メディアグランプリ

ポテトサラダを甘くしたら、人生が一変した理由。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:佐藤千畝(ライティングゼミ・ゼミ4月コース)
 
 
「おなかが減ったよー!」
 
大きな声とともに、私の子どもが姿を見せる、私はいつものようにキッチンに立っていた。
私の手元を真剣に覗き込むと、まだ出来上がっていない料理に気づき、大きな瞳は目線を上げ私をじっと見つめてきた。
 
「何を作っているの?」
 
そう言うなり彼の口元はきゅっととがる、少しおどけた顔に私は見えた。
くるくると変幻自在な彼の表情に、私は微笑みながら返事を返す。
 
「ポテトサラダを作っているよ」
そう私が伝えると、彼の顔はふわりと柔らかくほころんだ。
 
「ポテトサラダ? わぁー大好き!」
生まれたての頃と変わらぬ、かわいい我が子の笑顔。見ると、私は元気が湧いてくる。
だが、彼はまた口元をとがらせていた、よほど腹ペコだったらしい。
私は芋の皮をむき、小さくカットし彼に差し出した。
 
「はい、味見ね」
彼はすぐさま口に入れ、パァーっと眩しい笑顔を私に見せてくれた。
 
「おいしー!」
感想は実にシンプルだった。食べた彼は満開の笑顔、キラキラと咲き誇り実に清々しい。
私は、彼の大好物【焼き芋】を店舗で購入した……だけだった。
 
私は食べることに興味がある、子どもも同様小さな頃から食べることが大好きだ。
今日も軽快なステップ刻みながら、『美味しいもの、何かないの?』と私が支度を始めたと同時に、彼は敏感に反応し楽しそうに私の元へと来てくれた。私の作る料理をとても楽しみにしてくれているようで、私はこの何でもない日常に幸せを感じている。
 
この日、私はポテトサラダを作ろうとキッチンで準備をしていた。
『ポテトサラダ』これを聞いて、あなたは何を想像するだろうか? 
 
ジャガイモをつぶし、ハムやきゅうりと一緒にマヨネーズと混ぜ合わせて作ったポテトサラダ、おそらく想像するならこれだろう。だが、今回は材料に【焼き芋】を使って作るポテトサラダを紹介したいと思う。
今はスーパーでも手軽に手に入る焼き芋、あとは干しぶどうも準備して欲しい。これを使って作る我が家の定番のポテトサラダ。どちらの食材もそのまま食べても甘くておいしい、おすすめなのでぜひ一緒に楽しんでいただきたい。
 
 
作り方はいたって簡単、購入した焼き芋の皮をきれいにはがし、ざっくりとフォークで芋をつぶす。包丁で丁寧にカットしても良いが、フォークでつぶすと洗い物が減っておすすめだ。つぶした焼き芋にレーズンをお好みの量だけ入れ、ざっくりと混ぜ合わせる。以上、これで出来上がりだ。
 
レシピと呼べるほどのものでもないが、我が家では定番の料理の一つ、甘味があるのでデザート感覚で食べて欲しい、癖になる味だと私は思う。
焼き芋の品種にもよるが、ほっくり系の焼き芋であればお好みで牛乳を足して混ぜるとしっとり口当たりがよくなりおすすめだ。
 
シンプルなレシピだからこそ、疲れた日でも「ちょっと作ってみるか」と、やる気のスイッチも入るように私は感じる。その日の気分や時間の余裕に合わせ、食材の数を足す、減らす……といくらでもアレンジが効くのもうれしい。
入店し焼き芋のいい香りに吸い寄せられているのは……私だけだろうか? 
中には数種類の焼き芋を販売している店舗もあり、自分好みの品種を選択できる。焼き芋ファンにはうれしい限りだ。余談だが、コンビニで焼き芋を見かけた時、私は思わずガッツポーズをしたものだ。
 
 
ここからは、先ほどご紹介したレシピにアレンジをしてみよう。
 
ひとつめは、スイートポテト。
牛乳と砂糖を足し、アルミホイルや耐熱容器に入れ、卵黄を上に塗りトースターでこんがりと焼く。
 
もうひとつは、薄くスライスし塩もみしたきゅうり、マヨネーズを一緒に混ぜ合わせる。
仕上げに、私はピリッと挽きたての黒コショウを効かせ食べるのが好きだ。さらにクリームチーズを混ぜると、コクと旨味が出ておすすめワインともよく合う。パンに合わせてもおいしい。
 
……こんな風に、初めは簡単に作っておけば、あとからいくらでもアレンジし楽しめる。
 
 
 
ほぼワンオペで家事をしてきた私は、苦しくて涙した日もたくさんあった。
十数年前、私は子育ても料理を作ることもどちらも初めての経験だった。実家暮らしが長かった、食べる専門の私は料理を作ることなど無縁、自由な生活を送ってきた。
 
結婚し、子どもが生まれそれまでの暮らしは一変した。
ほぼノーマークだった料理に目を向け、私は材料を茹でたり蒸したりと、手の込んだ料理を選びやってきた。不器用だったため、料理のレシピ本以上の時間をかけていたように思う。それでも健気に手作りしては、それが我が子に対する当たり前の愛情だろうと信じ込んでいた。
 
そんな私の料理への熱い思いは、すぐに空振りで終わりを迎えた。
 
月日が経つにつれ、私はイライラとストレスを抱え込んだ。子どもはよく泣いていた。
私は、毎日真剣に料理に向き合い続けていたが、ちっとも子どもには目を向けてはいなかった。これは、今では笑い話だ。
 
おなかが減れば、食べたい時に食べたいのだ。
それが生きていく上での本能であり、一番の幸せなのだ……。
 
『たくさんの時間、待たせてごめんね』今、目の前で笑う我が子の姿に私は救われた。
人生、苦労せずに幸せになってもよいのだ、十数年たった今ようやく思えるようになった。
 
日常で簡単手早く出来る料理を作っては、おいしいと喜ばれ私は自由度が増した。不器用だった私は、幸せを手に入れるやり方がわからなかっただけ、決してダメな人間ではなかった。
見つめた先にある子どもの純粋な目の輝き、嘘はひとつも感じない。簡単なレシピで、人はこんなにも笑顔になる。私は料理を作ることに最高の喜びを感じることができた。
 
サツマイモでポテトサラダを作ると、何が面白いかって? 
人生も芋と同様、無数に選択できる。組み合わせれば自分に合った方法は必ずある、幸せは誰にでも必ず手にすることができる……と私は思うのだ。
 
固定観念にハマらずに、【ジャガイモ】【サツマイモ】なんなら【サトイモ】と。何種類もある芋の中から自由に自分の好きなものを選択する。どれも決して間違いではないということだ。
 
 
少し料理が好きになり、甘く幸せな毎日を過ごす私。
 
過去の自分に、もし会えるのであれば、
『もっと、自由な発想で柔軟に。人生、焼き芋のように甘くても大丈夫』
きっと、そう伝えるだろう。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325



2024-05-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事