子育ては本を書くより大変
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:美月しのぶ(ライティング・ゼミ4月コース)
『一人の子どもを育てることは、一冊の本を書くより大変なこと』
という話を聞いたことがある。
執筆したことのない私でも、その困難さは容易に想像できた。
子どもは2人いるので、2冊を出版したことになると考えると、少しだけ報われたような気がする。「そんな凄いことをやってたんだ」と。
会社員時代は、DINKs(Double Income No Kids)狙いで、開発職、研究職、提案営業職を経験し、バリキャリウーマンを目指していた。
そんな私が、35歳の時、突然「子ども産まなきゃ」と急き立てられるように、数年内に復帰できる手続きをして、一旦退職した。
その時はまだ、簡単に復帰できると思っていた。
しかし、その復職プランは見るも無残に崩落していった。
37歳で、第一子(娘)を出産
40歳で、第二子(息子)を出産
子育ては順調な滑り出しのように見えた。
しかし、息子が生後間もなく重度のアレルギー疾患と診断され、ドクターから「治療は長引く」と告げられた。
その瞬間、カラダは硬直し、頭は真っ白になり、心は搔き乱された。
「長引くって、一体どれくらい??」
代々続くアレルギー体質。息子に遺伝させてしまったと、自分を責めた。
アトピー性皮膚炎(食物アレルギー)で、離乳食で食べれるものは、白身魚と野菜と海藻類だけ。授乳中は、私がこれを実践しなければならない。
お米、卵、肉、乳製品、油脂系全般、加工品は一切NGである。
これらが少しでも含まれようものなら、アナフィラキシーショックを起こしかねない。
毎朝目が覚めると、戦場に向かうような面持ちでキッチンに向かう。
いざ! クッキング!!
そこで繰り広げられる闘いは15年に及んだ。
だって、市販品は買えないし、外食もまともにできない。
そう! 作るしかないのである。
無添加、無農薬、有機栽培の食材を買い求め、来る日も来る日も、キッチンに立ち続け、
息子が食べる物、私が食べる物、夫と娘が食べる物と毎食のメニューは3種類。
「半年くらいかかるのかなぁ?」
「3歳の娘に寂しい思いをさせたくないなぁ!」
だが、半年なんて考えは甘かった。
名医を求め、病院を転々とするも、ドクター達の真逆の治療方針に翻弄され、
誰を信じていいのか、何に頼ればいいのか分からなくなり、ひどく混乱したものだ。
全身に広がる湿疹、痒くて泣きっ放し、掻いて血が出る。
スキンケアは怠れない。最大の恐怖はステロイドの常用。
化学物質が体内に蓄積され、副作用で、いずれは何らかの合併症で苛むことになるのではと。……極度の心配性。
「もぉ〜いい! 病院なんかに頼らない! 私が治す!」と腹を括り、
第二子出産後に予定していた復職を断念。
困惑の日々が続く中、
『人間のカラダは、食べた物で作られている』と聞いた時
「だったら、食べ物で細胞レベルまで変えてやるぅ!」
『健康が全てではないが、健康を失うと全てを失う』と聞いた時
「だったら、健康を取り戻してやるぅ!」と決意を固めた。……いたって単純。
『父が無知だと貧乏になる 母が無知だと病気になる』
このドンピシャな表現に打ちのめされ、自分の無知を受け入れた。
ここで持ち前の完璧主義が発動し、栄養の知識を取り入れながら、徹底的に食の改善に取り組んだ。
寝ても覚めても、良質な食材とバランスの良い栄養で、息子が美味しく食べれるレシピを考え続けた。
その甲斐あって、次第に息子の症状は緩和していったのである。
気づけば、50年間苦しめられた私のアレルギー症状もスッカリ消えていた。
アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性中耳炎、帯状疱疹。
頭痛、肩こり、生理痛、口内炎、よくひく風邪なども改善された。
なかでも、視力の回復には驚いた。
良くも悪くも、食がこれ程までに人に影響を与えるなんて。
その後はお察しの通り、健康オタク街道まっしぐらである。
息子がアレルギー疾患になっていなかったら、私のアレルギー症状はさらに悪化していたと予見できる。
息子のためにと思ってやってきたことが、自分にメリットをもたらしたのだ。
そして、高校卒業時の息子からのメッセージは、
『最大級のありがとう!』
長い闘いが感謝で返ってきた瞬間、大粒の涙が私の頬を濡らした。
続いて、娘について。
弟のことで不自由な思いをさせたくないと考え、
元気な娘には、やりたい事を自由にやらせてきた。
やりたい事を自分で選ばせた。
上手にできたら、大げさに褒めた。
「なんでもできる子〇〇ちゃん」
小学生の頃
女子でありながら、群れようとはしない。
だけど、いじめられたり、孤立したりすることもない。
「人は人、自分は自分」というスタンスが自然に身に着いていたようだ。
また、娘が中学生の頃、
専業主婦歴15年の私は、一旦は断念したものの社会復帰が諦め切れない。
ブランクの長さが足かせになり、出口が見つからず悶々としていた時、思わず娘にグチってしまった。
その時、娘は……
「ママの人生なんだから、ママがやりたい事をやるのが一番いいと思うよ」
ハッとしました!!
音を立てて剥がれ落ちていく目からの鱗。
「なぜ、こんな当たり前のことに気付かなかったんだろう」と。
そして、娘が大学生になったばかりの頃、(、は削除)
神社で引いた「凶」のおみくじを見て、笑いながら、
「私の人生には良い事しか起こらんもん!」と一蹴した。
スーパーネガティブな私は、スーパーポジティブな娘に、どれだけ救われたことか。
『たらいの水』という法則がある。
いわゆる『引き寄せの法則』を見える化したもの。
水を自分の方に引き寄せれば、水は反対側に逃げていく。
逆に水を反対側に押せば、自分の方へ戻ってくる。
無償の愛を注げば、無償の愛と感謝が返ってくる!
このことを子育てで教えられた。
世の子育て中のお母さんたちは、社会を支える未来の担い手を育てている。
これって、多大なる社会貢献だと思う。
子供は親の所有物ではない。
無意識のうちに親の思い通りにコントロールしていたら、誰も幸せにはなれない。
「子供のためと思って」はが「親自身のため」になっていないだろうか?
親自身の心配や不安を取り除くことが、隠れた目的になっていないだろうか?
「いい大学に行った方がいい」「大企業に勤めた方が安泰」などと、昭和の価値観を押し付けていないだろうか?
もし、子供がそれらを受け入れたら、他人(親)の人生を生きることになる。
子ども達には、本当の自分で生きていって切ってほしいと切に願う。
我が家の娘と息子は、もはや、母より先に自立したようだ。
親子でありながら、親しい友人のような関係性でもある。
さて、65歳になる私は、子ども達の人としての成長を見守りつつ、
今度は、自分のために3冊目の執筆にチャレンジするとしよう!
***
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