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ピヨピヨピヨ……を聞くと優しくなれる、そんな心理学もあるのだな


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:佳代子(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 

 

心の病は意外と 隣に潜んでいる。
 

昔、ちょっとしたことがあって臨床心理士のカウンセラーという職業に興味をもったことがあった。数年前に少しの間だけ掛け持ちのパートとして深夜のファミレスで働いた時だった。
ファミレスのあの電卓のようなオーダー端末を扱ったり、テーブルの位置を覚えたりするのには若干不安だったけれど、接客経験はあったのでチャレンジ精神で飛び込んでみたのだ。
 

「できればシフトは週一くらいでお願いします。って伝えたはずなんですけど……」
週がわりに出されるシフト表には、週1どころか5以上に私の名前がはいっていて約束が違うと思った。
 

「店長に言ったほうがいいですよ、そのまま、ズルズルとシフトいれられちゃいますよ」
深夜勤務はメンバーが限られているので、ほぼ決まった全員が毎日出勤していた。
そのなかで、女性は私と、いまの仕事を教えてくれている彼女だけだった。
 

昼間のパートが比較的時間きっちり終わるので、少し収入をプラスしたかった気持ちもあったし、子どもの送り迎えもあったから、日中の活動に支障がない夜勤の仕事は魅力的だった。
 

「実は、厳しくして私のこと辞めさせようとしているんですかね?」
「いやいや、本当に人がほしいんだと思いますよ。」
 

夜勤組には有望な職員さんや学生のアルバイトさんもいるので店長はさっさと帰りたがっていた。昼のランチタイムは激戦で、その時間は主婦層のパートさんと店長が調理やホールに入っているのだ。と、教えてくれた。つまり、店長が早く帰るための補助要員としてあてがわれているようなものだった。
 

閉店は夜の11時半。片づけメインの仕事で入店したのに、ディナータイムの8時頃から来てほしいと聞かされていた。「忙しい時間帯ですものねー」と良い顔をして受けてしまったのがいけなかった。
 

私は昼間の仕事が終わって送り迎えをすれば、あっというまに夜7時になってしまう。
夕飯を作る時間もままならないので、せめて8時半にしてほしい! それだけは言った。
仕事も早く覚えるだろうし、まあいっか。くらいの気持ちで引き受けたのだ。
 

しかし、閉店後の業務は意外と仕事量も多くどんなに頑張ったところで深夜の3時をまわってしまう。おまけに休憩なしなのである。
一週間こなして気が付いたら、寝る時間がないという現実が重くのしかかった。
 

昼間の仕事は週に3~4日くらいしかないけれど、それをこなしながら夜勤も、となると無休の状態がしばらく続く。
すでにうんざりしていた。
 

世の中の過労はこうやって作られるのか。
しみじみ感じた日々だった。
 

「ピヨピヨピヨピヨ……」
 

客が訪れたことを知らせる、あのファミレス特有のチャイムは、ひっきりなしに鳴った。
皿も鉄板も、グラスも溢れんばかりに洗い場にたまり、ライスもパンも追いつかない。
そんな光景が繰り広げられていて、よくまあ私は働けていたものだと、いま考えてもゾっとする。それが現状だった。あのチャイムが恐怖だった気がする。
 

大げさではない、すでに私は昼の仕事に支障をきたしていた。制約はないけれど、仕事を掛け持ちしているからといって、だれも同情はしてくれない。
眠気は襲ってくるし、家事は滞るし、一日をきちんと休める日はほぼない。
 

過去の話をしているので、私は無事にこうして安住しているけれど、あのままの状態が続いていたらきっと精神を壊していたのではないか? と思う。
いわゆる「心の病」である
 

満足に眠れないから、自律神経が乱れて全体的に不調になるのは当然のように思う。
不十分な眠りから目が覚めると憂鬱で、ドキドキしていたのを何となく覚えている。
自分のそんな状態は初めてのことだったので、少し危機感があって
早めに「辞めたい」と言えた。
勿論辞めたけれど、そのひとことを言うのに勇気がいる。
ものすごく悩んで、何度も言う内容を反復した。
そうまでしても正式にお店をやめるまでは不安は尽きず、こんなに不安できつい思いは嫌だと思った。
 

あの時は、自分ひとりで何とかしたけれど、もし誰かに話せていたりしたら、きっともう少し楽だったのではないかと思った。
たまたま、いま携わっている仕事の関係で「適応障害、パニック障害、うつ病、双極性障害……」など、実際に仕事ができないでいる人が多くいることを知った。病院にかかって休んでいる人の多くがそういった精神疾患で日常の生活に支障をきたしていることがわかった。しかもその大半の人は業務上の人間関係だったり、仕事の忙しさだったりが原因だという診断なのだ。
メンタルヘルス=心の健康状態
人を追い詰めていたり、逆に自分が追い詰められていたり
そんなことに気が付かず、日々を過ごしていないだろうか?
 

自分自身を守るのに困難な時は、誰かを頼ってみると案外 軽く済むかもしれないので
勇気をだして話してみてほしいと思う。
そして、受け入れてほしいと心から願う。
 

実は、私はいまでもピヨピヨとなるチャイムを聞くと
とても優しくなれるのだ。

 
 
 
 

***

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2024-09-18 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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