メディアグランプリ

イタリア一人旅はまるで、長く付き合っている恋人のように大切なものだ


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記事:吉田珠翠 (ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
私は一人旅をするのが好きで、今回はイタリアナポリに行った。
イタリアに到着すると、いつも挨拶を兼ねてその市を象徴するドゥオーモ(教会)に行くようにしている。
 
今回もドゥオーモに行くこととした。地図を見てどこかは分かっている。まず私はバスで最寄りの所まで行くことにした。
バスに乗車して地図を見ていると、なんと想定と逆の方向に行っている。普段は時計回りで行くのだが今日に限っては反対回りになっていた。遠回りにはなるが、周回バスなので降りたいバス停には着く。仕方なく、そのままバスに乗っていた。
バスに乗って15分程度すると、今度はいきなりバスが止まってしまった。先週からストライキが起こっていてゴミの収集ができておらず、ゴミが道路に散乱していた。
バスの運転手は乗客全員に「このバスは回送になる。ここで降りてくれ」と言われた。仕方なく私はバスを降りて歩いてドゥオーモに行くことにした。
 
時間はかかったが、ドゥオーモに着いた。さぁ入ろうとしたが、ドアが開かない。なんと、ナポリのドゥオーモは開館時間があり、今は閉館時間だった。
今までイタリア各地のドゥオーモはいつでも開いていて自由に入ることができた。しかしナポリは違った。昼間は閉館しており、次の開館時間は17時だった。
開館時間までまだ2時間はある。私は、散策をしながら一度ホテルに戻ることにした。
 
道中、私は考えこんでしまった。いつもはイタリアのドゥオーモに挨拶をしてから街を楽しむようにしているのに、なぜ今回はドゥオーモにスムーズに行けない?こんなにもトラブルが起こるのは、もしかしてナポリは私を受け入れてくれていないのか?それならば、明日にでも去った方がいいのか?こんなネガティブ思考に陥ってしまった。
 
私はホテルの部屋で休憩をし、気持ちを落ち着かせた。せっかくナポリまで来たのだ。やはり、遅くはなったがナポリに挨拶をしよう、と私は思った。
バスは無理なので、徒歩で17時過ぎには着くように計算をし、私はホテルを出た。
道中、ゴミが散乱していた道路は片付けられていた。それらを横目に見ながら、ドゥオーモを目指した。
 
17時10分、ドゥオーモの扉は開いていた。あぁ、入れる。挨拶ができる。そう思いながら、厳かに入館した。
ドゥオーモの中は、質素でも品のあるステンドグラスと石造りの装飾に守られ、様々な聖人が祭られていた。凛とした空気。とても落ち着く場所だ。
 
ここは、ナポリの守護聖人サン・ジェンナーロが祭られているのに有名なドゥオーモだ。聖人は、紀元前3世紀に実在していた人物である。
その証拠として、サン・ジェンナーロの血液が今もあり、密封されたガラスの小瓶に入れられている。いつもはこの血液は固まっているのだが、1年に2回、夏至と冬至の日に大司教がこの小瓶をゆっくりと振ることで固まった血液が液体になるという。液体になった年はナポリにとって安泰ということを表し、固まったままだとナポリに災害が訪れる、と言われている。ナポリの人々は半年に一度、ナポリの未来を見定めるようにドゥオーモに集まるのだ。
 
話を戻し、私はドゥオーモの中で様々な聖人に挨拶をした。そして横の椅子に座り、休憩をしていた。
するといきなり、続々と人々がドゥオーモに入ってきた。人数は50人くらいだろうか。私が休憩している椅子の横に集まりはじめた。その後、奥の方から大司教が現れた。
大司教の手にはガラスの小瓶があった。なんと、写真でしか見たことのないサン・ジェンナーロの血液の入った小瓶だ。
 
私は驚愕した。まさか、サン・ジェンナーロの血液を見られるとは思わなかったからだ。しかも血液は液体になっている!
人々が大司教の前に並んだ。一人ずつ前に出てひざまずき、頭を下げ十字を切っている。サン・ジェンナーロの小瓶を頭につけられている。終わった人は涙を流して喜びを表していた。
私は、それを横目で見て感動していた。なんと素晴らしい一瞬に出会えたのだろうか、と。この日は、夏至の日ではないのに。
全員がサン・ジェンナーロの小瓶にひざまずいた後、小瓶と共に大司教は奥の方に戻っていった。
 
これらの貴重な時間を私は真横で見ることができた。
イタリアの人々の、聖人を敬うことや、信じる気持ちとその行動。全てが素晴らしく貴重な文化であると私は感じた。
 
この一瞬の貴重な時間は僅か15分程だ。
振り返ると、この夢のような時間を、ナポリはあえて私に見せてくれたように思う。バスが逆回りになり、その後ストップして昼の開館時間に間に合わなかったのも、夕方の17時過ぎに私がドゥオーモに行けるようにナポリが計画してくれたのだろう、そのように思えてならないのだ。
 
ドゥオーモに行けないことで、ナポリは私を受け入れてくれていないのでは?などと私は初めに思っていたが、そうではない。反対だったのだ。
イタリア好きな私を、ナポリは「この時間に来なさい」とお膳立てをしてくれたのだ。ナポリは初めから、私を受け入れてくれていたのだ。
 
この不思議な経験は、まるで長く付き合っている恋人のようだ。
付き合いが長いと、相手の好き嫌いが分かっている。こんな時には不機嫌になり、これだと喜ぶ。こういったことが手に取るように分かる。
私の経験も、イタリアという恋人が、私を喜ばせるように準備してくれていたのかもしれない。
とても大切な経験をさせてもらったので、お礼に再びイタリアナポリに行きたいと思った。
 
 
 
 
***
 
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2024-06-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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