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入院歴5回の身体の弱い私が、台湾の占い師に89歳まで働くと言われた話

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記事:馬場さゆり(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
「あなたは、小さい頃、身体が弱くて病院ばっかり受診していたんだよ」
これは、私の母の口癖だ。
 
私は、これまでに入院を5回したことがある。
もちろん、すべてが重病ではなく、虫垂炎(盲腸)の手術も含まれているが。
ただ、20歳になるまでに4回の入院経験があるので、普通の人よりは多いと思う。
その中で一番重症だったのは、3歳の時の麻疹(はしか)の入院だった。
熱が下がらず入院し、医師から両親に、「覚悟してください」と説明があった。
たぶん、命の危機だったのだろう。
麻疹は、昔から「命定め」と言われ、生きるか死ぬかわからない病気だ。
今でも根本的な治療法はないほどなので、その当時は大変だったと想像できる。
なんとか「命定め」を乗り越えてからも、私の身体の弱さは続いていた。
 
そして、成人し看護師として働きだしてからは、今まで以上に体調不良が続いた。
そもそも私は、看護師になるまで徹夜をしたことがなかった。
そんな私に3交代勤務は、過酷だった。
特に、夜中の24時30分から、朝の9時15分までの勤務はきつかった。
普段なら、完全に寝ているはずの時間に起きているだけでもつらいのに、時間毎の巡回、処置、点滴、入院、看護記録などの業務がある。
その上、起きていると、当然お腹も空くので食べてしまう。
普段なら、お腹が空っぽの時間に食べてしまうので、お腹を壊してしまう。
勤務終了後も疲れているのに、外が明るいとなかなか眠れず、寝不足になっていた。
もう何もかもが悪循環で、年中、風邪をひいていた。
後輩からも「また腹痛ですか? それとも風邪ですか?」と、呆れられる始末だった。
 
そして、いつも考えていた。
こんな生活を続けていたら、長生きは難しいだろう。
夜に仕事をすることは嫌いではないが、身体への負担が大き過ぎる。
きっと、私は長く看護師として働くことは難しいだろうと思っていた。
 
そんな時、友人と行った台湾で、評判の占い師に占ってもらうことにした。
占い師は、30代くらいの女性で、生年月日と名前を聞かれ、占いが始まった。
占ってほしいことを聞かれ、仕事について聞くことした。
なぜなら、体調が悪く、仕事を長く続けられそうにないから。
 
すると占い師は、パソコンとノートをちらっと見た後、静かに話し出した。
「あなたは、89歳まで働きます。今の仕事で大丈夫です」
えっ! 89歳!
女性の平均寿命を超えてますけど?
89歳まで生きるんじゃなくて、働くの?
「あの、身体も弱いので、仕事は早めに辞めたいと思っているのですが」
 
私の言葉を聞くとすぐに占い師は答えた。
「いいえ、あなたはずっと働きます。89歳まで。ここに結果がでています」
 
何度か粘ってみたが無駄だった。
断固として占い師は譲らない。
まぁ、ここで年齢が短くなったとしても、何かが変わるわけではない。
ただ、89歳って、具体的すぎない?
せめて80歳とか、85歳とか、切りのいい数字だとわかるけれど、89歳って。
 
日本に帰国してからも、占い師の言葉が頭から離れなかった。
でも、考えてみると、89歳まで働くって、そんなに悪いことなのだろうか?
89歳まで働くということは、89歳まで元気だということだ。
これは、良いことだと前向きに考えるようになった。
 
私のまわりを見ると、高齢でも元気に働いている人は多い。
一緒の病棟で、週に3回働いている70歳代の女性看護師は、いつも笑顔で話している。
「家で夫と二人でいても何もすることがない。だから連休が続くと嫌なのよ。身体がなまっちゃうから。私は家にいるよりも、仕事に来ている方が楽しいし、パワーをもらえるの」
こんなふうに思えるなんて、素敵だ。
きっと、家でのんびりしているよりも、働いている方が生き生きとして若々しくしていられるんだと思う。
それに、笑顔もなんだかキラキラして眩しく見えた。
 
私もこんなふうになれる時がくるのだろうか?
身体の弱い私が、もし89歳まで働けるとしたら、それは喜ばしいことだ。
今まで、病気がちで家族に心配ばかりかけてきた私が、看護の仕事を続けられるなんて、みんなに恩返しをできるチャンスかもしれない。
 
でも、その前に身体を壊してしまっては意味がない。
そのために、これからは自分のペースで無理なく働いていこうと思った。
 
台湾の占い師の言葉のように、本当に89歳まで働けるのかはわからないが、できる限り仕事を続けていくつもりだ。
そして、70歳代の看護師のように生き生きとして若々しく、キラキラした笑顔になることを目指している。
 
 
 
 
***
 
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2024-05-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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