メディアグランプリ

自営業のきっかけ


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:みえふうや(ライティング・ゼミ)
 
 

「転職活動をはじめてみませんか?」
 

この会社では、直属の上司という考え方はなく、プロジェクト単位に上司が替わるというやり方をとっている。
そんな中、3ヶ月前に完了したプロジェクトの上司に呼ばれて会議机に座ったところで、こう切り出された。
 

「来年度に向けて、組織を改編することになったんです。そして、新しい組織で今後も活躍して欲しい方を選定しているのです。ところが、あなたには申し訳ないのですが・・・」
 

つまり、戦力外通知ということだ。
 

確かに、この前のプロジェクトでは散々だった。スケジューリングや役割分担管理など、管理職として不得意な部分が露呈してしまっていた。それに目をつぶって、黙ってわたしのフォローをしてくれたのは、この上司である。そういう意味で、彼には感謝しかない。ただ、わたしの使い方が分かっていなかっただけ、なのかも知れないが。
 

「はい、分かりました。考えてみます」
 

言葉少なに返答だけして会議室を後にした。
 
 

わたしをごひいきにしてくれていた上司は別にいた。その上司は、わたしが団体行動が苦手なことを早い段階から察知し、ひとりでクライアント先に向かうタイプのプロジェクトを優先して分けてくれていた。
 

「もし、おまえがシステムを作ったら、さぞ良いものを作るんだろうなぁ」
 

そういってくれたのも、その別の上司だった。なので、その上司に相談に行くことにした。すると、
 

「ああ、俺も辞めるんだよ。もし、他の部署を当たるんなら、話を通してあげるけど、どうする?」
 

コンサル業界というのは、意外とフットワークが軽い人達の集まりの様だ。こう見えて、転職に関しては腰の重いわたしも、腹を決めざるを得ない時が来たようだ。
 

転職エージェントにコンタクトをとって話を聞きに行く。
 

「同業他社なら、すぐにご紹介できますよ」
 

担当者は、気軽に返答をくれた。それって、こんな狭い業界で、今の会社と敵に回すということだろうか・・・・・・。同じ業界で同じ様な仕事。それでは進歩がない。変わり映えしない選択肢だなぁ。それに、管理業務が苦手ということは、早晩分かってしまうだろうし・・・・・・。悶々とした夜を過ごした。それならいっそ、今よりずっとユルい職場で、細々と始めた副業のプログラミングを続けられるようにした方が良いかな。いや、あえてこのまま居座って、リストラ部屋に放り込まれて、隠れて副業(ニンマリ)、とも思ったりしていた。
 

そんな1週間の週末、友人からメールが来た。留学の時からの同級生で、建設業界の中小企業の3代目だ。会社員の片手間の副業で、ホームページを作ってあげたのは、2~3年前だったか。その彼からの打診で、会社の人事制度を変えるにあたり、人事評価の元となるデータを集計するシステムを作りたい、とのことだった。
 

そのメールを見て、わたしには、その内容がすぐに理解できた。確かに、そのしくみは、建設業界では画期的だろう。しかし、彼の思い描く人事評価は、プロジェクトという単位で、各社員の貢献度を測るというコンセプトだった。一般の会社では、運用も含め難しいことはすぐに分かる。しかし、コンサルティング業界では、割と普通に採用されているモデルでもあった。
 

わたしは、ちょうど週末だったこともあり、すぐにサンプルを作ることにした。さすがにイチからプログラミングするわけにも行かないので、エクセルを使って、仮想のプロジェクトと仮想社員をこしらえて、評価の数値を集計する表計算シートを作った。そして、その日のうちに友人に送り返した。
 

すると、翌日。喜びの返信。「そう、そう、それそれ!」
 

彼の会社は関西の地方都市にあるためか、近隣のシステム業者の営業に相談しても人事評価のしくみは、全く理解してもらえなかったのだそうだ。
 

電話で詳細を確認した。もともと、彼のパソコンの中で動く、データベースソフトでの構築を考えていたそうだが、わたしは、将来性のある、Web上での開発手法を推したところ、あっさり快諾された。もちろん、コンセプトは、十分理解できたが、実際にWebシステムとして完成させるのは、簡単ではない。一世一代の大仕事だ。これは、片手間に出来る仕事ではないことを直感した。
 

「後には引けない」
 

こうなっては、仕方がない。腹をくくるしかない。転職活動は中止だ。
 

会社には希望退職の旨を伝える。転職先は、なし。プログラマーとして自営を目指す。次の面談で上司にそう伝えると、曇った顔で反対された。
 

「もう少し考えてみた方がいいんじゃないですか?せっかくの機会だから・・・・・・」
 

戦力外通知を通告しておいて、この面倒見の良さ。人柄からか、それとも、円満退職にむけて、もめ事を避けたいがための慎重さからなのか。
 

「いいえ。せっかくの機会なので、条件を詰めましょう」
 

「・・・・・・そうですか、わかりました」
 

かくして、偶然にも、絶妙なタイミングでの1通のメールにより、わたしの自営業への道が開かれたのだった。

 
 
 
 
***
 
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2024-08-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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