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ポジティブ思考は薄まった栄養ドリンクみたいなもの


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:小垣佑一郎 (ライティング・ゼミ9月コース)
 
 

僕は昔からポジティブ思考に対して違和感がある。
それの効果は、一時的に元気になったように錯覚させる栄養ドリンクに似ている。
つかってみると、いっときは気分が上がるし、少しの間は楽になる。
 
これでなんとか乗り切れると感じ、使ってよかったと思う。
しかし、時間が経つと、再び気分がガクッと落ちることが多い。
そしてまた、補給せざるを得なくなるのだ。
 
栄養ドリンクの場合、繰り返し補充することで、身体が元気になったように錯覚し、
何度も頼ってしまう。しかし、飲み続けても、体力がついたり、長期的に元気に
なることはない。
 
変わる部分も、なくはない。
栄養ドリンクに大量に含まれる糖分とカフェインによって血糖値が乱高下されてハイになれる。
このことは身体に多くの悪影響を与える。プラスの効果だと思われているものは、実は酔っ払っているのに近い状態だった。
 
記憶力も空間認識能力も、あらゆる脳の機能も向上しない。
筋肉量も増えない。筋力も変わらないし、運動能力も変化しない。
 
実際に引き起こされる栄養ドリンクの効果は、僕らのイメージするかけ離れた反応によるものだ。
 
栄養ドリンクが一時的な効果しかもたらさないように、ポジティブ思考もまた、同じような現象を引き起こすことがある。
これと同じことが、強引なポジティブ思考の活用によって乱発されている気がしてならない。
 
ポジティブ思考を駆使して、なんとか気分よく過ごそうとする。
これは、状況の悪さを受け入れるのを拒んでいるようにも見える。
 
「まだ半分もコップに水が入っている」と考える。
「試練があるのは、自分にはそれが乗り越えられるからだ」と捉え直してハイになろうとする。
 
実際には、今の自分では乗り越えられないから試練となっているはずなのに、
これでは今の自分でも克服できると錯覚してしまう。
 
「落ちこんでしまっては解決策が思いつかないはずだ」と言わんばかりにポジティブさに頼る。
副作用なんか気にしないで、とりあえず即席で気分だけは上げておこうとする。
そうしておけば、いつか起死回生のアイデアが降ってくると信じながら。
 
しかし、どんな捉え方をしても、
現実に起きていることは何一つ変わらない。
前向きだろうと後ろ向きだろうと、現実問題はそのまま残るのだ。
現実を直視しなければ、解決策が見つかることはない。
 
 
最近のポジティブ神話はかなり加速している。
 
「ネガティブな事を少しでも考えたら引き寄せちゃうので、
一切のネガティブ思考は捨ててポジティブ思考だけでいきましょう」
というようなことまで言い出す人が現れた。
 
アフィリエイターやセミナー講師にとっては都合はよくても、
実際にはかなり怪しい話だ。
 
医療の「プラセボ効果」でいうと、
 
・偽薬だと分かっても効果が出る
・効果がないと聞いても効果が出る
 
という性質があり、その教えは嘘であるとわかる。
ポジティブのなかにネガティブが混ざってもポジティブの効果は
得られるということになるからだ。
 
付け加えると、考え方などどうでもいい。
問題のほとんどは、別の要因で解決する。
 
未払いの家賃を工面するとき、
「まだ諦めなくても大丈夫だ」と自分を鼓舞するよりも、
誰かにお金を借りるか、支払いの延期を大家さんにお願いするほうが解決の確率が上がる。
 
ポジティブのおかげで好転したと考えられるものの多くは、
もともと放置していてもそのうちに改善したものだった可能性が高い。
 
 
僕たちはストレスがあらゆる病気を招くと洗脳でもされたのだろうか?
わずかなストレスを避けるために多大な労力を費やすようになったのはいつからだろう。
 
ストレスを怖がり過ぎて、勝手に解決されるようなお手頃な試練にも背を向けてしまうようになり、
人々の問題解決スキルは驚くほど伸びなくなったように思える。
問題解決の実践から逃げながら、自己啓発書で勉強しているのは滑稽だ。
 
ポジティブによって気軽に気分の良さを求めると、問題から目を逸らす癖がつく。
知的忍耐力(我慢して考え続ける力)も弱まってしまう。
 
そして、重大な問題を、重大であると現実的に捉えられなくなる。
現実から離れるほど、解決からは遠のいてしまう。
 
重大な問題や課題というのは苦しくて当然である。普通だったら落ち込む。苦しいし、解放されたい。
だからこそ、必死にもがいて、解決をし、克服を考える。
 
コキブリだらけの部屋に閉じ込められたらすぐにでも逃げ出そうと暴れるはず。
それくらいになって、はじめて解決しようとするのが人間というものだ。
 
ポジティイブ思考で気分の回避は可能かもしれないが、解決には向かない。
気分をねぎらい過ぎている時点で、まだ問題に向き合うレベルになれない。
 
僕は決して、誰かが傷つくことを望んでいるわけではない。
むしろ、共に課題に向き合い、乗り越えられる仲間がほしいだけなのだ。
 
だからこそ、僕は余計なことをしてくるポジティブ思考に、強い憎しみを感じざるを得ない。
人を支えたいというその意図が、かえって問題から目を逸らす手助けをして
しまっているように思えてならない。

 
 
 
 
***
 
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2024-10-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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