メディアグランプリ

本当にプレゼントしたい物に価格は関係ない


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:春澤 寛善(ライティング・ゼミ2月コース)

私にはつい最近まで大切なお取引先の部長がいた。
“ザ・大阪人“といった感じのコテコテ関西弁で
言いたいことは素直に口にして、時には感情も露わにする。
キリッとした目つき、鋭い口調、熱く主張する、白髪多い50半ばのおじさん。
時に遠慮して言葉を選ぼうとしても、やっぱり最後に相手を想ってズバリ本音を言い放つ。
基本的には自分にも他人にも厳しく、そして、優しい人だった。

取引当初から紆余曲折ありつつも、
そのたびにお互いの事情を汲んで解決し合った日々。
大阪に出張して初めて一緒に食事させて頂いた時、
真面目な話は1割で、殆どがプライベートな話題で笑い合った。
たった2年半しかなかったが、“親交”という間柄を教えてくれた出会いだった。

私が会社を辞めて独立することを決意した時、
一番に連絡したのはその方だった。

喜ばしい、誇らしいと喜んでくれたけど、
「寂しくて涙が出る」とボソリ言われた。
同僚が退職するかのように。

それから1ヶ月経過した頃、
東京出張があるということで上京してきた時のこと。
最後のお別れ挨拶をしたあと、照れくさそうに小さく上品な紙袋に入ったプレゼントをくれた。
開けてみると万年筆に似た形の書きやすいボールペンだった。

「色々探しながら試してみたところ、これが一番書きやすかったんですよ」

部長は屈託のない笑顔だった。
きっとお小遣いを気にしつつ、
色々と試しながら物色して買ってくれたのかと思うと、
グッとこみ上げてくるものがあった。

“絶対にこれを使ってもっともっと良い仕事をしてやる!”
と心に誓い、仕事環境が変わる不安は払拭された。
それからの私はいま、力強く新たなステージを踏み出している。
商談中にはペンがぐりんぐりんと音を鳴らすかのようにノートの上を走り回っている。
私にとって、気持ちの面で勢いをつけてくる大事な道具だ。

実は、私には使い慣らした革製品のノートカバーがある。
休日に家族で出かけた時、通りがかったお店でふと見かけた時に
急に惹きつけられたものだった。
これを使えば商談に意気込みが増すだろうと
なぜか確信的に思えて衝動買いをした。
幼少期からいつも慎重に買い物するタイプなのに。

かれこれ使用し始めて5年が経ったが、
何度見ても、どこを見ても、ほころびが一つもなく丈夫なカバーだ。
とても深みがある濃緑色で、表紙には金色でネームも入れている、
嗜好あふれた代物である。
頂いた大事なボールペンは、私にとって最高なコンビである。

そして、一つの案が浮かんだ。
「そうだ、このノートカバーを返礼品にしよう」
そう決めるのに時間は要さなかった。
私もずっと使い慣らして役に立ってきたものだし、
きっと喜んでくれるだろうと、心に迷いはなかった。

ただ、そこは慎重にと、
もし同じ物を持っていればカニバると思い、
「お元気ですか?」と挨拶を装いながら電話で聞いてみた。

「部長とお会いしている時、普段あまり手元を見ていなかったのですが、
商談中にノート持ってましたっけ?」
「いやぁ、私は持ってまへん。面倒なのでコピー用紙を数枚手に取って
メモしてるぐらいですわ。あれが一番ええんですわ」

“よし!”
これでプレゼントはノートカバーに決まった。

後日、販売店へ足を運び、
早速似合う色から決めていった。
サイズはA4コピー用紙に使い慣れたものがいい。
いや待てよ。
普段ノートを持たずコピー用紙数枚しか持ち歩かない人に
同じ大きさのA4サイズではかさばるかも……。
もう一回り小さいものにしよう。
濃紺が似合うと想像し、
表紙の刻名は金色アルファベットでバッチリ決まった。
日頃にノートという手荷物が増えても、きっと喜んでくれるだろうと手応えはあった。

だがしかし、
そんな時に、あることを言われたのを思い出した。

「あなたと交渉テーブルについた時、スラスラ話ができて感心してましたんやで。
私なんか誰かと初めて対面する時、何話してええか分からんようになるんです。
こればっかりは今でも慣れませんわ」

そうだ!
私にも勇気づけてくれたボールペンのように、
もっと役に立てるものがあるはずだ。

実は私がいつも酷使しているお気に入りノートカバーには、
その中身にも秘密兵器があったのだ。

世の中には優れたビジネスノートはある。
ただ、私にはダントツに使いやすいノートがある。
それは某大手100均ストアで売っている会議用ノートB5版で、
いわゆる商談記録に適したノートだった。
日付・場所・出席者に加え、会議名・議題・決定事項が元から印刷されており、
商談の事前準備する時に先にアジェンダを記載しておくことで商談がスムーズに進行できる。
価格は100円。安い。さすが進化し続ける某大手100均ストア。
私にとってはプライスレスな重宝品である。

これをノートカバーに入れるか。
もし知っていたら、価格的に釣り合い悪くなるか。
100均ストアで売っているノートを入れてコスト削減したと思われないか。
いいや、中身が100均商品、何が悪い。
そんな葛藤は単なる邪推だ、有効に使えれば関係ない。
これで商談時の悩みが解決できるではないか。

しかし、そこは革製品ノートカバーを売るお店。
中身ノートには方眼型の有名ノートを推奨している。
ぱっと見た時の華やかさがあり、やはりかっこいい。
方眼紙も結構使える。

どうするか……。
「中身は100均ですが、使いやすいですよ!」
で分かってくれるか……。
部長は貰い物で“安く仕上げたのかな”と邪推される方では無いはずだ。
だが、そもそもプレゼントで100均モノをあげたことはない。
組み合わせでもない。
う~ん……。

考えすぎだ。
そもそも何をあげたいのか。
それは“勇気”を与えるモノだ。
お互いそれぞれ違う道で
力強く踏み出す、魂こもる道具を差し上げるのが目的だ。
もうこれ以上迷わないでおこう。

店員に葛藤した事情を話すと、屈託のない笑顔で、
自らノートカバーに100均ノートをセットアップして包装できるよう、
贈答品用のラッピング部品をくれた。
不器用な私は3度リボンをかけ直し、その都度、箱の表面を綺麗に拭いた。

そして、いよいよプレゼント発送。

後日、お礼の連絡が来た。
「便利なものですごく嬉しいです。大変感動しています。大切に使います!」

やや詰っていた気持ちがスッと楽になった。
やっと答えと出会えた。
“良かった!”
お役に立てられることができて、何より嬉しかった。

大切な人へプレゼントする時、何をあげるか考えることは楽しい。
コストパフォーマンス良いモノを選ぶ自分用の買物とはちょっと違う感覚。
贈り物とは“想う心”であり、プライスレスなのだ。
私もいつか弱気になるような時は、頂いたボールペンを走らせながら部長の想いを感じよう。

“部長、これからお互いそれぞれの場所で、心熱くビジネスしましょうね!
またいつかお会いしましょう。
それまでお元気で“

***

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2024-03-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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