メディアグランプリ

めちゃくちゃ批判されたけど、それでも教育界のM-1グランプリを創った話


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:たかてぃー(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
お笑い鑑賞、帝国ホテルでディナー、リムジンの送迎。
 
こんなツアーがあるとしたら、どんな人が参加していると想像するだろうか? 
これはある小学校で実際に行われた卒業遠足の内容だ。
 
「わくわく」を創りたい! そう思って教員になったはずなのに、いつからだろう。目の前の仕事に追われ、毎日がただの作業になってしまったのは……。
 
そんなことを考えている時、手に取った沼田先生という方の本から衝撃を受けた。そこに書かれていたのが世界一の卒業遠足だった。同じ小学校で働いているのに……
 
冷静になって自分に問いかける。
 
「こんなクラスがあると知って悔しい。なのに、なぜ同時に胸が躍っているのだろう?」
 
もう一人のボクが「わくわくしている人の発信にふれると、自分もわくわくするのでは?」と言う。
 
だとしたら、わくわくしている先生が集まって自分の実践を発信すれば、みんながわくわくするはずだ。そして、参観者がわくわくした人に投票して、大好きなM-1グランプリみたいに順位をつけたら絶対おもしろい!
 
こうして思いついたのが「教育E-1グランプリ」だった。
 
僕も人をわくわくさせる人になりたい。そう思うのに
 
「人をわくわくさせたい? 教育でM-1? みんなに馬鹿にされるだけだ」
 
と、もう一人のボクが止めにかかる。
 
「たしかに。しかも人が集まらなかったらダサいよな?」
 
そうやって逃げたくなる自分に鞭を打ち、弱いボクに語りかける。
 
「じゃあ、なぜあの本を手にとった? 今の自分を変えたいからじゃないのか? 人の目ばっかり気にして、誰でもできることだけやって……何かに本気で取り組んだことのないやつの方がダサくないのか?」
 
こうして僕はボクを説得した。「あの本がわくわくさせてくれたように、自分なりの方法で人をわくわくさせる!」これは教員になって初めて本気でやりたいと思えることだった。
 
この企画を思いついて前の学校の仲間3人に話をした。すぐに「おもしろそう」と協力してくれることになった。しかし、仲間内だけで盛り上がったところで、人をわくわくさせたとは思えない。多くの方に参加してもらいたい。そこで全国の先生に参加してもらえるよう、オンライン形式で実施することにした。
 
ただ、無名な僕らのイベントに参加しようという人はほとんどいない。ない頭をひねり沼田先生にゲスト審査員をお願いした。ダメもとで連絡したが引き受けてくれることになり、夢見心地で打ち合わせをしたのである。沼田先生からアドバイスをもらいながら、もっといい企画にするために議論を重ねた。配信担当を外部委託、プラットフォームを有料のものに変更、かっこいいオープニング動画の作成……なんてしていると予算がどんどん膨らんでいった。
 
僕の周りの教員の研修と言えば無料のものがほとんどだ。そんな中「教育E-1グランプリ」は参加者全員から15万円集めることを目標に設定した。仲間になってくれた実行委員の3人は口をそろえて「無理だ」と言ったが、
 
「そんな中途半端なイベントにするならやる意味はない! 教育界を変えるイベントにする!」
 
という僕の熱意に押され、しぶしぶ了承してくれた。もしも目標を達成しなかったら実行委員4人でお金を払うということも一緒に。そんな彼らには今も頭があがらない思いだ。
 
それから知り合いやSNSを通じて発表者の先生を探した。思っていたよりも企画に賛同してくれる方が多く、わりとすぐに定員の9人が決まる。これなら15万円もすぐに集まりそうだと一安心。
 
次にどうやって参観者を集客するかを考えた。そこで、教育界ではあまり例がないクラウドファンディングを実施することで話題性を高めることを狙った。
 
「よかったら、ぜひ……」
 
気楽に話せる人は全員連絡した、という時点で集まった支援は、なんとたったの2万2千円。大失敗が目の前まで迫っている。なんとかしなければ! お世話になった先輩にも片っ端から連絡をしていく。優しい言葉をかけてもらえるだろうと思っていたが結果は逆だった。
 
「本質的じゃない」
「教育って順位つけるものではない」
「こんなことしてなんかあったらどうすんの?」
「クラウドファンディング? 変なことしない方がいいよ」
 
お金が全然集まらないだけでなく、信頼する先輩からの痛烈な批判……。僕なんかが人をわくわくさせることはできないのか。今でこそ、こう言ってくれたことに感謝しかない。ただ、あの時は世の中のみんなが敵に見えるほど絶望しかけていた。
 
それでもめげずに連絡を続けると、ある先輩が1万円支援してくれることになった。
「わくわくに投資したい!」
1万円も出してくれる優しさと温かい言葉が、消えかけていた心の炎に薪をくべてくれる。
 
また、他の先輩に連絡すると
 
「イイね!」
 
と言ってくれた。
そして、この後の言葉がこの企画を大きく動かすことになる。
 
「でも、その誘い方はやめな」
 
誘い方? という顔をしていると
 
「本当にこの企画がおもしろいと思っている?」
 
と聞かれ「はい」と答えた。しかし、よく考えると「つまらないかもしれないんですが……」という保険を張っている自分がいたことに気づく。「本気」の“つもり”でしかなかったのだ。
 
そうでなければ「よかったら……」ではなく「絶対おもしろいんで、参加してください!」と声をかけていたはずだ。その結果、参加してもらえないのは仕方ない。しかし、その前に自分が自信をもって誘えないものに、時間を取ってもらおうなんておこがましい。
 
人の目なんて気にしている時間はない。自分を信じて絶対の自信をもって声をかけ、賛同してくれたらその期待を越えられるよう企画を準備するだけ。そう思った時まるで「本気」という言葉を食べて、自分の血となり肉となるような感覚になった。
 
それからSNSで知らない人にも400件以上DMを送った。読んでもらう確率を上げるため、プロフィールを見て少しずつ文面を変えながらである。ほとんど相手にすらされなかったが、先輩たちと同じような批判的意見をいただくことも多かった。ただ本気を知った僕には、そんなことどうでもよくなっていた。もちろん、反対の方に敵対する気はない。ただ応援してくれる人を探す方が大事。仕事の後、家事・育児の合間にたえず誰かにメッセージを送り続けた。
 
気づくと実行委員だけでなく、発表者、参観者、沼田先生……みんながあちこちで参加を呼び掛けてくれるようになっていた。ちょっとずつ広がっていく支援の輪。増えていく仲間。重なっていく喜び。
 
こうしてむかえた、クラウドファンディング最終日。
目標金額15万円に対し集まった支援額、18万7千円。支援者数、82人、企業スポンサー1社。
 
めちゃくちゃ批判されたけど、それでも教育界のM-1グランプリを創った。イベント後、ありがたいことにたくさんの方から「わくわくした」というメッセージをいただいた。無名な僕たちができうる限りの人を、確かにわくわくさせることができたのである。
 
メッセージに目を通していく中で、人をわくわくさせたいと始めた企画なのに、最もわくわくしていたのはボクだったと気づいた。
 
ただの作業となっていた日々の中、こうして本気でやることの素晴らしさを知った。
そんな僕に、ボクは今ちょっと期待している。
 
「さあ、次はどんな“わくわく”を魅せてくれるんだ?」
 
 
 
 
***
 
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2024-06-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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