メディアグランプリ

美味しいものは、美味しいうちに

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:しのP(ライティング・ゼミ集中コース)
 
 
その日は、久々に渋谷駅に降り立った。
渋谷。それは、日本屈指の繁華街でビジネス街。
 
駅周辺はいつでも人が密集しているが、少し離れると雰囲気がガラリと変わり、さまざまな文化が混じった雰囲気は世界中の人を魅了している。今でもなお、進化し続ける街にわたしはいた。
 
渋谷は私の生活圏内の街ではない。
 
なぜこの地に来たかというと、ライティングゼミに参加するためだ。
オンラインで参加しても構わないけれどもわざわざ渋谷まで来た理由、それはいくつかあるが、そのうちの一つは、ライティングゼミの後にとある店で食事をしたいからだ。
 
その店は、豚の角煮のような料理を売りにしている店で、大変な有名店である。(正確な料理の名前はあるが、変な先入観が入らないように食べ物名は伏せる)
ずいぶん前から来てみたかったけれどなかなか機会がなく、ようやく機会がやってきた。
口コミ件数1000件以上のその店では、絶対においしいと約束された味がそこにあるはずであったが、そこで食べたその料理が、私を過去に引き戻して、あることを私に告げたのだった。
 
 
 
その日のライティングゼミが終了し、わたしは徒歩10分程度歩き、その店にたどり着いた。
以前より目をつけていた店で、おいしいに違いない。
ライティングゼミでは内容が濃く充実した時間を過ごし、普段使わない脳みそを使いまくって、食欲は全開である。
 
ランチタイムを外しているせいか、すぐにお店で座ることができた。
注文するのはもちろん、名物の、豚の角煮のような食べ物である。
 
すぐに料理が運ばれてきて、まずはスマホで写真を撮る。
 
ぱっと見たところ脂身が多いようだけれども、口コミによると、この部分に味がしみ込んでいてこれがおいしいらしい。
いただきます、と一人でつぶやいてから、料理を口に運ぶ。
 
一口目。ふむふむ、美味しい。しっかりと味がしみ込んでいて、スパイスが少し入っている。
二口目も美味しい。でも、ちょっと脂っぽいかなと思う。
三口目、決定的に思った。脂っぽい。
 
胃がむかむかしてきて、少し気分が悪いと感じた。
おいしいはずだからとさらに口を運ぶがだめだった。しっかりと火は通っているから、食中毒ではないだろう。
 
ああ、この感覚、どこかで感じたことあるな。
そうだ。これは、胃もたれだ。
 
あれは29歳の時だった。
職場近くのとんかつが有名な店で、とんかつを食べたのだ。
当時は食べ盛りで、ガツンとおなかにたまる料理を食べることが好きだった。
 
しかしながら、その時初めてとんかつが食べきれなかった。
端っこの、一番おいしい、脂身のところ。一口しか食べられなかったのだ。
 
それまでは、とんかつの隅っこの、一番右もしくは左の、脂身のところが大好きだったのだ。
衣にくるまれた豚肉と白ごはんを一緒に食べるとものすごい満足感で、サクサクとふっくらさが混ざり合い、脂身のコクがつなぎとなった素晴らしいハーモニーを楽しんでいたのだ。
 
それなのに食べきれなった。
ちょうど30歳になる直前の年齢で、これが噂に聞く胃もたれなのね。
胃薬を飲んだらすっきりして、大人になるってことなのね……と、わたしは30歳の訪れを感じものだ。
 
それが、また来たのだ。この、渋谷で、豚の角煮のような食べ物で。
残念ながら完食できず、打ちひしがれた思いで会計をしてその店を去った。
歩いて渋谷駅へ向かうが、胃もたれが治らない。気持ち悪い。
 
いっそスッキリしたい……と、駅へ向かう途中、商業施設のトイレで最終手段を行使した。もう私は、豚の脂身の塊を、食べることはないだろう。
大好きだった豚肉の脂身。バイバイ、脂身……。
 
同じような経験として、わたしはとあるコンビニで売られているとあるチキンが大好きだったが、ある日を境に食べることができなくなったという経験がある。
 
ご存じの方も多いだろうが、コンビニでホットスナックとして売られているチキンはカロリーと脂質の塊だ。
毎日食べていたらさすがに太るから、食べたいと思っても我慢することは多が多かった。
我慢を続けて、でも時々食べるチキンがとてもおいしいのだ。
物理的においしいのはもちろんだが、これを食べると太るのに……と思いながら罪悪感とともに食べるから、さらにおいしい。
 
しかし、数年前に、脂っぽさに私の胃が耐えられなくなり、食べることをやめた。
すごくおいしかったから今でも時々、そのチキンが食べたくなって手をだすのだ。あのおいしかった記憶を求めて、トライをする。
でも、一口食べて、ああダメだとおもう。
 
あの、何回食べても美味しかったチキンは戻ってこない。
いや違う。チキンはあるけれども、私が変わってしまった。
もう、私の胃が、油に耐えられない。
 
こんなことになるなら、わたしはもっと食べていればよかったのだ。
罪悪感なんて持たずに。カロリーなんて気にせずに。
 
わたしはみなさんに、強く伝えたい。
あなたが美味しいと思うものがあり食べることができるなら、今、食べた方がいいのだ。
そのうち、食べられなくなる日が来るかもしれないのだから。
美味しいと思える時に、おいしいと思える方法で、食べよう。
 
太るのを気にして、または健康を気にして、食事を制限することがあるのはわかっている。でも、美味しいとわかっているのに我慢して、あなたの人生はそれでいいのか?
 
「地球最後の日に何が食べたいか?」と聞かれることがあると思う。
最後の日に食べたいものを、今、食べよう。
脂身よ、わたしに、そのことを教えてくれてありがとう。
 
だから私は今日も好きなものを食べる。
 
ライティングゼミの後、渋谷。この街の食のレベルは高い。
どんなおいしい発見があるか、楽しみである。
 
 
 
 
***

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2024-08-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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