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優秀なリーダーはケチな母ちゃんであるべし


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記事:ともち(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
「あら〜今夜の食事は豪華だねぇ。お魚が出るなんて」
「ええ、配給がいつもより贅沢でしたから」
「あぁ、うまい! お母さん、おいしいねぇ」
 
 
ここ最近の楽しみの1つは朝ドラだ。
ドラマは半年ごとに内容が入れ替わるが、よく目にするのが戦時中を生き抜いた主人公の姿である。
 
戦争ドラマではないため戦時中のシーンはサラリと過ぎ去るが、お米でさえも満足に食えない時代が確かにあった。人々が痩せて生気が失われていく様を見て「大変だったんだろうな」と思いながらも、僕の目の前にはたっぷりと朝食が並んでいたりする。
 
あるデータによると、世界では11人に1人が飢餓に苦しんでおり、地域によっては20〜30%の人が食糧難であるらしい。一方で、先進国では食べ残しや賞味期限切れで大量の食べ物が捨てられている事実もある。
 
思えば、僕は生まれてこのかた、切実な「食えない」を経験していない。
当たり前になってしまっているが、実は大変ありがたいことだ。
 
生きることは食べることである。
 
一体、僕は今まで何回食事したのだろう?
毎日3食(プラスα)を42年間続けてきたとすると、ザッと5万回は食事したことになる。
 
その中で、「あぁ、うまい!」と体が痺れるほどの感動を味わったことはどのくらいあるだろう?
 
そりゃ毎日ご飯を食べるときに、おいしいとは感じる。
仕事後に晩酌しながら家族と食べる晩飯は至福の時といってもいい。
 
しかし、細胞が震えるレベルの「あぁ、うまい!」を毎日は味わっていないことに気づく。
 
 
細胞が喜ぶ「あぁ、うまい!」とはどういう食事なのだろう?
 
20代の頃、ちょっと背伸びして東京で食べた高級寿司や高級焼肉のことか?
確かに味は美味しかったけれど、それではない。
 
では何だろう?
記憶を辿ると、いくつか印象的な食事が思い浮かんだ。
 
・空手の寒稽古の後に先生が出してくれた熱々のけんちん汁
・小学校の自然学習のキャンプで食べた不恰好なカレーライス(段取りが悪くて最後の班になったっけ)
・夏の野球の練習後のキンキンに冷えたかき氷(こめかみを叩きながら食べたよね)
・初めての一人暮らしから帰省して食べた実家のご飯(何食べたかは忘れたけど)
・月末に奇跡が起こって営業目標を達成できた後の乾杯ビール(汗と涙の混じった味)
 
 
あれ? 高級なものは何1つ入っていない(失礼)。
 
かき氷なんて、謎に化粧の濃いお店のおばさんが氷を手でぎゅっと押し込むものだから、化粧の香りがほんのり乗っていた(よく商品として出していたものだ)。
 
僕の場合、ここからわかるのは「何を食べたか」ではなく「誰とどういう状況で食べたか」が重要そうだ。
 
共通点として、食べる前になかなか困難な状況があり、「その困難を共有できる仲間と一緒に食べる」と最高に美味しく感じ&るようだ。
 
 
「空腹こそ最高のスパイスである」とはよくいったもので、「ほしいが簡単には手に入らない」ことでますます手に入れたくなる。
 
そして手に入れるために人は知恵を使い、そこに工夫が生まれる。
普段は眠っている能力を引き出すことに成功する。
 
 
「空腹を満たすために、自分の潜在能力を使って獲物を手に入れ、仲間と共に味わう」
 
ここに「あぁ、うまい!」の秘密が含まれている。
 
したがって、「あぁ、うまい!」を味わうにはまずは「空腹感」が必要となる。
 
 
 
一方で、現代は物理的にも精神的にも空腹を感じにくい社会構造になっている。
 
・コンビニやスーパーに行けば、食べ物は安く手に入る(狩猟採集時代には糖分を手に入れるのは至難だったはずだ)。
・知識は本やネットにいくらでも転がっている(スマホがない頃のようにエッチな番組目当てに深夜まで起きておく必要もない)。
・デート相手はアプリを開けばホイホイ見つかる(相手の親父が出るかもしれない家に電話するという緊張感はいらない)。
・少子化に伴い、おもちゃは1人1個ずつ買い与えられるようになった(下の子がボロボロのおさがりを持つケースは珍しくなった)。
・ワークライフバランスが重視され、帰宅して早く寝れるようになった(35年前にはCMで「24時間戦えますか?」と本気で歌われていた)。
 
人は、簡単に手に入るものにありがたさを感じない。
 
満腹では何を食べてもおいしさが感じられないように、知識もおもちゃも性も「あぁ、うまい!」を感じにくい時代になったのかもしれない。
 
 
それでいて、昨今の親や職場のリーダーは、子やメンバーに過保護に与えすぎるきらいもある。
 
「自立できる子に育ってほしい」と言いながらも、宿題や持ち物や遊ぶ友達まで全てチェックしてしまう親。
 
「主体性が大事だ」と謳いながらも、懇切丁寧に1から10まで全て教えてしまうリーダー。
 
 
だが、それでは「空腹」になる暇がないので人は育たない。
「あぁ、うまい!」のような本当の満足感も得られない。
 
ものや情報に溢れた現代だからこそ、「空腹」は意図的に織り込む必要があるのだ。
優秀なリーダーは、メンバーの「空腹」をつくり、メンバー自身の潜在能力を引き出すのがうまい。
そして、最後は獲物を仲間と味わう喜びを経験させている。それを重ねると、人は勝手に育つ。
 
そういう意味では、昔の肝っ玉母ちゃんの「おもちゃ? そんなの買うお金ないよ! 自分で工夫しな」というケチなセリフは、「空腹」をつくる上で最高のアプローチだったのかもしれない。
 
 
 
 
***
 
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2024-06-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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