足もまとめて買った靴下が、かごの中に入っている。よくよくみると、なぜか、同じ靴下が3枚(1足+1枚)あった。ポーカーで言うならスリーカード。
 
まとめ買いをしても、結局靴下を失くしてしまうことの根本的な解決にはならない。当たり前のことに気づき、私ってやっぱりダメだなあ、えへへ、という諦めとともに、脳内で湧いてきてしまった自分へのツッコミを、ここで昇華(もしくは消化)させてほしい。
 
「わたしはヤタガラスか?!!!」
 
 
 
 
***
 
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2024-03-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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