いつもうっすら不安。そんな脳内を棚卸し
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:きむらあや(ライティング・ゼミ2月コース)
ただ今、インドネシア・ジャカルタに滞在中である。
仕事の出張ではあるが、コロナ禍以前の2016年に台湾を訪れて以来、約8年ぶりの海外訪問。
中国、韓国、台湾と、日本から飛行機で3~4時間程度の距離にしか行ったことがない私が、初めて8時間も飛行機に乗る。
くわえて、4歳の子を置いて、10日も家を離れるなんて今までなかったから、きっと人生を変える大きな気づきがあるはず。
次のライティング・ゼミの課題は、インドネシア滞在中の心境や出来事について書こう。
と、出発前は思っていたのだが、思った以上に毎日が目まぐるしすぎて、滞在4日目の今日時点で2000字に書けるまでに自分の体験を消化できていないので、少しだけ別のことを書こうと思う。
私はいつも飛行機に乗るとき、「落ちたらどうしよう」と思いながら搭乗する。
今回は8時間の長旅(私の人生比)だったが、その間、わりとずっと「落ちたらどうしよう」から始まり、「自分はここで飛行機が落ちても悔いのない人生を送れただろうか」「出発前子どもにちゃんと言ってきますを言えなかったな……」などと考えながら過ごしていた。
思い返せば、物心ついたときから、私はいつもうっすらと終わりの不安と向き合っている。
一番古い記憶は、小学生のころ、古い3DKのアパートに、両親、妹、弟と、家族5人で住んでいたころのことだ。
共働きで忙しくしていた両親ではあったが、いつも子どもたちが寝るころには帰宅しており、「おかえり」を言ってから床に就くことができた。
3DKの部屋を仕切るのは障子とふすまであり、それらは常に開け放たれていたため、居間にしていた部屋で、テレビの音や、蛍光灯の光で、両親の気配を感じながら眠っていた。
たまに、両親のうちどちらかが、職場の飲み会で遅くなる日があった。
特に母のいない日、父は子どもたちと同じ時間に寝るので、いつもついているテレビや居間の照明は、眠りにつく前に消されてしまう。
すると私は、眠りにつく前の時間、いつもと違う無音の家の中で、子ども部屋の豆電球を見上げて考え事をしてしまう。
「母は今ごろどうしているだろうか」
「次目が覚めたときにちゃんと家にいてくれるだろうか」
「自分の目が覚めなかったら、この世界はどうなっていくんだろうか」。
漠然とした不安に駆られ、ひとり、布団の中で涙をこぼしてしまう。両親に言っても馬鹿げていると笑われるか、困らせてしまいそうで、誰にも不安を打ち明けられず、母の飲み会のたびに家族や自分について、マイナスの方向にぐるぐると考えてしまうのであった。
比較的成長したあとも、ちょっとしたことで不安の波は襲ってくる。
ジェットコースターに乗れば、「脱線したらどうする?」
東京スカイツリー展望台に登れば、「今、展望台の窓ガラスが抜けたらどうする?」「それでこの手すりが急に砂みたいに崩れてなくなったら?」
もはや妄想の域にも達している気がするが、思いついてしまうものは仕方がない。
大人になって、泣いたりすることはなくなったが、うっすら今自分が終わるんじゃないか、という気持ちは常にある。
だからといって、飛行機やジェットコースターに乗らないとか、スカイツリーに登るのはやめるとか、そういう気持ちにはならない。
うっすらとした不安な気持ちを感じながら、ただ漫然と流れに身を任せている。
そういった、「漠然とした不安」によるモヤモヤは、最近始めた、「朝30分ほど早く起きて、ノートに気持ちを殴り書きする」ことで、ちょっと楽になる気がしている。
やっていることは簡単で、B6サイズのノートに、ボールペンで思ったことをそのまま文字にして書き留めるだけ。毎日膨大な思考で頭がこんがらがってしまう人向けに、思考の整理に役立つ習慣として紹介されていたのを見て、2024年の年初から始めてみた。
ただ頭の中で考えているだけだと、出口のない迷路のようにぐるぐると堂々巡りしてしまうが、考えていることをそのまま「手書きで書く」という物理的な動作を加えると、解決にはたどり着かずとも、頭の中がすっきりして、不思議と気持ちが晴れていく。考えた結果、目に見える成果物ができるということ自体もよいのかもしれない。
考えるための時間を一日の最初に設ける、ということも、意外と今までできていなかったことに気づいた。
起きて活動している時間は、生活や仕事のことなど、やること、考えるべきことに追われて意外と脳内が忙しい。漠然とした不安とちゃんと向き合う時間がないから、寝る前や、ジェットコースターの発射前など、他に考えることがなくなった瞬間に襲ってくる。
不安を含め、自分の脳内に散らばっているとりとめのないことに、寝起きのフレッシュな脳で30分間とことん向き合っていると、だんだん楽しく、ポジティブな気持ちになってくる。「意外といいこと考えてるじゃん!」と、取っ散らかった自分の頭の中も、そう悪くないのではないかと思える。
ライティング・ゼミの課題も、だいたいこのときに書きながら思ったこと、ひらめいたことを書いている。
言ってみれば、「脳内の棚卸し」ではないかと思っている。
インドネシアに来るにあたり、いつも書いているノートもスーツケースに忍ばせてきた。が、まだ一度も開いていない。
この旅で感じたことを毎日書き留められたらいいなと思って持ってきたけれど、全然起きられない。
起こっていること、感じたことは毎日ものすごい量があるので、帰国して、振り返りながらノートを書いて、思考が整理できたら、また書いてみようと思う。
まずは、渋滞の中、バイクの群れの中をすり抜けていくタクシーの中で、帰りの飛行機の中で、ふいにやってくる不安とうまく付き合いつつ、帰国したいと思う。
***
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