メディアグランプリ

パンツが見えそうなスカートを履いた女子高生が教えてくれたこと


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記事:かたせひとみ(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
「○〇線が人身事故で止まりませんように K高校野球部 N村〇之」
駅ビルの入り口に飾られた七夕飾りには、客が思い思いに願い事を書いた短冊が何十枚も吊るされていた。その中で、私はこの1枚に目が釘付けになった。
 
この年頃の男子だったら、短冊には「彼女ができますように」とか「小遣いが増えますように」とでも書くだろう。それにこの短冊の主は野球部だ。「地区予選を突破しますように」と書きたいところだろう。
しかし、彼にとって、いま一番の願いは「○〇線の電車が止まらないこと」なのだ。
私は彼の切実な思いが痛いほどわかった。なぜなら、私も彼と同じ思いだったからだ。
 
私が利用する〇〇線は、とにかく人身事故が多く、頻繁に電車が止まる。
事故は朝夕のラッシュ時に発生することが多かった。
朝の通勤時に当たると、憂鬱な気分で一日が始まり、仕事帰りに当たると、仕事の疲れがどっと増した。
 
数か月に1度発生するくらいなら我慢できる。
しかし、多い時には週に1度か2度、酷い時には1日に2度、ということもあった。行きも帰りも遭遇するなんて、何かに呪われているんじゃないかと思ったくらいだ。
 
一旦事故が発生すると1時間から2時間は電車が止まってしまう。
あいにく私の通勤ルートには、迂回するルートがなく、ひたすら電車の運転再開を待つしかなかった。
 
それは、その週に入って2回目の人身事故だった。
朝、駅に着くと、駅構内に人があふれていた。人の流れが止まっている。普段と違う様子から猛烈に嫌な予感がする。こういうときは、間違いなく人身事故だ。
 
私の近くにいた女子高生が「ウッソー、電車止まってるー。マジウケるんだけどー」と、大きな声を出している。
何がウケるんだ? ひとつもウケる要素なんてない。
 
改札近くまで行ってみると、電光掲示板には、人身事故による運転停止が告げられていた。やはりそうか……。
 
次第にあたりにピリピリした空気が流れ出す。
「さっさと電車動かせよ!」と駅員に詰め寄る中年男性。
その後ろでは頭をペコペコ下げながら電話をしているサラリーマンの姿。会社に遅刻の連絡を入れているのだろう。
電車が止まったときに繰り広げられるいつもの光景だ。
 
運転再開の見込みは9時40分だという。
長年の経験から、見込みより早まることはないとわかっている。大抵遅れるものだ。ということは10時過ぎに再開か。
 
「10時までどうしよう……」うんざりした思いで立ち尽くす私のそばで、けたたましい笑い声がする。
さっきの「マジうけるんだけどー」と言っていた女子高生だ。よく見るとスカート丈は膝上20センチくらいだろうか。ちょっとかがんだらパンツが見えそうだ。
そんなマジ短いスカートを履いた彼女が、友人らしき女子高生と楽しそうに談笑していた。友人も同様にスカート丈はマジ短い。
 
二人は別々の高校に通っているのだろう。違う制服を着ていた。
「やだー! マユー! めっちゃ久しぶりー! 中学の卒業以来?」
「そうだねー! やだー、めっちゃJKしてるじゃーん!」
「9時40分まで動かないとか、マジウケるんだけどー!」
「えっ、リナも駅にいるの? めっちゃ懐かしいー。ねぇねぇ、電車動くまでみんなで集まらない?」
「それめっちゃいい! 連絡してみるー!」
 
1回言うたびに「めっちゃ」を入れる、というルールでもあるのだろうか?声が大きいので、会話がすべて耳に入ってくる。
どうやら二人は中学の同級生らしい。電車の運転が再開するまで、他の知り合いも交えてプチ同窓会を開くそうだ。
 
さすが、女子高生。運転停止もなんのその。むしろそのアクシデントを逆手に取って楽しんでいる。私には彼女達の明るさとたくましさが眩しかった。
 
対して我らサラリーマンはというと……。
持て余した時間をどうしようかと肩を落とす人。早く電車を動かせ! と怒りをぶつける人。会社にペコペコと頭を下げて遅刻を詫びる人。必死で他のルートがないかとスマホで検索する人。
 
サラリーマンエリアは、どんよりとしたぶ厚い灰色の雲に覆われているかのように、なんとも重苦しい空気が立ち込めている。一方、女子高生エリアは、太陽が燦燦と降り注ぐ真夏のビーチのように、底抜けに明るい。
いったい、この差は何なんだ?
 
そこで、私は、はたと気づいた。
同じ条件に遭遇したとき、女子高生達は楽しむことを選び、私を含むサラリーマン軍団は楽しまないことを選んでいるということに。
楽しむ権利は女子高生だけの特権ではなく、年齢や性別に関係なく誰にでも平等に与えられている。彼女達はその権利を最大限に使い、私達は端から放棄しているのだ。
 
確かに女子高生とサラリーマンとでは社会的責任の違いはある。しかし、たかが1、2時間、会社に遅れたからといって、なんだというのだろう? 
電車が止まったのは変えようのない事実だ。がっかりしたり怒ったりしたところで、運転再開が早まるものではない。それなら彼女達のように楽しんだ方が気分良く過ごせる。
カフェでのんびりしてもいいし、近くの公園で昼寝してもいい。帰りだったら飲みに行ったっていい。探せば楽しめることはたくさんあるはずだ。
 
どんな状況でもそこに楽しさを見出せるかどうか。
アクシデントや辛い状況にあったとき、悲観して暗い気持ちで過ごすのか、少しでも楽しさを見つけて明るい気持ちで過ごすのか。
その選択が日常の質、そして人生の質を大きく左右していくのだ。
 
パンツの見えそうな短いスカートを履いた女子高生が、人生にとって大切なことを教えてくれた。彼女はきっと今日も「マジウケるー」と言って、どんな状況も楽しんでいることだろう。
 
七夕の短冊に切実な願いを書いていたあの男子高生にも教えてあげたい。
楽しむか楽しまないかは自分で選べるんだよ、と。
 
 
 
 
***
 
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2024-07-18 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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