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人生を海外旅行に例えてみる


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記事:安田伸也(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
コーチングの勉強をしている時、こんな考え方に出会った。
 
「人生は海外旅行のようなモノ」
 
つまり、突然誰かに命令され、自分がいる国から旅行へ来ているのだという考え方だ。
 
例えばこんな風だ。
 
海外旅行へ行くと、言葉が通じないことが多い。
 
現実では、言葉は通じるが解り合えない人もいる。
 
言葉が通じないのと同じ事だ。
 
「話せば解る」という人もいるが、わたしは完全に解り合えるとは思っていない。
 
何故なら、生い立ちが違う。
 
経験も違うし、家庭環境も違う。
 
同じ環境で育った兄妹がいても、性格も違えば同じ考え方をすることも無いだろう。
 
学校も違うだろうし、影響を受ける人も違う。
 
そもそも、同じ人間ではない以上解り合えるとは思えない。
 
しかし「話せば解る」が前提だと理解し合えないことに苛立ちを覚えてしまう。
 
「どうして解らないんだ」と腹が立ってくる。
悲しくなる。
 
解って欲しいと泣きたくなる。
 
だが、解ろうと努力することは人間関係において重要だ。
 
海外旅行でのショッピングなどと同じように、手振り身振りを交えながらお互い何とか意思疎通を図ればいい、程度に考えていれば気が楽になるのではないだろうか。
 
そして、海外なのだから知らない風習、見たことが無い習慣、自分の常識では考えられない価値観を持った人もいるだろう。
 
価値観とは、物事の価値についての考え方のことだ。
 
その価値観は、場所、時代や世代によって違う。
 
例えば、日本では公共交通機関の中で、携帯電話で話すことは迷惑になるという考え方がある。
 
しかし、実際には珍しい価値観のようだ。
 
多くの国では、平気で携帯電話で話しているという。
 
また約80年前、第2次世界大戦中の日本では、お国のために命を投げ出すのが良しとされていた。
 
今の日本人にそういう価値観を持った人も珍しいだろう。
 
海外旅行なのだから、受け入れられない価値観を持った人がいたとしても当たり前なのだ。
 
「許せない」なんて怒る必要は無い。
 
諦めが付く。
 
また、財布を取られたり、パスポートを無くすようなトラブルに遭うかもしれない。
 
そんな時は、大使館へ駆け込めば何とかなる。
 
そんな事で海外旅行が続けられなくなることは無いだろう。
 
あなたは、せっかく海外旅行へ行ったのに、そんなトラブルに遭うのが嫌で、旅行中にホテルの中に引き籠もっているだろうか?
 
そんな事はしないはずである。
 
海外旅行なのだから、観光地を巡り、美味しいモノを食べ、そこでしか得られない体験をしてみるはずだ。
 
思いっきり楽しむのではないだろうか。
 
しかし、多くの人が引き籠もっているように思う。
 
失敗が怖くて前へ進めない人が多いように感じるのだ。
 
「自分には無理だ」
「どうせ失敗する」
「うまく行くとは思えない」
 
そんな理由を付けて夢を諦める人が。
 
アドラー心理学の創始者アルフレッド・アドラーはこんな言葉を残している。
 
 
”「仕事で失敗しませんでした。働かなかったからです」
「人間関係で失敗しませんでした。人の輪に入らなかったからです」
彼の人生は完全で、そして最悪だった”
 
それでは、海外旅行へ来ている意味がないとわたしは思うのだが。
 
今までやったことが無い行動をするのはリスクが伴う。
 
うまく行くとも限らない。
 
というか、うまく行く方が珍しいだろう。
 
でも、旅の恥はかき捨てと言うように、大したことではない。
 
しかし、この人生の海外旅行が実際の海外旅行と違うのは、旅行の日程が明らかになっていないことである。
 
つまり、いつ帰還命令が下るか誰にも解らないのだ。
 
ある人は、目的地へ到着したかと思えば、すぐに帰還命令が下ることもあるだろう。
 
また、ある人は100年近くかかるかもしれない。
 
そして、その日はあらかじめ連絡が来ないことが多い。
 
この帰還命令を突然受け取る人も多いだろう。
 
わたしは、海上保安庁という役所に35年間いて、数え切れないくらい海難事故現場に遭遇した。
 
助かる人より、助からない人の方が圧倒的に多い。
 
水死体は、日常にあった。
 
海上保安官だけではなく、警察や消防の仕事をしていれば「死体」に出くわすことは多い。
 
そして、死体が腐るのは早い。
 
死んで約1時間後には、死後硬直(関節などが固まり動かなくなること)が始まり、夏場なら2〜3日で腐敗が始まる。
 
「肉体は魂の入れ物」というが、本当にそう思う。
 
この世に産まれるということは、そんな肉体という入れ物に入り、旅行を楽しむために地上に降り立つこと。
 
そして、帰還命令が下る日は誰にも解らない。
 
当たり前といえば当たり前だが、多くの人がこの「当たり前」のことを忘れているように思うのは、わたしだけだろうか。
 
人は死を迎える時、走馬燈のように人生が蘇るという。
 
貴方の走馬燈には、どんな絵が映し出されるのだろうか。
 
 
 
 
***
 
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2024-05-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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