それ、正解かも。でも「違う、そうじゃない」と思うとき
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:Motobu(ライティング・ゼミ9月コース)
ある日、コンサルタントとの打ち合わせ中に、胸の奥でざわつくような不安が広がっていくのを感じました。彼が言葉を紡ぐたびに、まるで冷たい風が心に吹き抜けるような感覚。冷静で的確なアドバイスを受けているはずなのに、どうしてこんなにも不安になるのか。
彼の声が響くたびに、私の心はどんどん孤立していくように感じました。正論であることはわかっているのに、心の奥底で「何かが違う」と叫ぶ声が聞こえる。彼の言葉が正しいことは理解しているが、その言葉が私の不安に触れることはなく、ますます心がざわついていくのです。
あるコンサルタントは、プロジェクトの進捗とリスクについて冷静に説明し、次のステップを明確に示してくれました。
「リスクは計算済みですが、この手順で進めれば、想定される問題は回避できるでしょう。まずはこの方法で進めていくのが最善です」
彼の言葉に理論的な誤りはなく、まさに正しいアプローチでした。しかし、私の中で湧き上がる不安は消えるどころか、かえって大きくなっていきました。彼の言葉が、まるで自分の心に届かない壁となっているように感じたのです。
私は感情的に、「本当にこの方法で大丈夫なんですか? もっと別の視点も考慮すべきではないでしょうか?」と尋ねました。けれども、彼は静かにうなずき、「問題ありません」と言うだけでした。
彼のその反応が、かえって私を深い孤独感に押し込みました。段々と、彼の言葉がまるで手順だけを伝える無機質なものにしか聞こえなくなり、私の心に寄り添っていないことが明確になっていったのです。言葉は正しい。けれども、私の心は置いてきぼりにされている。その感覚が、私の不安をさらに深めていきました。
この体験を医者とのやり取りに置き換えて考えてみました。たとえば、手術を控えた患者が医者からリスクの説明を受けている場面です。
「手術の成功率は高いですが、いくつかのリスクもあります」と、冷静な口調で医者が説明を続ける。科学的には正しいことを言っている。しかし、その説明が淡々と進んでいくたびに、患者は「本当にこの医者に自分を任せていいのだろうか?」と不安を抱く。そんな場面です。
医者が冷静にリスクを説明するだけでは、患者は「私はこの医者にしっかりと見られているのだろうか?」という疑問を抱くかもしれませんよね。そして、医者が感情に触れることなく、ただ冷静な事実だけを伝える場合、不安は倍増するばかりのはずです。たとえ手術の成功率が高くても、患者の心に届く温かい言葉がなければ、患者は心から安心できないのです。
コンサルタントや医者とのやり取りを通じて、私は痛感しました。どれだけ正しい情報やアドバイスをもらったとしても、そこに共感や熱意がなければ、相手は不安や孤独を感じてしまうのです。
冷静な言葉が正しいことは理解できても、それだけでは心は動かない。人は問題を解決するだけでなく、自分の不安や感情を誰かに共有し、寄り添ってもらうことで安心感を得るものです。論理的な解決策がどれほど正しくても、それだけでは信頼関係は築けないのです。この体験は、ビジネスだけでなく、家庭にも通じるものでした。仕事であれ家庭であれ、共感が欠けるコミュニケーションは、信頼関係を損なう要因になります。
たとえば、職場で同僚が「最近、仕事がきつくて本当に疲れている」と言ったとき、以前の私はすぐに「効率を見直したほうがいいよ」とアドバイスしていました。しかし、今ではまず「それは本当に大変だね」と彼の気持ちに寄り添うようにしています。
家庭でも同様です。妻が「疲れた」と言ったとき、すぐに解決策を提示するのではなく、「大変だったね、よく頑張ったね」と言葉をかけるだけで、彼女の表情が和らぐことが増えました。シンプルな共感の言葉が、これほどまでに大きな影響を与えるとは、以前の私は気づいていなかったのです。
その瞬間、私は初めて気づきました。正しいだけでは、人の心を動かすことはできない。心に寄り添う共感こそが、信頼を生む真の鍵なのだと。
解決策を示すことは重要ですが、それ以上に重要なのは、相手の不安や感情に寄り添い、その気持ちを理解する姿勢です。共感を示すことで、相手との信頼関係が深まり、より良い結果が導かれるのです。
今回のコンサルタントとのやり取りを通じて、共感の重要性を改めて感じました。論理的に正しいことを言うだけでは、相手の心に響かないことがあります。特に、ビジネスや家庭におけるコミュニケーションでは、相手の感情に寄り添うことで、信頼関係を築くことができるんですよね。
あなたもぜひ次に誰かが不安を口にしたとき、まずは「わかるよ、その気持ち」と一言添えてみてください。その一言が、あなたと相手の信頼を大きく変える力を持っています。共感は、論理だけでは届かない心の深い部分に届き、信頼を築く最も強力な手段なのです。
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