メディアグランプリ

書くことは遺跡発掘のように


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:大場 安希子(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
「発掘調査ってさ、スプーンみたいな小さな匙でちょっとずつ掻いて遺跡の形を出していくんだ」
私が小学生の頃、父がそう話してくれたのを最近思い出している。
父は大学生の頃、アルバイトで仙台市内の遺跡の発掘調査によく行っていたそうだ。
東北地方随一の大都市である仙台市は、市街地のすぐ近郊で地層の観察が簡単にできるところで、その地層からいろいろな種類の化石が多く発掘される土地である。
だから、発掘調査のアルバイト募集は、大学の掲示板によく張り出されていたのだという。
 
この話を思い出すようになったのは、天狼院書店のライティング・ゼミに入って、文章を頻繁に書くようになったことがきっかけだ。
文章を書き進めていくと、「私ってこんなふうに考えていたのかー」と、自分の思考が徐々にくっきりしてくるような感覚がある。しゃべることでも、頭の中だけで思考することでも、この感覚は得られない。
元からそこにあるけれど、土に埋まっていてはっきりとは分からなかった輪郭が露わになるような……そうか! 書くことは私にとって、遺跡を掘り進めるような作業なのだ、と父の話とつながった。
 
もともと私は、しゃべることが苦手だ。
思ったことをすらすらと口に出して表現することができない。
私の頭と口は回路がつながっていないみたいに、出てくるまでがとても遠い感覚がある。
 
周囲には、反射神経でしゃべるような人もいる。
歩くことと同じように、何も考えずに話せるのだという。
目の前にカンペも出ていないのに淀みなく説明できて、オチまでつけて笑いを取れるなんてすごい。
私は43歳にもなったのに、よちよち歩きのままだ。
 
“ノリ”でしゃべれることを格好いいと思っていた中学、高校時代、私にはそれができずとても苦しかった。しゃべりが上手な人が学年のヒエラルキーのトップにいるような気がしていた。
毎朝一緒に中学に通っていたAちゃんもとても話し上手だった。
彼女は学校まで歩く25分の間に、前日の古畑任三郎のあらすじやハイライトを上手く話してくれた。場面が見えるようだった。
 
大人になったらうまくしゃべれるようになるのではと思っていたが、ちっとも変わらなかった。
20年もサラリーマンをやっているが、会議での報告は事前にメモをしていないと上手く話せない。
自分が話す番が来るまでドキドキしながらメモを反芻しているから、前の人までの話は上の空である。
そうやって、これまで普通に話せる人を必死で装ってきた。
頭の中にあることを一度文章として見える状態にして、そこを経由すると初めて口に出すことができる。
一度バッグの中身を全部机に出してみないと、何が入っていたのか分からないような感じなのだ。
周りの人たちが普通にできることができないので、私って頭が悪いんだな……とコンプレックスだった。
 
ところがある日、新しい概念によってそれは少しだけ変わった。
急に目が覚めて眠れなくなり、仕方なしにスマートフォンでYouTubeを観始めたある夜のこと。
普段、占いや風水のチャンネルを好んで観ているので、「おとめ座の3月の運勢」や「一粒万倍日の○月○日におススメの行動」といったような動画がサジェストされてくる。
その流れでゲッターズ飯田の動画がサジェストされたのでタップして再生した。
ゲッターズ飯田はお笑い芸人で占い師だ。彼自身が編み出した五星三心占いが人気で、著書の累計発行部数も1000万部を超える。(2024年3月現在)
五星三心占いは、6つのタイプ(○○座と表現される)×生まれた西暦年数が偶数(金)か、奇数(銀)かの2つのタイプで計12タイプに分かれる。私は自分が金の鳳凰座であることを知っていた。
 
YouTubeでゲッターズ飯田は言った。
「鳳凰座の人はおしゃべりが下手なんですよ。だから電話で話すとか地獄ですよね……」
 
え~、まじ!
私って宿命的にそういう特徴を持つ人だったの!?
それを聞いて、生まれながらにしゃべりが下手なのはショックだけど、ちょっとラクになった気もした。
人種の概念を知らずに白人社会に生きていて、「私って目も髪も黒くて鼻ものっぺりしていて、なんでみんなと違うんだろう……」と悩んでいたところに、あなたは黄色人種でそれが特徴だから、ということを教えられたようなものだ。
どうりで喋れないはずだわ!!
黒い目はメラニン色素が多いから白人の青や緑の目よりも眩しく感じないといういいところもあるらしいし、一長一短あるよね。
 
しゃべりが下手な代わりといっては何だが、聞くことは好きだ。
実は2年ほど前からとあるご縁で、様々な企業の女性役員にインタビューをして記事を書くという仕事を副業にしている。
自分から何かを語るのは苦手だけれど、他人には非常に興味があるので、その人がその生き方をしている理由が聞きたくて仕方ない。
だから、インタビューというのは好奇心が満たされるとても楽しい仕事だ。
取材が終わって書く段階になると、30~40分のインタビューでも結構な量になるのでなかなかしんどいが、書きながら再びその人に会えるような感覚があり、こういう部分がこの人の素晴らしいところだなぁ……なんて改めて感心し、その人への尊敬が確たるものになっていく。
 
ライディング・ゼミの課題は2,000字前後、インタビュー記事は4,000字前後。
この量を書くのは大変で時間もかかるが、自分の外に出てしまう前に、中で形にしてみて整理できるという意味で、私にとっては苦しいけど気持ちの良い作業でもある。
ゆっくり考えることを許されているという状態や、その時間が落ち着くのだと思う。
 
この天狼院書店のライティング・ゼミを受けることにしたのは、もっと魅力的な記事を書けるようになりたいと思ったからだった。
でも心の一番奥底では、しゃべりが下手な鳳凰座の私にとって、ライティングが人生の救世主になってくれると期待したからなのかもしれない。
実際のところ、書くことで私は、私自身を深く理解することができるようになっている。
そして過去の出来事や味わった思いが、今の私にどうつながっているのかという因果関係を知ることができている。こういうのを点と点がつながって線になるというのだろう。
私にとってライティングは、私も知り得なかった私を知るための武器になりつつある。
いや、武器というよりは、掘るためのスプーンか。
 
ところで金の鳳凰座には、こんな特徴もある。
「どんな仕事でも『これが自分の天職』と思い込んで没頭すると成功するタイプ」
この文章を書いている間にも、私って書くことが好きかも……とじわじわと思い込み始めている。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325



2024-04-18 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事