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クロスステッチ瞑想に出会って


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記事:中村はるみ(ライティング・ゼミ9月コース)
 
 

瞑想が苦手だ。
ハウツー本も読んだが、スッキリ感というか、自分が整ったという感覚を味わえない。
さぞかし爽快な気分なのだろう。
そんな感覚を味わいたいという願いは大きくなる一方だった。
 
瞑想は深い思考ができるとか、心の整理ができるとか、リラックスできるらしい。
だが私の場合、「このやり方で正解なのか?」という悩みが一つ増えただけだった。
“正しい旅行”みたいな、正解があるようでない答えを探している気分だ。
 
ずっと瞑想の感覚を体感したいと願っていた。
そして最近、久しぶりのクロスステッチをしていた時に気づいたことがある。
クロスステッチの後はスッキリ感だけでなく、不思議な充実感や満足感を感じる。
趣味の時間を楽しんでリフレッシュしたから、という理由だけではなさそうだ。
 
ちょうどその時、私が瞑想に求めていた感覚のことを思い出した。
そうか、クロスステッチは私にとっては瞑想なんだ。
探し求めていた理想のウエディングドレスに出会った瞬間のようだった。
 
クロスステッチとは“✕”の形に糸を交差させ、点描画のように絵を仕上げる刺繍の技法だ。
糸の色を変えながら、ひたすら“✕”を刺し続けるだけで見本と同じ絵が描ける。
小学生でも楽しめる単純作業の趣味である。
そして単純作業だからこそ集中できるのである。
 
集中すると言っても全身全霊で、全力集中するのではない。
車の運転のように、頭の中に適度な思考の余白ができる程度だ。
リラックスしながらシャンプーしている時の、ボーっと適当なことを考えている時間にも似ている。
 
図案を見ながら刺す順番を考えるのは、それほど難しいことではない。
だからこそ頭の中で日々の雑念が浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返す。
 
雑念というシャボン玉は深く観察する間もなく、数秒で消える。
一息で小さなシャボン玉がいくつも空に上がっていく景色のように。
 
その日の気分や体調で、シャボン玉の大きさや数が違うのも面白い。
大きな悩みのシャボン玉が一つの日もあれば、小さな雑念のシャボン玉がいくつも強風に乗って飛んでいく日もある。
 
針を動かしながら、頭の中のシャボン玉をボーっと観察してみる。
自分が何を悩んでいるのか、何に興味を持っているのか、今の心と体の状態はどうなのか。
そんなことを客観的に見ることができるのだ。
シャボン玉遊びをしている我が子を見守る親の気持ちに近い。
 
観察といっても、試験の研究レポートを書く時のように、全力で集中して分析しているのではない。
リラックスした状態で、マイペースにちょいと観察しているだけだ。
 
ただそれだけなのに、休憩のために針を置くと不思議な充実感や満足感がある。
思考と心が整理され、また一つ自分を知れたと思えるくらい深い思考ができた。
このスッキリ感と爽快感こそ、私が瞑想に求めていたものだ。
 
汗をかかないサウナに入ったのと同じである。
休憩でコーヒーを飲む時間は、思考を開放する水風呂のような刺激を与えてくれる。
クロスステッチ瞑想で思考の集中と開放を繰り返すと心が整うようだ。
 
そうだ、これをクロスステッチ瞑想と名付けよう。
自己満足に浸りながら、コーヒーをごくりと飲んだ。
 
クロスステッチ瞑想のいい所は、完全に自分の気分やペースに合わせられる点である。
時間や場所はもちろん、瞑想方法も自由に選べる。
 
お花やお茶だと一つの流派でプロ級になるには、膨大な時間とお金がかかる。
ところがクロスステッチでは、作品の作風も気分次第で変えられる。
 
絵だと作風を変えるのは難しい。
印象派の柔らかいタッチの作品を仕上げた直後に、写実主義派の写真と見間違えるような作品を書くなんて、初心者には夢のまた夢だ。
 
でもクロスステッチなら、簡単に作風の違う絵を完成することができる。
その日の気分で気に入ったインテリアのスタバを選ぶ楽しさと同じだ。
 
中学生の時にモネの睡蓮っぽい白い花を刺した後に、ミレーの晩鐘を刺したことがあった。
どちらも我ながら見事な仕上がりで、今も実家でたくさんの人に鑑賞してもらっている。
 
その時の気分で描きたい絵が描ける。
それも簡単に、誰でもプロ級に、である。
 
クロスステッチは「一粒で二度おいしい」のCMで有名なキャラメルと同じだ。
作る楽しみと、完成品を鑑賞する楽しみがあるからだ。
誰かに褒めてもらえるという3つ目の楽しみがあるので、キャラメルよりおすすめかもしれない。
 
瞑想で思考と心の整理をすると、やるべきことが見えてくるから行動力が上がるという説を聞いたことがある。
クロスステッチ瞑想にも、その効果はある。
趣味の時間を楽しんでリフレッシュした上に自分が整った感覚があるので、やる気が湧いてくる。
やるべきことも見えているので、すぐ行動できる。
 
こんなことを考えながら休憩を取りつつクロスステッチを刺している。
一杯のコーヒーを飲み干す頃には、クロスステッチと瞑想の共通点をまとめていた。
気づけば雪のモチーフが一つ完成していた。
 
今日はここまで。
明日もお気に入りのコーヒーを飲みながらクロスステッチ瞑想をしよう。
ワクワクしながら片付けを始めた、ある日の午後だった。

 
 
 
 
***
 
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2024-10-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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