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書くことについて


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:村上舞(ライティングゼミ・6月コース)
 
 

最近ようやく自分のやりたかったことが出来ている。私は二次創作という趣味の世界を持っている。二次創作とは簡単に言えばパロディの事だ。原作の結末に納得がいかないから自分の思うように結末を改変してしまう。そういうパロディ作品を書くのが唯一にして最大の私の趣味だ。とは言え、自分好みの小説を書くということ、自分の思うように文を書くというのはなかなか難しい。それが例えパロディという本人以外は誰も読まない作品だったとしても。
私が書く場合、文章は形容詞と修飾語で果てしなく膨張してゆく。頭の中は常にイメージでいっぱいだ。しかし、イメージの方が速すぎて、文に直す前に頭の中がとっちらかり、どう表現していいのか分からず、わーん書けないよー! となった事が昔あった。その時にまだ、ナニカが決定的に足りない。今は書けない。と筆を置いた。それに十数年ぶりにようやく手を付け、完の一文字を押すことが出来た。だいぶ長い寄り道になったが、完結させられればそれまでの苦労なんて全部チャラだ。文を書く事に行き詰まった時、私は家事をする。無心に皿洗いや風呂を洗っていると有効に時間が使え、尚且つ時間が潰れる。本来なら文を書くために全ての時間を使いたいが、ああいうものは思いついた時、即座に書き始めないとイメージが居なくなる。ので、ひたすら待ちの時間も長い。魚釣りをする人には分かって頂きやすい感覚かも知れない。
 

私はそういう作り方をしているから結果的に時間の使い方としては無駄が多いし、バカみたいだと言われる。私の人生の師匠にあたる人がいる。小説なんぞを書く人ではないが、あの人が書くとしたら恐らくかっちりと構成を決め、ここでこうなるからこう、と因果律をハッキリさせ、結論をきちんと決めてから、毎日〇時間だけ書くと決めてコンスタントにコツコツと書くだろう。締切をきっちり守るタイプはきっと師匠の方だし、編集会社からの信頼を得て、一職業としてキチンと成立させられると思う。そして恐らく何でも書ける。ミステリだろうが時代劇だろうが恋愛モノだろうが、私が書くより数十倍上手く書くだろう。多分。私の作り方ではまずいのだ。これではね、と編集さんに苦笑されて「はいさよなら。あなた作家には向かないよ」と言われて終わりだ。多分。元々、私の場合は趣味の世界の話だが、これで職業として成立させてる人もいるんだなあ、と思う。かなり稼げるらしい。しかしここには、『上手くいけば』という但し書きがつく。ゴッホを見ると悲惨そのものである。金を稼ぐ事と書く事は別のこと。口を糊する事と、書く事は別の事、とお題目か念仏のように唱えないと私は文章を書き始める事すらできない。やはり怖いのだ。生活の苦労などなるべくしたく無い。楽な方に流れるなと師匠は言う。命を賭けないと良い表現なんて生まれるものか、と手厳しい。明日から無職、お前はペンと紙だけで生きて行かないとならない。そこまで追い込まれて初めて、暮らしの手付き(たつき)がどうなるかなんて全く分からない中で藻掻くだけ藻掻けばもしかしたら、と言う。悪魔のような師匠だ。
 

今現在ちょうど、憧れていた作品の別バージョンをどう書けばいいかの方策が分かってきた。分解と再構築の作業なので、作業自体は抜き出しメモと首っ引きでやればそこまで難しい話でも無さそう、と思えるようになって来た。今の私はやる気に充ち満ちてきている。
なんで今こんな楽しいことに気がついたんだろう。むしろなんで今までその方策に気付かなかったんだろう。と思った時、息子のお陰かもしれない。と思った。息子はいま不登校で学校に行っていない。それに対する現実世界の方策を諸々探っている。彼本人の意思も出てきた年頃で、なかなかに難しい。何とか自分の感情や、やらなくてはならない仕事にも折り合いをつけながらベストを探っている。
追い込まれないといい知恵なんて浮かばないのかもしれない。人間なんてそれくらいのものなのかもしれない。もしかしたら。
私が書く時は、もちろん現実逃避のために書くのだが、今回もまた、逃避したいくらいの現実が来たから、それを紛らわせる為に、代わりと言ってはなんだが、せめて楽しんでそれを行えるよう、変な知恵が浮かんできたのかもしれない。確かに私はその妄想のおかげで現実をあまり苦痛に感じずに息子の事を対処出来そうな気がしている。
 

こういうことではいかんなあ、とは思う。計画を立て、着実にコツコツと実行する事はこの10年で学んだ。決して焦らず、腹を立てず、言われたことに忠実に、なるべくそれに近付くよう自発的に努力をする。そうすると確かにある種の満足感は得られた。しかしそれは、私の思いを満たすやり方ではなかった。やりきれないほどの虚しさしか残らなかった。世の他の人はこれで充分満足してやっていらっしゃるのだろう、という感慨しか湧かなかった。業の深さも極まれりだなぁ、と嘆息するしかない。仕方なく諦めて、自分が従来採ってきた方法でやり直すか、と思っている。
 

自分と言うもの。これすらも無いのだと、私の専攻する仏教ではそう説いている。自らの身体感覚。それすらも全ては虚妄であると説く。それに惑わされることなく、やれる事を十全にやり、精一杯やれ。時には眠ることすらせずに、ひたすら全力でやれと教えている。
マジすか、きちぃな、頑張るか。今そう素直に思えているだけ御の字だと思う自分が居る。

 
 
 
 
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2024-10-04 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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