幸福への道は車中泊の旅と同じ、幸せはその旅の途中にある
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:安田伸也(ライティング・ゼミ4月コース)
「そもそも、俺はどうしてサラリーマンを辞めたんだろう」
6年前のその日、私は自室に閉じこもり自問自答していた。
その日は、朝から名古屋市内へ出かけ、午前中に用事を済ませたあと面接試験へ行った。
大手マッサージチェーン店で、マッサージ師になるための面接試験だった。
どうしてマッサージ師になろうと思ったのか。
喰うため、である。
サラリーマンを辞めて2年間。
これまでも、喰うために自分に出来そうなことを手当たり次第やってきた。
ブログでのアフィリエイト、友人から誘われたビジネス。
どれも上手く行かずに、契約社員として再就職もした。
しかし、給与も安く妻と娘を養っていけない。
サラリーマンを辞めてから学んだ心理学やコーチングを使ったセミナーでの集客も上手く行かずに、生活は困窮していった。
だから、たまたま目に入ったマッサージ師の求人広告に目を奪われて面接を受けに行ったのだが、その面接会場で激しい動悸や目眩を感じて、面接を受けずに帰宅したのだった。
「お先真っ暗」とは、このことだった。
サラリーマン生活では、仕事にやり甲斐を感じていたものの、組織の価値観と自分の価値観との折り合いが付かず、苦しむことが多かった。
しかし、喰うために「ココは自分の居場所じゃない」という心の声を無視し続けて、うつやパニック症、急性胃炎などメンタル系の病気を患った。
そして、2年前自宅のローンを退職金で完済することを決め、定年まで6年を残してサラリーマンを辞めたのだった。
再び、自問自答した。
「これからお前はどうしたいの?」
自分から返ってきた答にビックリした。
「メンタルコーチと研修講師をやりたい」だった。
コーチングは学んでいたので、何とかなりそうではあったが、研修講師はやったことが無い。
どうすればなれるのかも知らないし、コネも無かった。
ただ、サラリーマン時代から講習など人前で話す機会も多く、その仕事は好きだった。
もちろん研修講師は未経験なので怖さも感じたが、何となく出来そうな気はしていた。
だから、自分の可能性にかけようと思った。
じゃあ、そのために今何が出来るだろうと考えた。
すぐにネットで研修講師を募集している会社を検索し、未経験でも採用してくれそうなところ2〜3社へ履歴書を送ってみた。
面接は受けたが、採用はされなかった。
しかし、それからは派遣会社へ複数登録し、アルバイトを掛け持ちしながら生活を維持した。
そして、そんな生活を続けていると不思議な出会いが起こり始めた。
コーチングのセミナーに参加してくれる人が、研修講師をやっていたり、参加したワークショップで研修会社を経営している人と出会ったのだ。
その後その研修会社の紹介で、半年後には新人研修に登壇できた。
相変わらずアルバイトを掛け持ちしてまだまだ生活は苦しかったが、研修講師の仕事は楽しかった。
何より将来に希望が持てた。
その研修会社からの紹介で、とある市町の市民講座へも登壇できた。
大学の授業も受け持たせて貰い、高校生への面接指導もさせてもらっている。
今は、企業向けの講演講師を派遣する会社へも登録し、ボチボチと依頼もくるようになった。
まだまだそれだけで喰えている訳ではないが、夢の入口に立ったと実感している。
ど素人だった私に、講師の場を与えてくれた方々には、感謝しかない。
この経験を通して解ったことがある。
それは、人間は変わらなくても良いということだ。
それまでの私は、何をやっても上手く行かなかず、
「今の自分じゃダメだ、変わらなければいけない」
と自分を否定しつづけていた。
しかし、自分の得意なことを発見し、ただそこを伸ばしていけば良かったのだ。
蛾は蝶になろうとしてもなれないし、反対に蝶は蛾になろうとしてもなれない。
蝶は蝶、蛾は蛾として生きて行けば良い。
とはいえ、得意なことで喰うことが出来るようになるまでには時間がかかる。
「石の上にも三年」というように、学ぶ時間もかかるし、学んだ事を実践して使えるようになる時間が必要だ。
新入社員が入社して、一通り仕事をこなせるようになるまでは数年かかるのと同じく、好きな道で喰うためには、環境を整えて諦めずに何年も続けて行く必要がある。
しかし、その過程で安易に他人と比べると一瞬で不幸になる。
隣の芝は青く見えるし、先行く人も大勢いる。
変化の激しい現代では、周りの風景も目に入らず、誰もが目的地へ向かって焦り、急いで向かっているかもしれない。
だが、人生はレースではない。
目的地に到達する事が幸せなのではなく、その目的地へ向かって成長を続けている途中に幸せがあるのだ。
ただ単に目的地へ早く到達したいのであれば、新幹線や飛行機で行けばいいだろう。
しかし、車中泊の旅をしている人は、その旅そのものを楽しんでいるのではないだろうか。
行く先々の風景を楽しみ、その土地の美味しいモノを食べ、行った先で出逢った人々との交流を楽しむ。
私の人生はあと何年あるか解らないが、これからも人生の旅そのものを楽しみ、目的地へ向かって生きたい。
***
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