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ちゅーると柴咲コウに怯える日々から開放されて思うこと


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記事:吉田実香(ライティング・ゼミ9月コース)

 
 

ちゅーるのCMがこわい。
「ちゅーる、ちゅーる」と聞こえてきたら、すぐにテレビを消すか、チャンネルを変えている自分がいた。
そして、涙が溢れ出す。
 
あと、柴咲コウもこわい。
あの日、なんとなくつけていたテレビの中で、柴咲コウが歌っていた。
切ないメロディや歌声、歌詞が私の心境にどんぴしゃりで、いつの間にか釘付けになった。
そして、声を上げて泣いていた。
 
ちゅーるのCMはわりとよく流れるし、当時は映画の宣伝で柴咲コウさんがよくテレビに出ていたから、あの日からしばらくは、ほとんどテレビをつけなかった。
 
あの日から2年。
2年前のあの日、愛猫は虹の橋を渡った。
「虹の橋」はペットと暮らしている人なら多くの方が知っている話で、死んだペットは天国の手前の虹の橋のたもとの草原で、仲間たちと遊び回る。
そこは苦しみも悲しみもない楽しい世界なのだけど、ペットは唯一、残してきた飼い主の心配をしている。
そして、ある日、飼い主が虹の橋のたもとに現れる。
ペットは大喜びで飼い主と再会し、一緒に虹の橋を渡って天国へいく。
 
と、ここで、私はある勘違いをしていたことに気づく。
ペットの死を「虹の橋を渡った」と表現するため、虹の橋を渡った向こう側で飼い主を待っているのだと思っていたが、改めてネットで調べてみたら、ペットは虹の橋を渡らないで、たもとで待っているという。
 
と、そんなことはどうでもよくて、私は愛猫に、虹の橋のたもとだろうが向こう側だろうが、私を待っていてほしくなんかない。
少しそこで休んだら、飼い主の心配なんてしないで、さっさと天国へいってもらいたい。
そして、神様に「今世は辛かったのぅ。来世はうーんと幸せな猫生にしてやろう」と言われて、早急に生まれ変わって幸せになってほしいのだ。
 
といいつつ、猫の魂がたまには遊びに来てくれないかな、とも思っている。
生まれ変わって幸せになってほしいのだけれど、たまには魂が私のところへ来てくれないかな、と。
魂や死後の世界についての知識はゼロで、生まれ変わっても魂が前世のことを覚えているのかとか、ふらっと遊びに来るのは可能なのかとか、魂のシステムは何もわからないけれど、都合のいい解釈をして、猫の魂の来訪を待ちわびている。
 
そして、たまに愛猫の魂が遊びに来てくれているのではないか、と思うときがある。
それは、愛犬が愛猫がよくいた場所に急にかけ寄ったり、お気に入りだった定位置をじっと見つめていたりするとき。
霊感ゼロの私は、見ることはもちろん、感じることもできない。
でも、愛犬にはきっと、見えたり感じたりする能力があると思う。
だから、そんなときは、愛犬にそっと寄り添うと、愛猫にも寄り添っている気持ちになる。
心がふんわり温くなったり、涙が出たりする。
 
愛猫は、近所にいたノラ猫だった。
紆余曲折、さまざまな事情から、わが家へ迎えた。
病院の先生によると、10歳は確実に超えているとのことだったので、迎えた日を10歳の誕生日とした。
わが家へ来た当初はガリガリで、毛もところどころ剥げていて、ケガもしていた。
でも、少しずつ元気になり、止まらぬ食欲で毎日ドッグフードも狙うようになり、毛もきれいに生えて、2.9㎏しかなかった体重は5.2㎏にまでなった。
 
最初は、ひとりでひっそり、真冬の寒さの中で死んでいくなら、暖かいおうちで最期を迎えさせてあげようと思っていた。
でも、どんどん元気になって太っていく姿を見て、何年も一緒にいられると思ってしまった。
 
それなのに。
それなのに、1年10か月しか一緒にいられなかった。
お腹に大きな腫瘍があるとわかったときには、もう何もしてあげられなかった。
 
もっと、一緒の時間を作ればよかった。
もっと、なでてあげればよかった。
もっと、話しかけてあげればよかった。
もっと、大好きなちゅーるやささみをたくさん食べさせてあげればよかった。
もっと、頻繁に病院に連れて行けばよかった、そうしたらもっと早く病気に気づけて何かできたのかもしれない。
もっと、もっと、もっと……。
もっと、というか、そもそも私より幸せになれる飼い主を探してあげればよかった。
そうしたら、もっともっと長生きできたかもしれないし、もっともっともっと幸せになれたかもしれない。
後悔しかなかった。
 
 
あの日から、ちゅーると柴咲コウに怯える日々はどのくらい続いただろう。
半年、いや、一年近く。
 
今でも、ちゅーると柴咲コウで泣こうと思えばいくらでも泣けるけれど、条件反射で涙が溢れることはなくなった。
ちゅーるのCMは、以前のように出演している猫たちを見てかわいいなと思えるようになった。
柴咲コウさんも普通に見られるようになったし、大好きなガリレオシリーズのドラマや映画も楽しめるようになった。
 
あの日から遠ざかるにつれて、ちゅーると柴咲コウに怯える日々からは開放された。
でも。
でも、これは、私の中の愛猫の記憶や感情が薄れていっているのではないか。
こうやって、書きながら涙は出るものの、冷静に愛猫について書けるようになったのも、その証拠なのかもしれない。
2周忌に、そんなことを思って寂しくなった。
 
でも。
でも、やっぱり、私の愛猫への愛は薄れていない、とも思う。
こんなにも、私の中心に愛猫がいて、私を支えてくれている。
時の経過とともにカタチを変えていくのかもしれないけれど、私の命が尽きるまで、永遠に愛おしい気持ちは変わらない。
 
そして、虹の橋のたもとで待っていなくていいけれど、私があの世へ行くときには、どこかで再会したい。
愛猫が転生して猫なのか人間なのか、日本にいるのか世界のどこにいるのかもわからない。
それでも、魂の分身の術なのか瞬間移動なのか、魂の不思議なシステムがあるはずだから、きっと再会できると信じている。
 
 
 
 
***
 
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2024-10-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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