貴方から仕事を取ったら何が残るのと言われて答えられなかった私
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記事:小林利幸(ライティング・ゼミ9月コース)
「貴方から仕事を取ったら何が残るの! 」
この一言が、私の心を迷路に落とし込んだ。
大学卒業後、IT会社に入社し、仕事一筋の生活を送っていた私。生活の割合メーターは、ほぼ仕事100%。同じ職場に付き合っていた彼女がいた。その彼女から言われた一言だった。まるで刑事からの詰問のように。
この質問に、私は答えられなかった。頭の中が空っぽになっていた。このような場合、なんと答えれば正解だったのだろうか。彼女は、何と答えて欲しかったのか。
趣味の一つもないのかということだったのか。
考えると余計にわからなくなってきた。
でも、確かにそう言われてみると、仕事以外に何があるのだ。帰り道、ずっと考えていたが、いい答えが出てこない。読書、映画鑑賞、お酒、いやそんなことではないのだろう。と、言って彼女に電話して聞くのは出来るはずもない。その場で電話を切られるだろう。
仕事以外に何も持たない自分に危機感を覚え、私は愚かな決断をする。
そうだギャンブルだ! 少し悪のほうが男らしい。
趣味の男らしさと魅力を求めて、ギャンブルの世界に足を踏み入れた。
競馬、パチンコ、麻雀。職場の仲間と遊び歩く日々が始まった。彼女への見栄もあり、むしろ積極的にギャンブルに没頭した。しかし、その代償は予想以上に大きかった。
ある日、小遣いが足りずに、気軽にクレジットカードでキャッシングをした。数日後、届いた請求書を見て、私の手は震えた。気軽に借りたつもりだったが、れっきとした借金明細書だった。
怖いお兄さんが取り立てに来るのではないかと、恐怖で眠れない夜を過ごした。
『ナニワ金融道』を読んでいたので、余計に悪い想像をしてしまった。
この生活は約3年続いた。しかし、そこから得たものは、むなしさと借金の怖さだけ。人生の貴重な時間を無駄にしたという後悔が残った。
「このままではダメだ」
そう思い始めた頃、新しい仕事を任されて多忙になった。その仕事は、これまでにない難しい仕事だった。新しいプロジェクトを立ち上げ、チームマネジメント、そしてお客様との要望の聞き取り、その結果をプログラム作成チームへの展開だ。責任は重かったが、私に新たな目標と刺激を与えてくれた。
深夜まで働く日々が続いた。頭がパンパンに腫れて爆発しそうな日々。しかし不思議なことに、以前のように仕事が重荷に感じられなかった。むしろ、新しい知識や技術を身につけていく過程に、心地よさを感じていた。結果として、遊ぶ時間がなくなり、自然と仕事中心の生活に戻っていった。気がつけば、ギャンブルへの誘惑も忘れていた。
彼女とは、疎遠になり別れた。
そして、この転機から約30年が経過した。今では仕事と私生活のバランスが取れた、充実した日々を送っている。趣味の読書や旅行を楽しみ、家族との時間も大切にしている。
彼女の言葉の真意は、今でも謎のままだ。というより、すっかり忘れていた。あの迷路にはまったような時間は何だったのだろうか。神様は、たまに難題を課すのか。私の場合、彼女の言葉をたぶん誤解し、一時的に迷子になった。しかし、その迷走こそが、後の人生の道標となったのだ。
自分の弱さを認め、それを克服しようとする心の重要性。人生の時間がいかに貴重で、有意義に使うべきなのかということ。そして何より、仕事以外の価値観を模索する中で、本当の自分を理解する機会を得たのだ。
その人の価値は、自分に自信をもって行動して初めてつかみ取ることが出来る。
私の青春時代の迷走は、一見すると失敗談に過ぎない。しかし、この経験は実は成長には必要だったのかもしれない。冬の厳しさを経て、春に花開く桜のようだ。厳しい冬(迷いと挫折の時期)があったからこそ、私は自分自身と向き合い、真の価値観を見出すことができた。そして、その経験が礎となり、今の充実した人生という美しい花を咲かせることができたのだ。
人生は、時として予期せぬ方向に進むことがある。私の場合、彼女の言葉という小さな石ころにつまずいたことで、大きな回り道をすることになった。しかし、その回り道こそが、自己発見の旅となったのだ。この旅路で、私は自分の弱さと向き合い、真の強さを見出した。ギャンブルという誘惑に負けた経験は、自制心の大切さを教えてくれた。借金の怖さを知ったことで、社会の仕組みの一部を学んだ。
今、私は若い同僚たちにこう伝えている。
「人生には、たまに常に謎が発生する。それは時に我々を惑わせ、迷わせる。しかし、その謎こそが、人生を豊かで興味深いものにしていることもあるのだ。全ての謎を解く必要はない。むしろ、謎と共に生き、それを楽しむことが大切だ」
みんなは、少しぽかんとして聞いていた。自己満足なのかもしれない。
ところで、古くからの友人につい先日聞いた。
彼女は、君の優しすぎるところや結婚への自信のなさを感じて、別れを決心したらしいよ。
***
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