メディアグランプリ

プライベートな自己満足を愉しむ


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:義永 直巳(ライティング・ゼミ2月)
 
 
先日、用があり出かけたデパートで催事場を通りかかった。そこでは下着メーカーの催事をしていた。いつもは素通りするところだが、時間があったのでちょっと覗いてみた。すると、素敵な色やデザインの下着が並んでいた。
「そう言えば、もうどれくらい下着売り場というところに足を運んでなかっただろう」
ため息と共に、心の声が思わず出そうになった。
 
ここ数年は、下着は機能重視で色や柄などよりも、身につけやすさを優先して選んでいた。
ファストファッションのお店に行った時に、ついでに下着も買おうとか、自然派志向の生活雑貨のお店で何となくこれにしようかと買ったり、そんな選び方をしていた。
 
そう、下着は外からは見えないのだ。
外から見えないところは、「ついで」だったり、「何となく」という選択をしていた自分に気づかされた。
 
ずっと仕事をしていたので、仕事に着ていく服はまるで鎧のようだった。働く女性にとって、服装をきちんとすることは、相手への先制攻撃みたいなものだ。普段使いのカジュアルな服装から、本気のスーツまで、その状況に合わせて自分を演出することも必要だった。仕事をしていた私にとって、服装という、一瞬にしてわかるアイキャッチは重要だったのだ。
 
見えるところはそれなりに演出をしていたが、下着まで戦闘モードではなかった。
あれでは片手落ちだったのではないかと、今になってそう思う。
 
表面は美しく整えているが、見えないところは乱雑になっている、そんなことが前にもあったのを思い出した。それは、自宅の断捨離をする前のことだった。
仕事の忙しさにかまけて手入れを怠った自宅は、モノで溢れていた。押し入れやクローゼット、洗面台の下やキッチンの収納スペースは、入る限りのモノを詰め込み、溢れそうになっていた。見た目には片付いているように見えていたが、扉の中は、とても人に見せられるような状態ではなかった。収納スペースは、そもそも人に見せるようなところではないので、自分だけが分かったらそれでいいと思っていた。しかし、それを続けていくうちに、自分でも何が入っているのかわからなくなっていた。
 
自宅は、断捨離をしてモノが減ったので、見えるところだけでなく、見えない収納スペースに入っているモノまでも美しくディスプレイするようになった。見えないところを美しくすることで、不思議と自己肯定感が上がったような気がした。
 
見えないところと見えるところのギャップがあるというのは、自己肯定感を下げてしまう。本当の自分というのが見えないところに潜んでいるからだ。
住まいの空間で、見えるところも見えないところも美しくすると、そこに住む自分という人間性を磨くことになるということを、断捨離の実践で学んでいた。
住まいの空間をぞんざいに扱うことは、自分自身をぞんざいに扱うことだった。
自分を丁寧に扱うことを心がけていたつもりだったが、意外なところで抜け落ちていたことに気づいた。
それは、下着だった。
私は、美しい下着を身につけることに何となく抵抗があった。いつの頃からか、下着は機能重視のモノを選ぶようになった。ちょうどライン職になった頃と同じ頃だ。
その頃から私は、満身創痍の体には美しい下着は相応しくないと思っていたのかもしれないスーツなどの鎧に身を纏った体は、実は傷だらけで、これ以上傷つかないよう鎧を纏っていたのだろうか。
 
仕事を辞めた私には、もう鎧は必要ない。せめて下着くらいは美しいものを身につけたいな……。そんなことを思っていたら、近くで60代くらいの女性が店員に話しかける声がした。
「ちょっとサイズ測ってもらってええか? 私な、前は90やったんやけど、サイズが合わへんようになってるかもしれへんのやわ。ちょっと測って」と、近くにいる店員に声をかけていた。その女性は、まるで近くのスーパーへ買い物に来たようないでたちだった。その格好でデパートへ来て買い物をするという見た目と、美しい下着を買おうとする行動のギャップに驚いた。
「お客様、サイズは100ですね」
「そうか〜。やっぱり、サイズ変わってるか〜。前は90やったんやけどな」
どれだけ前やねんとツッコミたくなったが、あのおばちゃんでもこんな素敵な下着を身につけているのかと思うと、自分の下着に対する意識の低さが恥ずかしくなった。
下着をちゃんと選ぶことも、自分を大切に扱うことだと気づかされた。
 
もう仕事は辞めてしまったけれど、その頃の私に言うなら、満身創痍の体にも美しい下着は似合うと言ってあげたい。そして、その傷を美しい下着で癒せばいいのだと。
 
女性にとって美しい下着というのは、テンションが上がるものだ。これから、どんな下着を選ぼうかと思うと気持ちが上がる。誰に見せるモノでもないが、隠れたところの美意識は誇らしい感じがする。下着選びというのはプライベートな自己満足だ。そのプライベートな自己満足のために時間とお金をかけるのも悪くない。
 
 
 
 
***
 
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2024-04-18 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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