メディアグランプリ

頼むからみんな、英語を勉強しないでくれ


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記事:しのP(ライティング・ゼミ集中コース) 
 
 

「英語、とてもお上手なんですねえ」
 

その時わたしは閑散とした郊外の駅にいて、駅で電車を待っていた60代後半くらいであろう女性に話しかけられた。
 

外国人に切符の買い方を教えていたのだが、人が少ないからちょっと目立っていたようで、英語で会話をしていた私に、話しかけてきたのだ。
 

「え、そうですか? いえいえ、全然英語はしゃべれないのですが。そのように仰っていただきありがとうございます。」
 

否定しつつ、そう言われたら嬉しくない訳はない。
内心、ガッツポーズ。
やった!英語、ほめられた!
 

そう思ったけれどもわたしは、自分が英語が上手だとか、流ちょうにしゃべれるとか、ちゃんと操れるなんて、一ミリも思ったことはない。
 

だから、その女性が聞いていたのは英語風なものであって、わたしにとっては完璧な英語ではないし、まったく満足いくものではない。
 

何年勉強しても、上達しない英語。
私にとって英語というものは、今までに時間もお金をかけて、ものすごい労力をかけてきたけれどもなかなか手に入らないものの代表的なものだ。
 
 

わたしが英語を勉強し始めたのは、ほとんどの人と同じように中学生になってからだ。
初めは英語が得意でもないし興味も持てない、ただの意味のない文字の羅列だった。
 

しかし、カナダからアシスタントとして来ていた先生が洋楽を授業中に紹介し、その魅力に一気に取りつかれた。
 

それは、バックストリートボーイズの曲だった。
だから、初めて買ったCDはバックストリートボーイズだし、初めて行ったコンサートは、バックストリートボーイズの来日コンサート。
田舎の学生にしては、かっこいいでしょ。
 

好きなものには興味を持つ。英語についてもっと知りたいと思った私は、英語の教科書だけではつまらなく感じるようになり、ほかにも英語に触れる機会を求め始めた。
 

当時の中学生にとって一番手軽で身近だったのは、NHKのラジオ英会話だった。
ラジオを聞くのは無料だし、書店には毎月安価なテキストが並ぶ。
英語を何回も聞くためにはCDを購入しなければならなかったけど、CDは別売りで高いから、カセットテープにラジオを録音して、繰り返し聞いた。
それからも、波はあったけれども今までに英語学習はなんだかんだで続けてきた。
わたしの本棚には、英語関連の書籍が並ぶ。
TOEIC模試、数種類の単語帳、月間の英語学習雑誌、英語の勉強に関する本。
 

まとまった時間を英語学習に費やしたこともあるし、それでも限界を感じてスパルタ英語塾なんていうところに通ったりもした。
なんとか念願だった英検1級という資格を取得することができたときは嬉しかったけれども、こんなにも大変で割に合わないものだなとも思った。
 

それが、どうだ。
今やずいぶんと楽に、英語を学習することができるじゃないか。
 

勉強を開始する年齢も下がっているし、インターネットのおかげで、無料で英語が聞けるし読める。スマホを使っていつでもどこでも勉強ができて、英会話学校もオンラインとなり格安である。購入をしなくても、YouTubeや漫画雑誌など、英語で楽しく学べるコンテンツが本当にたくさんある。
 

これだけ英語学習が身近になり、さぞかし、ひとは苦労なく英語は上達するだろう。
カセットテープで勉強するような人は、いないだろう。
多くの人が英語を話せるようになり、みんな英語ペラペラである。
大した苦労もせず、お金もかけず、みんな、上手な英語を話す。
 

そうなったらどうなるか?
 

困る。
 

私が、汗と涙と時間と金をかけて、積み上げてきた英語能力の価値が、相対的に低くなる。
わたしが今までやってきたことは何なのか?そう思ってしまう。
「英語?そんなの無料アプリで毎日10分続けるだけで、簡単に上達しますよ」なんて言い出す人がでてきたら、私はショックだ。
 

英語の、陳腐化……。
 

そしてもはや、冒頭の女性のように、私のことをほめてくれる人はいなくなるだろう。もし同じ状況だったとしても、「あなたの英語、文法がボロボロだったわね」って、内心思われるじゃないか。
 

今ならわかるが、「英語ができたって、中身がないと意味ないよ」「TOEICで高い点数を取ったって、しゃべれない人が多いし使えない人間ばかりだよ」と、言う人たちは自分たちの、英語ができるという既得権益を守りたいのだ。そして、自分の努力を否定したくないのだ。
私のように。
 

わたしが英語学習で得た楽しさ、喜び、発見などは間違いなくある。
英語を学習してきたことで役にたったことや良かったことは、たくさんある。
でも、大変だしそれに見合うものではない。だからみんな、英語を勉強するのは、やめてくれ。わたしの努力を、否定しないで……。
 

でも、今まさに英語を勉強している人たち、
本当にうらやましい!ずるい!(笑)

 
 
 
 
***
 
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2024-08-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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