主婦歴20年の私は真田広之 だった
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記事:おおぐろ ゆかこ (ライティング・ゼミ 9月コース)
主婦って美味しい仕事だな。
これが 主婦歴20年になる私の正直な気持ちである。
20年前に結婚。仕事を退職し、専業主婦になった。
今は、家の外でも働いているので「兼業主婦だ」と自分では思っている。
専業主婦でなくなっても、私は「主婦」という肩書を手放したくないのだ。
結婚する前に仕事をしながら同棲していたときは、自分の中に「主婦」という肩書はなかった。
仕事から早く帰った方が 晩御飯を作るというスタイルで、仕事の要領が悪い私が家に帰る頃に、晩御飯ができあがり、お風呂がわいているという日々だった。
なので、結婚して私が専業主婦になるといったとき、夫は「晩御飯作らんでよくなる~」と喜んでいた。
もちろん、結婚前もゴミ出しをしたり、洗濯をしたり、休みの日に掃除をしたりしていたが、それが家事という感覚ではなかった。
その頃の私にとって、家事は仕事ではなかったのである。
家事は「トイレにいったら、お尻をふく」程度のことで、何も考えずにやることであった。
当然、暮らしの質について考えたこともなかった。
食べるものがあればいい。 着るものがあればいい、ゴミ屋敷でなければいい。そんな毎日を送っていた。
それが主婦になってからというもの、「主婦」という仕事と向き合い始めて20年がたち、今は「主婦って、暮らしのプロデューサーやん」 と思っている。
今年の9月に米テレビ界のアカデミー賞と言われる「エミー賞」で真田広之が主演・プロデュースした「SHOGUN 将軍」がドラマ部門の作品賞、監督賞、主演男優賞、主演女優賞などをはじめ、史上最多の18冠という歴史的快挙を成し遂げた。
「ラストサムライ」の出演を機に渡米した真田広之が、ハリウッドで日本文化を忠実に表現するために、どれだけ真摯に作品と向き合っているかをテレビで観た時、「大変やったと思うけど、自分の表現したいことを実現できて、めっちゃ幸せやろな」と思った。
そして、真田広之の幸せ感って、私が主婦として感じている幸せ感とすごく似てるんじゃないかと、日本の片隅の家の中で勝手に感じてしまったのである。
私が主婦になったときから、ずっと思ってきたこと。
それは「家事は有償労働 である」ということだ。
それまで、「働いて報酬をもらう」という世界で生きていたので、主婦という仕事に対しても報酬があるのは、あたりまえだと何の疑問も持たなかった。
専業主婦になった私は家にお金は入れないけれど、 家事を行うことはお金を入れるぐらい価値のあることだと真剣に思っていた。
主婦はお金を生み出す仕事をしていないと言う人に対しても、「なんて失礼なことを言うのだ。主婦は家事のプロなんだぞ」とまだ始めてもいないのに怒っていた。
なので 専業主婦になった私は「主婦は家事のプロなのだ」 と、とにかく家事の腕を磨くべく 、料理、掃除、洗濯をひたすら頑張り始めた。
料理は、栄養バランスを考え、彩りもよく、同じメニューが続かないように考え、仕事から帰った夫が喜ぶようにと頑張って作った。
掃除も隅から隅まできれいになるように、どんな洗剤を使えば汚れが落ちるのかをいろいろ試し、トイレもピカピカに磨いていた。
洗濯は、タオルを干す前に20回パタパタすると、ふんわり仕上がると聞き、毎回パタパタやっていた。
お客様をおもてなしするときは、旅館のお品書きの順番でメニューを考え、「いい奥さんですね」と言われて喜んでいた。
しかし、3年ほどたったとき、ふと思ったのだ。
「私って家事のプロって言えるのかな?」
やっている家事はあくまで自己流。
家の中で1人でやっているので、これがプロの域なのかどうかもわからない。
テレビで「主婦歴30年です」という人に、「長いからすごいんですか?」と、ゆがんだまなざしを送るようになっていた。
これはなんだかいやだな。どうすればスッキリするかな。と考えた私がひらめいたこと。
それは、「家事代行のパートに出ること」だった。
人の家の家事をしてお金がもらえたら、お金をもらえるだけの家事ができた証明になる。
しかも、家事のプロのやり方を知ることができる。
なんてラッキーなんだろうとワクワクしたことを覚えている。
実際に現場で家事作業を始めると、クレームをいただくようなこともなく、「お、家の外でも通用するのだ」とうれしくなった。
それと同時に、一軒一軒のおうちで求められる家事の内容やレベルが異なることも大きな気づきだった。
「ごはん美味し過ぎると、夫にバレちゃうから」と、少し水っぽいスープをリクエストされたこともあるし、「お風呂だけは徹底的にキレイにして」と言われたこともあった。
「主婦=家事のプロ=家事でお金がもらえるくらい家事の上手な人」だと、ひたすら家事能力をあげようとしていた私にとって、「完璧な家事だけが正解ではないのかも」と、新たな視点を持つことができたのだ。
それまで「家事の名プレイヤー」を目指していた自分が、「暮らしのプロデューサー」としての視点に切り替わったタイミングだった。
「世間から認められる家事能力のある人」ではなく「自分はどんな暮らしが作りたいんだろうと考え、それを実現していく人」に方向を切り替えることができたことは、私の主婦としての幸福感を大きく膨らませてくれたと感じている。
我が家は夫婦二人暮らしなので、「二人が楽しく笑顔で暮らしていくための仕組み作り」が、主婦としての私の仕事となった。
そのために、家の中に置く家具、使う食器、タオル、洗剤、食材や調味料など、基本的に決定権は主婦である私にある。
「何を選べば、二人が楽しく笑顔で暮らしていけるか」という視点をもって、家事をする。
この満足感って、自分の作りたい映画を作るプロデューサーと同じくらいの満たされ感なのだ。
だから、夫が「全部家事やるから」と言ってきたとしても、私は絶対に主婦を手放す気はない。
「こんな美味しい仕事を死ぬまでやれたら幸せだなぁ」
渡米して20年の真田広之もきっと思っているだろう。
***
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