メディアグランプリ

一石二鳥を遥かに超えたあそび「本の文通」


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:鈴木(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 

今年に入ってから、友人と本の文通をしている。
このデジタルの時代に、本の文通?と思うだろうか。
とても楽しいあそびなので、ここで紹介させていただきたい。
たぶん、もっと本を大切にしたくなると思う。
 

やりかたはこうだ。
お互いに、好きな本や、相手に読んで欲しいと思う本を、自分の家の蔵書の中から選ぶ。
自分で選んだ本と、前回相手が送ってくれた本を、どうにかしてレターパックに収めて送る。
私たちは国内在住だが海を越えて本を送り合っていて、まともに郵送すると送料がバカみたいになってしまうので、送る方法はレターパック一択。
必然的に送る本の冊数は1冊から3冊が限界となり、かなり厳選する必要がある。
このやりとりを、1か月から1か月半に一回のペースで行っている。
 

1か月くらい経った頃に、「そろそろどうですか?」という連絡をどちらからともなくして、それは大体ちょうどいいタイミングなので、「次の本を送りましょう!」ということになる。
その1週間後くらいにはお互いの手元に本が届き、「本が届きました。気になっていた本だったので助かります」などと、本の無事を確認し合う。
そして、わくわくしながら開封し、にやにやしながら読み始める。
その1か月後くらいに、どちらともなく「本はどんな感じ?」と連絡して、次の本を送る。
この繰り返しだ。
 

最初は、本を送り合うだけだった。
最近は、本の中のお気に入りの言葉や場面に付箋を貼ったり、感想メモを書いて本に挟んだりして送り返すようになり、なんだかうれしい発展をしてきている。
これも、どちらともなくやりはじめたことだ。
 

本の文通にはいくつも良いところがあるので、それについて紹介していきたい。
 

まずは、確実に本の感想を言い合える友人がいるということである。
読んだ本の感想を言い合える友人が手の届く範囲にいる、ということがどれくらい当たり前のことなのかが私にはわからないのだが、少なくとも今の私にとってはかなり貴重な存在だ。
具体的に言うと、ふと会った時に、本を読んだことを何気なく話して、感想をちょっと言って、相手も最近読んでいる本の話をしてくれて、ちょっと気になって本屋に行って、というような、本と人との距離感が近い人がいるかどうか、ということになる。
 

ここ数年の私は、仕事に関係する本を読み、どんな学びがあったのかを伝えて、知識や価値観の共有をする、という本の読み方をすることが増えてきた。
それを望もうが望むまいが、本は仕事とつながるツールの一つとして使われることが多い。
大人になると、こういう本の読み方がスタンダードなのかもしれない。
だがそんな中で、必ずしも生活や仕事に直結するわけではなく、純粋におもしろいと思える読書をしている仲間が、少なくともひとり、手触りのある距離にいる状態が確保される。
このことは、楽しい読書をしてもいいのだという安心感与えると同時に、読書へのモチベーションをあげてくれる。
 

次に、自分では選ばない本を読めることである。
自分で本を買っていると、当然、自分の好きな作家や得意なジャンルの本ばかりを読む。
そうやって好きな本を探し出して読むことも、楽しみ方のひとつであることは間違いない。
「大好きだ」、「この本は一生手放さないぞ」、と思える本と出合うことが出来たら、それは最高の瞬間に違いない。
だが、自分では買わない本を読むとことで、文字を追うごとに脳に新しい回路ができるかのような快感を楽しむ、という読書もあるようだ。
 

本屋をうろつきながら、たまにはいつもと違う本を選ぼう、と思っていたとしても、帯の文章や装丁の雰囲気などで自分の好みがどうしても出てきてしまうし、あまりにも普段の本と違いすぎて読み切れなかったらどうしよう、という不安にかられ、なかなか踏み切れないことが多い。
だが、相手が送ってくる本は、自分が作ったおもしろい本の枠組みと、踏み切れない不安要素を、簡単に取っ払ってくれる。
しかも、私の本の好みや人間性を多少なりとも知っている友人が送ってきた本である、という事実が、文章の感じが合わないなどの、途中で読むのをやめてしまう要因を軽減してくれる。
そうして読んだ本には、私が普段読む本の根底に何となく流れているのとは異なる常識が存在していたり、文章の書き方や言葉の使い方が違っていたりして、こんな読書もあるのか、と新たな発見をもたらしてくれる。
中には、「もしかして、私にこういうことを伝えようとしているのかな?」と勝手に妄想してしまうような、優しい物語もあったりする。
こういう優しい本は、なんだか自分を甘やかすようで私はなかなか買うことが出来ないので、送ってくれてありがたいな、と思う。
 

次に、本に他の人の体温を感じられることである。
本を読み終わると、その本の中には、読んでいた時間と、そこで生まれた感情が、新しく書き足されるような感じがする。
それは、その本を読んでいたカフェの光景だったり、当時の仕事の悩みだったり、よく会っていた友人の顔だったり、号泣した時の部屋の薄暗さとティッシュの硬さだったりする。
本棚を眺めていてふと目に留まった本から、その当時のことを思い出してなんだか懐かしくなってしまうこともよくある。
 

文通から帰ってきた本には、ここにほかの人の時間と感情が足される。
自分の本が相手の家へ行き、そこで付箋を貼られ、感想メモをくっつけられて、家に帰ってくる。
そのふせんと感想メモから、自分ではない他者の体温を感じられるのだ。
それは、ふせんが貼られているページを読んで「相手はここが印象に残ったのか。意外だ」ということもあれば、感想メモを読んで「この本がハマったか。よかった」という、直接会話をするわけではない分、想像力や思いやりが必要な時間でもある。
自分の時間と感情しかなかった本に、他者の時間と感情が混ざる。
ここに、新たな体温が生まれる感じがして、本への愛着が増す。
 

本棚を眺めていて、文通から帰ってきた付箋の飛び出している本が目に入ると、私はその友人のことを思い出す。
そして、ちょっともう一回読んでみようかな、という気になる。
 

本の感想を伝え合う友人ができて、自分の持っている本をもっと大切にできて、知らなかった本を知ることもできて、改めて読書のすばらしさに気付くことが出来る。
本の文通は、一石二鳥を遥かに超えたあそびなのである。
実はここに書ききれない「やっててよかった」がまだまだあるのだが、それはぜひあなた自身に体感してほしい。

 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325



2024-09-04 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事