メディアグランプリ

映画のコミカライズ、という概念にビビった話。


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記事:Ai(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
「映画のコミカライズ、って冷静に考えてクレイジーだよね」
300ページほどありそうなフルカラーの漫画を前に、古本屋で私は友人と顔を見合わせた。
 
 
先日、とあるアニメ作品の過去の映画を見たくなった。このご時世、どこかの動画配信サービスに課金すれば視聴できるだろうと思ったのだが、古すぎるためかどうやらどこにも取り扱いがないらしい。
 
ネットの海に潜って代案を探す中で、ふと「コミカライズ版」なるものが検索にヒットした。
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さて、一体全体どんなものなのだろうか。映画の代替になるようなものなのだろうか。ちょっとお高いが中古DVDを探してみた方が良いのだろうか。結局即決できずにうだうだと平日を過ごし、やってきた週末。そんなことを頭の片隅に置いていたことすら忘れて繰り出した東京の片隅で、偶然にもそんなことを考えていたことを思い出した。
 
 
古本屋でカバーのかかっていない現物を手にとって驚いた。そして思った。
日本のアニメ映画は漫画だ。
 
見つけた当初は「映画をわざわざ漫画にするなんて、なんて手間な!」 と思ったけれど、いざ手にとってみて驚いた。なんと、映画のフレームをそのまま切り出して使っているのではないかという代物だったのだ。フルカラーのイラストに、吹き出しだけ後からつけたような印象だ。
 
驚くべきことに、コマ割りまでもがしっかりと漫画らしいフォーマットにはまっていた。シーンが進むテンポ感まで掌握されそうな複雑に緻密に組まれた構成になっている。
 
 
この凄さに気づいた時、ふと思ったのだ。日本以外のアニメ映画でも、「映画のコミカライズ」なる商業作品は存在するのか? と。
 
休日の貴重な時間を約30分ほど費やし、日本で見れる範囲で電子書籍をざっとみてみた結論からすると、そんなものはおそらく存在しないようだ。あるといえばあるのだが、漫画としてわざわざ手間をかけて書き起こしたのだろうと思われるものがちらほらある程度。英語の商圏からすれば書き直してもコスト的にはペイするのかもしれないが、なんというか全くの別物といった印象だ。
 
さて、ではなぜ日本のアニメ映画はそのまま漫画に落とし込めるのか。じっくりと「そういう目」でコミカライズ版を見てみると、どうやらアメコミ系の映画とはフレーム割り、カメラワーク的なものが違うらしいことに気がついた。
 
日本のアニメ映画は、原作漫画なんて存在しないオリジナルの作品でも、漫画にありがちなアングルで画角がちょいちょいと入れ替わる。重要な場面で主人公の横顔がアップになり、そこで図としては静止したまま長いセリフが続いたり。敵の姿を主人公の背中越しに抜くアングルになったり、といった具合だ。一コマ一コマの配置や画角の選択、シーンの構成や視点の選択が、物語のリズムや雰囲気を演出してくるのだ。
 
一方で、海外のアニメはどちらかといえば実写に近い印象だ。ハリウッド映画さながらの、アクロバティックなアクションが光るカメラワークでガッツリと動き続けるものが多い。
 
そこまで一気に3分弱で考えてから、全く違うことを考えていそうな友人の顔を振り返り、私は頭の整理も半端なまま冒頭の言葉を投げた。
 
「映画のコミカライズ、って冷静にクレイジーだよね」
「わかる。ていうか、漫画もなんか映画っぽくなってきてるのあるよね」
 
意外なことに、同意の言葉が返ってきた。しかも何やら議論が深まりそうな予感がする。私の感動を察した素振りもなく、友人が続ける。
 
「アニメでよく『ぬるぬる動く』って言うじゃん。あれ、キーフレームってのと、その間を補完する部分があるらしいんだよね。なんか、この補完する部分っていうの? 間の動きが想像できる系の書き方を見かけるようになった気がする」
「まじか。よく見てんね」
「いや、そういえば、って今思っただけだわ」
 
アニメ映画のコミカライズというのはただの手抜きといった商業的な理由ではなく、日本ならではの進化をして育ってきた2次元での演出手法といった非常に高度な文化的背景と、アニメ(動画)と漫画の相互作用の結果として成り立っているのだろう。日本の映画と漫画の関係性は、ただの作品同士の類似ではなく、深い文化的な共鳴の表れなのかもしれない。
 
このようにして、私は日本の映画と漫画が画角やコマ割りといった点でどれほど類似しているかを考察してみるに至った。大変有意義な休日である。
 
もしみなさんが本屋にいくことがあれば、ぜひ「アニメ映画のコミカライズ」の作品を一冊手にとってみてほしい。映画のフレームそのままで驚愕するはずだ。
 
この感動があなたに届くことを祈って。
 
 
 
 
***
 
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2024-07-04 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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