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名古屋近郊はパワースポット


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記事:XV(ライティング・ゼミ集中コース)
 
 

「ヤマダさん、なんで名古屋から会社に電話してくるときだけ声が明るいんですか。」
 

確認したいことがあって社内にいる事務担当者に電話したら、呆れたような声が返ってきた。
 

声については全く意識していなかったが、その時に自覚した。
 

名古屋出張はいい、と。
 

筆者は東京の企業に営業担当として勤務するサラリーマンである。
全国の企業・団体に自社製品やサービスを売って回るのが仕事である。製品の性格上、製造業の企業が多く工場訪問もある。
 

そんな筆者にとって、出張先として訪れる名古屋近郊はパワースポットである。
 

社則により、出張時の移動は電車、バス、タクシーのみ。
さらに営業部隊には、
・新幹線を使った出張を行う際には、3件以上の商談をしてくること。
・出張中も取引先や上司からのメールにはきちんと返信すること。
というルールが課されているものの、それ以外の行動は個人の裁量に任されている。
大抵は早朝の新幹線に乗り、午前中に1件、午後2件商談を行うというスケジュールである。
 

朝名古屋に着くと、在来線や地下鉄に乗って郊外に出る。
15分も乗っていると隙間なく林立するビル群は車窓から消え、田畑の多いのどかな田園風景が広がる。
まだ柔らかな日差しに映える緑を見ているだけで、心から癒やされてくる。
美しい花が咲いていなくてもよい、草花の香りを身体に吸い込み、緑豊かな風景を見ているだけで心がほっとするのだ。
 

最寄り駅から訪問先まで歩く時は労働意欲を喪失しそうになるが、工場が見えてくるあたりで気が引き締まってくる。
 
 

午前中の商談を終わると次の訪問先の最寄り駅まで行き、昼食とメール処理の場所を探す。
移動の時も電車の混雑や車の渋滞などとは無縁に過ごせる。
東京に比べたら電車の本数は少ないが、東京と同じような感覚で動けるので、あまりストレスを感じない。
(もちろん電車の時刻の確認やタクシー手配など、事前にある程度の準備は必要だ)
 

中心部のビジネス街であれば、東京同様喫茶店の他、商業ビルのフードコートなどが使える。
でも訪問場所や予定をコントロールできるのであれば、郊外で昼休み時間帯を過ごしたい。
 

郊外の場合、駅周辺を一回りすると、チェーン店の他、昭和からずっと続いていそうな古めかしい喫茶店が1件は見つかる。
ガラスが上部に置かれた低めのテーブル、座るものはソファ。BGMの代わりにラジオかテレビの音が聞こえる。
内装も昭和時代から変わらず、シャンデリアが飾られているところも。
メニューは手書きで、騒がしい若者もほとんど見かけない。
そういった場所を見つけて食事を含めて1時間くらい滞在するのだ。
名古屋近辺だからか、郊外だからか、そういった店は雰囲気が非常に穏やかなことが多い。
 

午前中に受信したメールが軽い内容であれば、また午後の商談内容がややこしいものでなければ、とても穏やかな昼の時間を過ごせる。
今日の結果次第で商談成立という時には、準備を行うために最適な環境を喫茶店の空間が用意してくれる。
 
 

午後の商談が無事終わると、電話の時間だ。
すぐに帰りの新幹線に乗ると電話ができないまま18時を回ってしまうので、訪問先から駅までの道すがらや駅周辺でできるだけ電話することになる。
 

名古屋は中心部も郊外も道が広い。そして人口密度は低い。
周囲を見つつ、歩きながら電話していると、人に会話の詳細を聞かれる可能性が低いことがわかる。
また、何かに腰掛けてメモを見ながら電話したい場合、ある程度静かでかつ喧噪のあるところが求められる。
喫茶店の店内のように静かだと通話が丸聞こえになってしまう。駅のホームでは騒音が大きすぎる。
そんなときにちょうどいい道路脇のベンチ、公園など「ここなら大丈夫だろう」と思える場所が多いのだ。
(それぞれ事情はあろうが)東京の町中で排除アートなど公共の場所で人の滞留がしづらくする取り組みを見慣れていると、ちょっとの間落ち着いて座れる場所は貴重に感じる。
 

名古屋駅からの新幹線に乗っている時間も、落ち着いて残った仕事を片付けるのにうってつけだ。
東京に着くまでの約1時間半、電話や社内ツールによる音声呼び出しが受けられないため、集中して資料を作ったり少し長めのメールを書いたりするのにちょうどいい。
 

こうして東京に着く頃には仕事がおおよそ片付いた状態になっていて、とても充実した気分が得られる。
 

それと、これは大きな声では言えないが、午後の訪問後に景色や謎スポットを楽しむこともできる。
 

河川、山、城跡など、休日にわざわざ新幹線に乗って見にいくほどではないが、近隣に住んでいたらきっと訪れるであろう場所が多くある。
ちょっと寄り道して、という程度の訪問でもとてもいい気分転換になるのだ。
 

また、町中で独特な雰囲気を漂わせる喫茶店を見つけることがたまにあり、そちらに寄るのも楽しい。
ある日は天井からミラーボールが下がり壁一面にラメが貼り付けられてパーティー仕様なのに、蝶ネクタイをした地味な中年男性が真顔で接客する店に遭遇した。
その時はシュールさにちょっとドキドキしたが、後日の話のネタには最高だ。
 

来る者を癒やし、落ち着いた環境を提供し、プチ行楽まで提供してくれる名古屋近郊は間違いなくサラリーマンにとってのパワースポットである。
 

※本記事は筆者の感想であり、効果・効能を保証するものではありません。

 
 
 
 
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2024-08-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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