メディアグランプリ

ひきこもりの次男と、冒険の旅へ


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:関谷陽子(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
皆さんは、ロールプレイングゲーム(RPG)を知っていますか? 簡単に説明すれば、主人公になった視点で物語を進行できるゲームです。子供の頃、ファンタジー小説が大好きだった私は、初めてRPGをプレイしたときに、その魅力の虜になりました。「1日1時間」という時間制限に我慢できず、親に見つからないようにこっそりゲームをしていたことも、いまでは懐かしい思い出です。
 
 
私が一番好きだったRPGは、ドラゴンクエスト(通称・ドラクエ)シリーズです。数年前からは2人の息子たちも、そのゲームをするようになりました。長男はさほどでもありませんでしたが、次男はかなり気に入ったようで、私と2人でゲームの感想を言い合ったり、次の新作に対する期待などを話したりするようになりました。
 
 
実は、次男は今から7年前に不登校になりました。小学2年生の時です。学校に行けないだけではなく、外にも出られなくなり、いわゆる「引きこもり」の状態になってしまいました。勉強もせず、生活習慣は乱れ、ゲームやYouTubeばかりの毎日。どうしようかと悩み、ネットで検索をしまくった私は、「不登校対応として、ゲームの制限をせず、好きなことだけさせる」という方針と出会いました。迷いはありましたが、一か八かの気持ちでその方法を結構したのです。何しろ、時間ばかりはたくさんあります。
 
 
どうせゲームをするなら、RPGをしたらいいのに。そう思っていた私の思惑は、見事に果たされます。片っ端からゲームをしているうちに、私が購入していたドラクエシリーズに手を伸ばし、プレイするなりハマったようです。家の中にいながら、馬に乗って草原を駆け、船を手に入れて大海原に漕ぎだし、洞窟やダンジョンで宝箱を探す。ゲームとはいえ、次男を冒険の旅に連れ出してくれたドラクエには、本当に感謝しています。
 
 
さらに、ゲームの中だけではなく、本当に外に出るきっかけのひとつになったのは、ドラクエのオーケストラコンサートでした。
 
 
最初に次男とドラクエのコンサートに行った時、次男の状態はものすごく悪い状態でした。先ほども書いたように、当時の次男は全く外に出られなくなっていました。自分が行くと決めても、本当に行けるかどうかはその時にならないと分からない。「行きたいと思ってるのに、外に出ようとしたら、足がすくむねん」と、ぽつりを呟いた次男の姿は、きっとこの先も忘れることはないでしょう。
 
 
そんな状態だったにも関わらず、「大好きな音楽を、生のオーケストラの演奏で聴きたい」という思いが強くなった頃、ちょうど電車を乗り継いで1時間くらいの場所で、コンサートが行われることになりました。もしかしたら直前に行けなくなる可能性も考えていましたが、実際には外に出て、電車に乗って出かけることができました。確か、小学4年生くらいになっていたと思います。それくらいの年齢だと、ほとんどの子が何の苦もなく行ける工程でしたが、次男にとってはまさに大冒険だったに違いありません。人が怖くて、電車に乗るのが怖いと言っていたけれど、ヘッドホンをして、小さな体を奮い立たせるようにして、彼は一生懸命、会場に向かいました。
 
 
 
あれからまた年月が流れ、今では中学2年生。いまだにあまり外には出ませんが、行きたいところに行く時は、以前よりも気楽に出かけられるようになりました。きっと、次男なりに、たくさんのものを心の中で乗り越えてきたんだと思います。
 
 
 
演奏後、周りの人よりもひときわ大きな拍手をしている次男を見て、本当にゲームが好きでよかったと思いました。ゲームのおかげで、こんなに感動的な時間を息子と一緒に過ごすことができている。中学2年生といえば、思春期真っ盛り。自分が同じ学年だったころを思い出してみても、親となんてほとんど会話をすることはありませんでした。自分の両親に対して申し訳ない気持ちを抱きつつも、だからこそ、こうして同じ時間を過ごしてくれる次男にも、なおのこと感謝の気持ちを感じました。
 
 
そして、次男とこうして出かけることをさせてくれる、ゲームと音楽という大きな力に対しても。音楽の素晴らしさはもちろんですが、曲を聴くだけで、あの時の冒険の感動が蘇ってくる気がするのです。きっと次男も同じように感じているのではないかなと思います。
 
 
人は何に救われるか、わかりません。世間的に良くないと言われているものも、誰かの助けになることもある。ネットで検索をしたら、不登校でもゲームの時間を制限した方がいいという意見はたくさん出てきます。それが正しいかどうか、正直私には分かりません。でも、引きこもっていた次男を外に連れ出してくれたのは、明らかにゲームのおかげです。
確かに、悪影響もあるのでしょう。でも、ゲームをすることで、今のつらさをしのげることもある。何が正解かはわからないけれど、絶対に正しいと思えることはあります。
 
ゲームって、本当に楽しい。音楽って、素晴らしい。
 
 
 
 
***
 
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2024-03-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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