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辞書なんてもう不要? スマホで翻訳の落とし穴

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:工藤洋子(ライティング実践教室)
 
 
最近、辞書引いたことありますか?
 
「え〜、辞書?
そんなの学生のとき以来、そんなの使ってないよ?」
 
普通はそうでしょう。
学生時代はまだ紙の辞書がメインだった世代でも、すでに電子辞書が優勢だった世代でも、私のように仕事で日常的に英語を使ってでもいない限り、辞書を引くなんて機会は滅多にないはず。
 
では、何か分からない言葉に出会ったら、どうしますか?
 
きっと手元のスマホでササッとググっちゃうのではないでしょうか。
 
まず、ブラウザで英単語を調べる、としましょう。
「(単語)日本語」とか「(単語)訳」とか検索窓に入れますよね?
 
すると親切なことにその英単語と対応する日本語訳が最初に出てきます。Google検索を使っていれば、おそらくGoogle翻訳エンジンを使った検索結果が出ます。
 
「あ、これはこの意味ね!」
 
と、納得してそれで終わりとなるでしょう。
 
でも、それって本当にその意味で合ってる?
 
辞書を引かずに英単語の意味を調べることには、実は大きな落とし穴があります。
 
もし、引いたのが物の名前などのいわゆる名詞ならば、そこまでのズレはないのですが、動詞や形容詞といった単語だとしたら、自分でも気が付かないうちに大きな誤解を生んでしまう、かもしれません。
 
いったい、どういうことでしょうか?
 
英語と日本語は違う「言語」です。でも違うだけでなく、お互いの距離がとても遠い言語なのです。単語も文法も、基本的な構成も違っているところが多いので、単語ひとつひとつを取ってみると、その「守備範囲」があまりにも違っていることがよくあります。
 
野球なら、ファースト、セカンド、ショート、サードでそれぞれの守備範囲が決まっています。ショートがセカンドに入ることはあっても、ファーストのところまで追いかけていったりはしないでしょう。
 
ところが、英語にはどんなことでもこれだけで言えてしまうとまでいわれる単語があります。getとかgiveとか見た目簡単な動詞がonやoverなどの前置詞と組み合わさると無限とも思える意味が生まれてしまうのですね。
 
これを句動詞といいます。
日本語にはまったくない概念なので、英語の上級者でも感触をつかむのに手こずる表現です。
 
おまけにそもそも野球のルール自体が違っていることもあります。
 
たとえば、「ナイーブ」と聞いてみなさんはどう思いますか?
 
繊細な人?
純粋で傷つきやすい感じ?
 
日本語ではどちらかといえば、よいイメージですね。
 
ところが英語では話が違います。
naïveといえば、日本語と同じ意味もあるにはあるのですが、どちらかといえば「世間知らず」とか「お人好しでだまされやすい」とか、ネガティブなイメージの方が強い単語です。
 
まるでファールがホームランになるみたいではないですか!
 
先日、映画『オッペンハイマー』を観てきました。
その中でも主人公が友人から軽率な行動を「この世間知らずが!」といった感じでたしなめられる場面があったのですが、そこで使われていた単語は、間違いなく「naïve」でした。
 
悪い意味しかありません。
 
もし、他人に対して「You’re naïve.」とでも言ってしまえば、相手はかなりの確率で馬鹿にされた、と腹を立ててしまうでしょう。
 
でもブラウザに一番に現れるのは、「naïve =ナイーブな」でした。安易にそのまま使うとネイティブ相手に不愉快さを感じさせるかもしれません。だから、辞書を引いた方がよい、と私は主張したいのです。
 
ところが今度は辞書を引くと、
 
「意味がたくさん書いてあって、どれがこの場合正しいのか分からないよ!」
 
と思われるかもしれません。というか、確実にそう思うでしょう。さきほどもいった通り、英語と日本語は守備範囲が違うのです。それを無理やり1対1に対応させようとするのは違うパズルのピースを無理やりはめ込もうとするようなもの。持ってきた訳が違う文脈なら、きっとしっくり来ないでしょう。
 
正しいピースは周りの色と同じトーンで、なおかつスッとはまる形状のもののはず。つまり、言葉でいうと文脈に合った訳語が見つかればよい、ということになります。
 
じゃあ、もう救いはないのか?
 
いえいえ、そんなことはありませんよ。それこそ今、世の中を騒がせているAIの出番です。
 
こういう場合はこの単語、この表現が使われる、という様々な用例を収集したデータベースをコーパスといいます。母国語ならある程度は自然に身に付けている語感ですが、外国語の場合は努力して身に付けるしかないものです。
 
今の最新のAIはこういったコーパスも学習先として取り込んでいます。だから、何か分からない英単語があったら、
 
「単語ではなく、文章で引く」
 
のが、AI時代の正攻法です。それで分かればじゅうぶんならそれでもよし。そしてどう訳されていたのか、それぞれ見直せば英語力の向上にとてつもなく役に立ちます。
 
紙の辞書の時代に学生生活を送り、英語を習得した私など、もう太古の恐竜のようなもの。新たな力でより簡単に英語を習得するもよし、習得の必要さえない、と思うもまたよし。
 
そんな時代にただ単語をググるだけではもったいない。より有効な使い方を目指してはどうでしょうか?
 
 
 
 
***
 
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2024-04-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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