メディアグランプリ

iPadケースの決断


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:みえふうや(ライティング・ゼミ)

 
 

iPadを買い換えた。そうすると、それに合うiPadケースも買い換えることになる。2年前に購入したケースは、国内メーカーのもので、シンプルで使い勝手の良いケースだった。あまり知名度のないメーカーではあったが、フィット感と、シンプルさの両方のバランスがとれた良いケースだった。あのときは、新宿と池袋のお店3軒を2周廻って、最終的に決めたケースだった。
 

今回は、前回購入したお店に直行した。ここは、在庫の選択肢が一番多い。あまり時間がなかったので、その中から選ぼうと思った。まずは、前回と同じメーカーの品を探した。しかし、それは、見当たらなかった。仕方ないので、あるものの中から選ぶことにした。どれも似たり寄ったりだが、少しずつ違う。ペンが収納できるもの、できないもの。その代わりに軽くてシンプルなもの。カバーの折れ曲がり具合でスタンドの角度が変えられるもの。さすがにいろいろと工夫がされている。値段は、どれもかなり高い。
 

その中で、直感的に選んだのは、ペンが収納できるケースだ。少し分厚くなるが、万が一、落としたときの衝撃吸収力もありそうだ。それに、ケースのカバーが取り外せる。これは、今までになかった、アイデアだ。
 

「んー、もっと安ければ」と思いつつも、これをレジにもって行く。
 

お店の片隅で、パッケージを開け、たった今購入したばかりのiPadをそこにセットしてみる。うんうん、良くも悪くも思った通りだ。良い点は、1ミリどころか、0.1ミリの狂いもなくピッタリフィットする。少し悪い点は、衝撃吸収のため、そして、ペンの収納のため、iPadのまわりが縁取りされ、いくぶん大きくなってしまうことだ。でも、まあ、万が一落としたときのことを考えて、これは、ヨシとしよう。
 
 

翌日、さっそく、iPadを持って、意気揚々と出かける。iPadを見おえて、ケースを閉じると、いつもなら、カシャッという音がして、スリープモードに入るはずなのに、音がしない。おかしいと思って、もう一度開閉する。また、音が鳴らない。もう一度やると今度は大丈夫だ。
 

ペンが挟まっているので、もしかしたら隙間が出来るのか?少しゆっくり締めてみる。なぜか4~5回に1回ほど、うまくスリープしない。
 

ううむ・・・・・・。
 

ある考えが浮かぶ。
 

もう一度、あのメーカーの品物がないか、今度は、検索してみよう。そして、もしあったら、今のは返品してしまおう。
 

外出先なので、とりあえず、販売店に寄ってみた。
 

店員さんに、iPadを見せて説明すると、店員さんも、ケースのカバーを開け閉めしてみる。
 

最初は、ちゃんと、「カシャッ」と音がして、スリープする。しかし何度か繰り返すと、やはり音がしない。
 

「そうですね。同じ品物なら、すぐに交換できますが、返品となると、このケースが入っていたパッケージがないと、お手続きできないんです」
 

「分かりました。出直してきます。お手数おかけしました。」
 

結局すぐには返品できず、帰宅した。パソコンでゆっくり検索してみる。まずは、メーカー名。確かに前のiPad用の製品があった。しかし、やはり、新しいiPad用のケースは出していない。
 

「んー、残念。せっかく良い製品だったのに」
 

検索を続ける。
 

おや? 大手通販サイトで検索すると、いろいろな種類が出ている。店頭に比べてものすごくたくさんの選択肢だ。しかも、どれも安い。
一つ一つ見ていくと、やはり少しずつデザインは違う。
 

そんな中で、ひとつの製品に目が留まる。うんうん。このシンプルな感じ。これは、以前使っていたものにそっくりだ。
これなら、同じ使い勝手が実現できそうだ。
 

メーカー名は?
 

知らないメーカーだ。だが、どう見ても、海外メーカーだ。
 

また考えがよぎる。
 

今のケースは返品して、これを買う。価格は。およそ、6分の1。かなり節約できる。
 

そこで、もうひとつの考えが浮かぶ。なぜ、あの日本メーカーは、新しい製品を出さなかったのだろう?
 

答えは簡単だ。外国のメーカーが、そのデザインを真似して、安い値段で売り出したのだ。そっくりの商品が6分の1の価格で出ていたら、オリジナルの本家の商品は売れ残ってしまう。だから、もう、この日本メーカーは、この分野から撤退したのだ。

頭の中のモヤモヤがスッキリすると同時に、もっと奥の方に霧がかかる。

自分は、プログラマーだから、ものづくりはやらない。もっぱらバーチャルだ。
しかし、もし、そのプログラムのアイデアが真似されて、そっくり同じプログラムが6分の1の値段になってしまったら?

競争だから仕方がない?
 

でも、最初にアイデアを考えた人の努力は?
 

ちょっとした使い勝手は、意匠として権利を登録することは出来ないし、見た目なんて簡単に真似されてしまう。
それでも、日本メーカーのデザイナーは、よいと思う商品を出して来ていたはずだ。
しかし、それも、模倣品の廉売の前には、経営判断で、事業中止となってしまう。
これって、どうなんだろう?
 

安い商品がネットですぐに買える時代。確かに消費者は、得をした気がする。
しかし、その一方で、品質の分からない品物が多く出回っているのも事実だ。
 

確かに見た目は同じで使い勝手も良さそうに見える。しかし、実際に購入してみるまで、本当に良い製品かどうかは分からない。
 

もし、ダメなら、返品?
 

まあ確かにそうだが、いつから、日本はそんな社会になったのだろう?
 

一晩寝て考えた。
 

今回は、返品はしない。店頭で見て、選んだ商品を使う。
値段は高い。でも、日本のメーカーが、販売店に卸した商品だ。
たしかに、スリープモードの反応は鈍い。だけど、それ以外に工夫やメリットのある商品だ。
 

これを返品してしまっては、せっかく使い勝手を工夫してくれた、デザイナーの気持ちに応えることが出来なくなる。
 

お店も、良い商品を展示し、販売するという意欲が沸かなくなってしまう。
全てが単純な収支計算では、ないはずだ。
 

iPadケースは、お店で見て選んだ商品を使う。
 

今回の決断。以上。

 
 
 
 
***
 
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2024-09-04 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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