人生全部ネタ~ようせいは「まさか」の坂を乗り越える
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:渡邊真由子(ライティング・ゼミ4月コース)
「くそう、くそう、くそぉぉぉぉーーーー!!!」
私は自分の発信するSNSにこのような言葉を綴っていた。決して美しい言葉ではないという自覚はあるのだけれど、私はそれを時折使用していた。
その後には必ずこう続いた。
「おっと、おくちのようせいだいかつやく」
私は4月から天狼院書店主催の『ライティング・ゼミ』という文章を磨く講座を受講している。
そこでは毎週約2000字程度の文章を提出することが課せられており、添削の結果、合格を頂けると天狼院書店のWEBに掲載されるという仕組みになっている。
したがって、私たち受講生はある意味WEB掲載を目標として、或いは、モチベーションを保つためのものとして捉えていると言っても過言ではない。
そんな私の成績はというと……開講後1~2か月はそれなりの成績だった(つまりWEB掲載して頂ける記事を書けた)のだが、以降、急に失速し不合格が続いていた。
不合格になったからといって人格を否定される訳ではない。
「アナタの文章は第三者が読んでくださる可能性が低いですよ」という結論とその理由が講師から伝えられるだけのこと。
それなのに心の中は嵐が吹き荒れ、本来であるならば文章能力が未熟な自分に向けるべき反省点を誰かのせいにしたくてつい冒頭のような言葉を綴ってしまう。しかもSNSという場所で「ようせい」という不可思議な存在に語らせるという手段を取って。
あくまでも私自身ではなく「ようせい」が語るということにしておけば、普段私が発する文章のイメージ(果たしてそういうものがあるのか? という議論は一旦脇に置く)と多少ズレた表現をしても、「番外編」とか「外伝」のような雰囲気で捉えてもらえるような気がするのだ。
その「ようせい」が何度目かに登場した直後のことだ。
やさぐれつつ眠りについた私は夜中に寒気がして目が覚めた。
6月下旬。半袖で過ごせる陽気になってきたもののクーラーはまだ使っていない。おかしな汗が身体を伝う。
「朝には治っているだろう」
そう思った私は再び眠りにつこうとするのだが、寒気は増す一方。酔っ払ってもいないのに何かがグルグルと回っている。地球が回っているのか、私が回っているのか判断すらつかない。
次第に背中に痛みが走りだし、ようやく「ただごとではない」と感じた私が測った体温は38.4度だった。
翌朝一番で近所のクリニックへ駆け込み発熱の事実を伝えると、隔離部屋での待機と検査を言い渡された。
実は過去数年に亘り私は年に1~2度の割合で発熱していた。38度を超える熱が出る度にこのクリニックを受診し、その都度この隔離部屋に移された。検査の結果はいつも原因不明の発熱。だから私は「今回もそうであるに違いない」と確信していた。
私以外に誰もいない隔離部屋。壁を隔てた向こう側からはクリニック職員たちの楽しげな会話が漏れ聞こえてくる。まるで自分だけが別世界に取り残されたような気がしたが、私は強運の持ち主だし、親から譲り受けた身体もそれなりに頑丈なのだから大丈夫だという自負もあった。
ふと仕事のことを思い出した。月末で忙しい頃だ。私ひとりくらいいなくても組織は影響を受けないはずだけれど、山盛りになっているであろうデスクに積まれた書類を想像してはうんざりした。明日は出勤できるだろうか、などと思いながら。
暫くすると、マスク越しでも穏やかだと一発でわかる表情の医師が隔離部屋に入ってきた。その時点で私は今回も陰性を確信した。
「結果はもう聞いたよね? あれ、まだなの? あのね、コロナ陽性でした。
でも今はインフルエンザと変わらないし、一週間もすれば治る場合が殆どですから大丈夫ですよ」
人生には「まさか」という坂があると聞いたことがある。その坂が私にも現れた瞬間だった。「おくちの『ようせい』だいかつやく」と言い放った自分が、まさかコロナ陽性になるとは思いもしなかった。確信ではなく過信だった。
グラグラ揺れる視界。真っ直ぐ歩けない身体に喝を入れつつ帰宅し、布団に倒れ込む。コロナは私の体内で大活躍の大フィーバーだ。
発熱で痛む身体、咳、喉の痛み、猛烈な喉の渇き、目眩。久々に体感したそれらは、相当のつらさだった。症状には個人差があるものの、過去に罹患した方々はさぞかしおつらかっただろうと思う余裕が微かに残っていた。
ここから空白の5日間を含む絶不調の2週間が始まるわけだが、それはまた別の機会にお話しすることにしよう。
『言霊』という言葉をこのときほど痛感したことはない。想いは現実化するのだということも。
「ようせいだいかつやく」と発した私はその言葉通りコロナ陽性になり、コロナは大活躍した。
罹患して良かったとは言わないが、「まさか」の坂を乗り越えたから言えることもある。
まず、私を含めこの文章をお読みくださるあなたに出来るのは、言葉を選ぶということ。そして、そもそも「おくちのようせい」が活躍するような言葉を使わない自分で在ること。つまり、私の場合ではライティング・ゼミで合格し続けること(笑)。
人生なんて全てネタ帳のようなもの。そう思えば気も楽だ。
さて、久々にのびのびと(当社比)文章を書けたところで、今週も容赦なく課題提出締切の月曜日がやってきた。
猛烈にタイトな来週のスケジュールと文章を作る時間とのやり繰りに想いを馳せながら、忘れないうちにこの文章を投稿してしまおう。我ながら諦めが悪いけれど、合格することを願って。
***
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
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