衝撃的写真に、思わず声を上げて仕舞った
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:山田THX将治(天狼院ライティング・ゼミ9月コース)
写真提供:緒方愛実(元・天狼院ライターズ倶楽部)
「オイ! 何してんくれんねん!?」
余りに衝撃的な写真は、私に思わず声を上げさせた。
それも、関西弁で。
生来の江戸っ子にも拘らず。
その衝撃的写真は、何の予告も無く突然にSNSのタイムラインに流れて来た。
缶詰の上部に、包丁が突き刺さった写真は、何とも衝撃的だった。
写真の主は、平成生まれの女性だ。そこには、
「プルタブ(缶を開ける為のリング)が無い!」
との、キャプションが付いていた。
私は、
「マッタク、平成生まれは、もう」
と、小声で悪態を吐(つ)いた。
何故なら、包丁は刃物なので缶に突き刺すことは出来ても、その後包丁として使え無く為る恐れが有るからだ。刃が潰れて仕舞って。
幾ら、包丁が突き刺さる程、缶詰の缶自体は薄くても、金属であることには変わりが無いからだ。
『もしかして、包丁砥(と)ぎをするのは、平成生まれの常識なのか?』
と、私の考えは、明後日の方向へ行って仕舞った。
そして、
『もしかしたら、缶切りや栓抜きを使わないことが、平成生まれの常識なのか?』
と、考え始めていた。
折角なので私は、缶切りについて調べてみた。
そうしたら、驚くべき発見というか、歴史上の真実に出会った。
缶詰が作られ始めたのは、19世紀初頭のことだ。
常識的に考えれば、缶詰を開ける‘缶切り’は、缶詰と同時に発明された筈だ。
当時の缶詰にプルタブ等、有ろう筈も無いからだ。
ところが、地球上に‘缶切り’なる物が出回り始めたのは、19世紀後半だったというのだ。
19世紀初頭は、日本は完全に江戸時代だ。
19世紀後半に為って、やっと文明開化し時代は明治に替わったのだ。
ということは、缶詰が日本に伝わった頃は未だ、‘缶切り’が存在しないことと為るのだ。
では、‘缶切り’が登場する迄、日本の人々は如何にして缶詰を開けていたのだろう。
疑問を感じた私は、改めて調べることにした。
何故なら、缶詰に包丁が突き刺さっているという、衝撃的な写真を突然見せられたからだ。頭から、離れなくなったのだ。
検索してみると、答えはあっさりと出て来た。
本当に、PCというものは便利だ。
‘缶切り’が登場する前の時代は、釘等を使って缶詰を開けていたそうだ。
金槌で何度も釘を缶に突き立て開けていたので、とても時間が掛かり、考え出されたのが缶切りだったという。
また、缶詰が多く配給されたのは戦場だった。‘缶切り’が出回る前、戦場で起こった出来事とは、平成生まれと同じ行為だった。
戦場では当然、急いで缶を開ける必要が有る。何時、攻撃を受けてもおかしくない状況では、何度も缶詰に釘を突き立てては要られない。
腹を空かした兵士は、手近に有る物で缶詰を開けようとした。
そう。
小銃に装着し、白兵戦で使用する銃剣だ。
当たり前の話だが、常に缶切りを開ける為に銃剣を使用して居ると、イザという時に役立たないことと為る。
刃が潰れて仕舞うからだ。
そこで軍では、‘缶切り’の配給も急いだそうだ。
結局、写真を見ての私の反応は、正当だった訳だ。
この結果を見て私は冷静に、既知の‘知恵袋’的な書き込みを平成生まれの彼女にしてみた。
冷静を心掛けたのは、昭和のうるさいジジイと思われたくなかったからだ。
「缶切りが無くても、缶詰は開けられますよ。勿論、包丁は使わずに」
と、いうものだった。
彼女は興味を示し、
「どうするのですか?」
と、訊ねて来た。
そこで私は、取って置きの方法を伝授することにした。勿論、公開のTLではなくDMで。
私の、缶切りを使わずに缶詰を開ける方法とは、以下の通りだ。
モルタル(コンクリート)の地面に、缶詰を押し付けながら擦るのだ。
モルタルの摩擦で、缶の縁を削り取るのだ。
必ず、モルタルでなければ為らない。土では意味が無いし、アスファルトでは、摩擦抵抗にムラが有るので、綺麗に缶が開かないからだ。
また、間違ってもモルタルだからといって、壁で缶詰を擦ってはいけない。何故なら、急に缶が開き、中身をばら撒いて仕舞うからだ。
擦るのは必ず、モルタルの地面だ。
伝言を手短にして、彼女に送った。
直ぐに、返信が来た。
「それって、うるさくないですか?」
と、彼女らしい賢い疑問だった。
私は、
「そう、そう。爆音を発するので、夜はいけない」
「加えて、屋根の在る駐車場とかもいけない」
と、注意を則した。
どちらにしても、図らずも爆音を発して仕舞い、近所に迷惑を掛けた私の経験則だった。
彼女からは、
「有難う御座います。今度、やってみます!」
「勿論、注意しながら……」
と、返信が来た。
彼女の素直な返信に、私は何だか、嬉しく為った。
私は、彼女がアップした写真を改めて眺めた。
そしてこれも、歴史が巡るということだろうかと想ったりした。
***
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