メディアグランプリ

歴史を反映する福岡人の気質


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記事:オオフチ マナミ (ライティング・ゼミ6月コース)

「もうよか。」

私の父は博多っこだ。

父だけでなく、この言葉、ちょっと前の福岡の人はよく使う。

「もう、そのことはもう気にしなくていい」という意味なのだけれど、実際は、全然よくなくて、本当は気にして欲しいのだ。でも、面倒だから、投げやりに言ってしまう。福岡の人は、一般的に短気だ。さらに飽きっぽいと言われている。

博多と福岡が混在してしまうので、少しそのことについて話したい。

九州最大の政令都市福岡市の主要駅は博多駅。博多っ子、博多ラーメン、博多人形、博多織、博多明太子など、博多の名前は福岡と同じくらい浸透していると思う。

博多と福岡は元々別の町だった。福岡市の中央に那珂川という川が流れている。

那珂川の東側が博多。西側が福岡。そしてその間にあるのが歓楽街で有名な中州である。

博多は古代からの貿易都市として、発展した。2000年、もっと前からの古い歴史を持つ。大陸に近くて、長い間日本の玄関口だった。

一方福岡は、豊臣秀吉の軍師として知られる黒田官兵衛の息子、黒田長政が、岡山県にある黒田家発祥の地からその名を取った。関ヶ原の戦いの功績で、この地を治めるためにやってきて、この地を福岡と名付けた。福岡城を建て、福岡は江戸時代、武士の町として発展した。

商人町の博多、城下町の福岡である。

明治になって、福岡市と博多市のどちらにするか揉めた末、福岡が勝利し、市の名前は福岡市、駅は博多地区にあるので、博多駅になったのである。

福岡は私が生まれて育った街だ。

今は、結構転勤族にも人気があって、住みたい街、住みやすい街でもいつも上位だ。

日本の人口が減少しているのにもかかわらず、この街の人口は増え続けている。

日本の政令指定都市の中で人口増加数、増加率とともにトップである。福岡の人は福岡が好きで、とても誇りを持っている。うるさいくらい。

しかしながら、歴史や文化のこととなると、かなりトーンダウンする。福岡の人は口をそろえて言う。「福岡って、何もないよね。太宰府天満宮ぐらいだよ」

結婚するまで、ずっと福岡から出たことがなかった。結婚後、夫の転勤で、東京、横浜、青森、広島と引越し、福岡に戻った。色々な所に住んだ経験を活かして、今は英語で外国人にガイドをしている。

確かに、福岡には古いものはほとんどない。歴史は長いのに。

さらに福岡の人は古いものにさほど興味を示さない。

私は、ガイドになって、自分なりに福岡のことを調べたり、勉強したりした。

福岡は知れば知るほど面白い街だ。

福岡は日本の南西、九州の北西に位置して、すぐそこに朝鮮半島がある。釜山までは「ビートル」という定期船が出ていて、わずか3時間だ。

東京までは、飛行機で1時間半はかかるが、ソウルまではわずか1時間、上海だって1時間半だ。

この地理的条件こそが福岡を福岡ならしめたのだなと感じている。

飛行機がなかったその昔、多くのものが大陸からこの街を経て、全国に広がった。その代表的なものが何と言っても稲作である。稲作を学んだ人々は国を作った。

福岡の街はどこを掘っても遺跡が出る。稲作が始まった弥生時代からだけでなく、縄文時代からだ。私が大学を出て勤めていた会社が自社ビルを福岡の街に建てようとしたときも、遺跡が出て、工事が大幅に遅れた。

福岡には寺が多い。その数は京都の次だそうである。あの最澄も空海も、遣唐使と共にこの地から大陸に渡り、仏教を学んでこの地に帰ってきた。彼らの最初の寺もある。鎌倉時代、栄西もこの地から宋に渡り、この地に日本初の禅寺を建てた。聖福寺である。

この街は貿易で栄えたが、いつも外敵にさらされていた。7世紀白村江の戦いで敗れたため、大陸からの攻撃を恐れた政庁は博多から、要塞に守られた大宰府に移された。

元寇のときは、街は蒙古軍に焼かれた。子供の頃、父が蒙古軍の恐ろしさを体験したように話してくれたのを私は覚えている。

外敵とともに、貿易の富を求めて、権力争いにも巻き込まれた。

戦国時代は、島津軍が撤退するときに街を焼き尽くした。

福岡の人は、歴史にあまり興味がなさそうだ。古い建物もない。それは、いつも破壊され、その度に立ち上がって、復興してきたその歴史にあるのではないだろうか。福岡市博物館に行くと、地層の断面が見られる。それを見ると、この街の人々は後ろを振り向いてはいられなかったのではと想像する。

そして、縄文や弥生の昔からの遺跡が至るところにあり、現代までの歴史が長すぎて、ストーリーとして絞るのが難しい。歴史をどう捉えたらいいのかわからないのではとも思う。

古代から、この地には新しいものがいつも入ってきた。だからきっと新しいものが好きで、短気で飽きっぽい。

博多ラーメンは細い。一説には、博多っ子がせっかちだから、麺がゆでるのを待っていられないからと言う。

もうよくないけれど、「もうよか」という言葉にもそんな歴史が詰まっているのかなと考えるのである。

 
 
 
 
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2024-07-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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