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自分を愛することは、あきらめと共に


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記事:Tamuko(ライティング・ゼミ 集中コース)
 
 
「自分を愛する」
この言葉が、世間に浸透し当たり前のように使われるようになって
どれぐらいの月日が経っただろう? 人によっては、ご自愛という
言葉のほうが身近な人もいるかもしれない。
どちらにせよ、いつからか思い出せないくらい私たちの生活に
なくてはならない価値観に育ってきているように思う。
 
私も例にもれず、ご自愛ブームに乗って自分を大切にするための
あれこれに手を出した。「自分を大切にするんだ!」と勢いに任せ、
新卒で入社したそこそこ有名な安定した会社の総合職の座を
あっさりと捨て、一人自由の身となった。24歳ぐらいの頃だったか。
これからの将来に対して何も決まっていないのに楽観的でいられたのは、
若さもあっただろうが、時の運が味方していたように思う。
 
当時はキラキラ女性起業家ブームが巻き起こっており、特に実績も
経験もないような女性がコンサルタントを名乗り開業する風潮があった。
「好きな時に、好きな人と、好きなだけ」
「好きなこと、やりたいことを仕事にしよう」
と耳障りの良い言葉を並べ立てたキャッチコピーの数々につられて、
思い通りにいかない現実から逃れるべく多くの女性が飛びついた。
 
残念なことに、わたしもその一人。
 
右も左もわからない20代前半のひよっこは、あっさりとその甘い囁きに
導かれ起業セミナーに参加することとなる。
 
多くの女性は、理想と現実のギャップに心を折られ途中リタイアしていく人が
後を絶たなかった。気分で仕事をしてしまう、売ることが苦手、継続してやり続けられないなど、さまざまな理由から元の生活に戻っていくのだが、私は違った。
 
ビジネス狂戦士に生まれ変わりを果たしたのである。
 
目標必達、大量行動、効率化、人脈づくり……。ビジョンや夢を語り、人を導き、ファンを獲得し、マネタイズする。継続的にマネタイズしていくために、仕組み化をして……と完全に自己啓発ビジネスの王道に染まっていくこととなった。
 
良くも悪くもタフだったため、20代のうちは倒れることもなく「猪突猛進!」と、ただただ毎月の売上目標を達成するために全力を尽くしていた。出来ないことが出来るようになる喜びや他人から褒められる度に、私の心は高揚し、少しずつ少しずつ狂っていっていることに気がついていなかった。
 
起業してから、8年ほどが経った頃。ちょっとした違和感を感じるようになっていた。
あんなに無我夢中でやっていた仕事を楽しめなくなっていることに。
タフが取り柄だった私が、眠れなくなってきていることに。
 
ちょっとした違和感で対処していれば良かったものの、ビジネス狂戦士とかしていた私は
体と心からのSOSを無視して仕事をし続けた。目標必達が義務であり、もし出来なかったら自分の価値がなくなってしまうような、謎の切迫感に襲われて毎日毎日必死で働いていた。
 
とうとう、その日はやってきた。
倒れたのだ。
 
倒れた時、私は安堵を感じていた。止まるための理由を手に入れて、ホッとしていたのだ。
それから私は生き方を変えた。
 
本当の意味で「自分を愛する」ことが出来るように、自分の生き方をゼロから、いやむしろ
マイナスから見直すことにしたのだ。長期間立ち止まって、ようやく私は自分を虐めている
ことに気がついたのである。
 
ビジネス中心で回していた生活を、暮らし中心に大方向転換した。
それは、妖怪が人間に戻っていくプロセスのようだった。効率重視でまともに
寝食をしていなかったところから、丁寧に一つひとつ、心で感じて選ぶように意識して
生活するようにトライしていった。
 
「これでいいや!」から「これがいい!」と、自分の心の声を聴くように努力した。はじめのうちは、その声は小さくてなかなか聞こえず、聞き逃してしまうことも、間違ってしまうことも沢山あった。そんなトライ&エラーを繰り返していくなかで、自身の心の声と行動が完全一致する時があると、そんな時は決まって鳥肌がたち、胸の中心がぽかぽかと温かくなるような感じがした。胸の中心にいる小さな私が、「嬉しい、嬉しい」と一緒に喜んでくれているような気がして、一人その場に佇んでいるだけで安心感を感じるようになっていた。
 
居場所を無理やり作るのではなく、自然と出来上がっていく過程を穏やかな気持ちで眺めていられるようになった段階で、私はようやく「自分を愛せていなかった」と認めることが出来たのである。
 
何かを出来るようになることが自分を愛することではない。
目標必達をし続けることが存在価値を証明することではない。
 
本当に大切なことは、自分の心の声を無視しないで丁寧に掬い取ること。
毎日の暮らしを楽しむこと。
そんなシンプルなことが、「自分を愛する」ことだった。
これからも小さな私とともに生きていこう。あなたと一緒に。
 
 
 
 
***

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2024-08-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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