メディアグランプリ

1日は48ピースのパズルだ!


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:服部達哉(ライティング・ゼミ9月コース)
 
 

※この記事はフィクションです。
 
 時雄は、自称「時間術マニア」だった。本棚には時間術やタイムハックに関する本がズラリと並んでいる。しかし、時雄はいくら本を読んだり講座を受けたりしても、実際の時間管理がうまくいかず、効率的に仕事をこなすこともできていなかった。やり残した仕事を休日にこなすことで締め切りには必ず間に合わせていたが、もっと時間の余裕が欲しいと思っていた。いろいろなことに手を出すことが好きな時雄は、好きなことを好きなだけやるためにももっと時間をうまく使いたいと常に思っていた。
 
「締め切りは守れているけど、どうも余裕がない。それに、やりたいことが多すぎるのに、時間が足りない。これだけ時間管理について勉強しているのに、やりたいことに対して時間が足りなさ過ぎるんだ!」
 
 ある日、時雄は重要なプレゼンテーションの準備に追われていた。「あと1時間もあれば終わるだろう」と思い、ちょっとした息抜きのつもりでYouTube動画を見始めると、関連動画を次々とつまみ食いしていき、気づくと2時間も経っていた。その後遅れを取り返すつもりが、気がつけば夜中の2時になっていた。それでいて、まだ準備の終わりも見えていなかった。
 
「なぜだ? あと1時間もあれば終わると思っていたのに……。これじゃあ、動画を見ていた2時間がなくても終わっていなかったぞ。これだけ時間管理について勉強しているのに、なぜ自分はこんなにも時間をコントロールできていないんだ?」
 
眠気でもうろうとする意識の中、時雄はふと気がついた。
「そうだ。自分のことなのに、自分がプレゼンテーションの準備にどれくらいの時間が必要かわかっていなかった。それに、だらだらと無目的に動画を見てしまうのにどれくらい時間を使ってしまうのかも。時間の見積もりが完全に外れているんだ!」
 
心機一転、時雄は新しいアプローチを試すことにした。といっても、時間術マニアの時雄にとってはよく知っているテクニックだ。それは、25分間集中してタスクに取り組み、5分間の短い休憩を取る、という時間管理術だ。この手法を考案したイタリア人がトマト型のキッチンタイマーで時間を測っていたことから、ポモドーロテクニック(イタリア語でポモドーロはトマトを意味する)と呼ばれているものだ。
 
 時雄自身、この手法を知りながらも試したことはなかった。なぜなら、集中しだしたら25分はあっという間だし、せっかくの集中を中断したくない。自分には合わない手法だと思っていたからだ。だが、今回は違う。時間管理ではなく、時間測定に使ってみようと思ったのだ。
 
 最初に取り組んだのは、週次報告書の作成だった。時雄は25分の作業と5分の休憩を1セットとし、報告書の作成を終えるまでをキッチンタイマーで測った。結果、50分、つまり2セットで報告書を完成させることができた。
 
「なるほど、週次報告書は2ポモドーロもあれば終わるんだな」
時雄は自然とポモドーロという単位を口ずさんでいた。
 
 それからというもの、時雄は生活のあらゆる面でこの「ポモドーロ計測」を始めた。朝起きてからの身支度には2ポモドーロ、急げば1ポモドーロ、通勤時間は4ポモドーロ、入浴は1ポモドーロ……
 
 時雄は1日を48ポモドーロ(30分×48 = 1440分 = 24時間)に分割し、各タスクをポモドーロ単位で組み合わせていった。まるでパズルのピースをはめ込むように。
「これだったんだ! 俺が求める時間管理術は。まずは自分の行動にどの程度の時間がかかるかを計測し、自分に必要な時間を知ることだったんだ!」
 
 自分の時間管理術に手応えを感じ、以前から悩ましく思っていた別の問題にも取り掛かった。時雄は元々時間には正確な性格で、時間にルーズな家族に悩まされていたのだ。時間がルーズな人に合わせていたら、ただでさえ貴重な自分の時間が無駄にされている思いだった。
 
「まだ準備できないの? とっくに出発予定時間過ぎてるんだけど」
休日の外出前、以前の時雄はいつも準備の遅い娘たちに苛立っていた。以前ならこの待ち時間は何もせずに、ただイライラするだけだった。しかし、今の時雄は違う。他人の時間もポモドーロ単位で計測することにしたのだ。
 
「そうか、娘の準備には2ポモドーロかかるんだな」と、時雄は気づいた。「妻は1ポモドーロあれば準備は終わる。娘はお風呂に入ると3ポモドーロは占領されてしまうから、それより早く入るか、先に入られてしまったらあのタスクをやろう……」という具合だ。
この発見によって時雄の生活は一変した。他人がからんでくる時、その他人が生み出すポモドーロと自分のタスクがうまくかみ合えば、時間を無駄にすることもなく、イライラすることもなくなったのだ」
 
 こうして時雄は時間管理の方法は自分だけでなく、他人がタスクにかける時間を計測し、見える化することで自分のタスクをそこにパズルのようにはめ込むことが、自分にとっての時間術の本質であることに気づいたのだ。
 
 ある日、時雄は仕事で大きなプロジェクトを任された。以前なら休日返上でこなせばなんとかなっていただろう。しかし、今の時雄は違った。
 
「よし、このプロジェクトは全部で何ポモドーロかかるかな」
時雄は冷静に分析を始め、「資料作成に20、ミーティングには15、最終プレゼンテーション準備には10ポモドーロだな……」
 
時雄はプロジェクト全体を細かく分解し、自分の日々のスケジュールにパズルのように組み込んでいった。
 
「完璧だ」時雄は満足げに微笑んでいた。「これなら期限内に確実に終わるだけでなく、趣味の時間も確保できるスケジュールだ」
 
そう、仕事もプライペートも同じパズルの1ピースとしてスケジュールにはめ込むことで、何かを犠牲にしたり我慢したりすることなく、時雄は仕事の効率化や生活の質の向上を実現していた。時雄の日々のスケジュールは、他人も含めた48ピースのパズルを組み合わせたものだ。1日ごとに新たなパズルが時雄の前で組み上がっていった。
毎日欠けなく組み上がったパズルが完成するたび、成長を感じる時雄だった。

 
 
 
 
***
 
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2024-10-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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