お坊さんの選び方
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:柏原健太郎(ライティング・ゼミ9月コース)
「かわいい若くてかわいい女の子紹介してくださいよ」
生ビール片手に話していた。赤ちょうちんで冗談を言う中年男、これを口にしたのはまさかの僧侶だ。目の前の彼は、ありがたそうに大ジョッキをぐいっと一気に飲み干し、笑いながら「いやあ、人生楽しくないとね」と続けた。この瞬間、私は悟った。僧侶って、一体何なのだろう?
最近、孤独死物件の供養を頼むためにいろんな僧侶と話をしてきたが、こんなにも多様なお坊さんがいるとは思わなかった。イメージでは、お坊さんといえば厳格で真面目、どこか世俗とは距離を置いているものかと思っていたが、実際はどうやらそんなに単純ではないらしい。彼らも私たちと同じ、欲望も煩悩も抱えて生きている。特にこのビール片手にジョークを飛ばす坊さんは、その象徴だ。
ふざけた会話の中にも、彼の言葉には妙に説得力があった。「打つ、飲む、買う、これも仏教の教えだよ」と笑う彼に、最初は何を言っているのかと思ったが、次第に「まあ、確かに」と納得しかけている自分がいた。彼の主張によれば、人生を楽しむこと、欲望を抑えつけすぎず、無理をしないことが、むしろ仏教的な生き方なのだという。
「だってさ、欲望がなければ修行する意味ないじゃん?」と、にっこり笑う彼。深いんだか、浅いんだかよく分からないが、その自由さにはどこか魅力がある。
それに比べ、別の住職と話した時はまったく違った印象を受けた。その住職は、言葉を慎重に選び、姿勢もまるで修行僧そのもの。「仏の教えを日常に活かすことが、私たちの役目です」と真面目に語る彼には、確かに安心感があった。敬意や丁寧さがにじみ出ていて、「この人は本物だな」と一瞬で思わせるオーラがある。法話も見事で、説教を聞いていると心が洗われるような気分になる。だが、ふと感じるのは、その完璧さゆえの「裏はないのか?」という疑念だ。あまりにも綺麗すぎて、逆に何かを隠しているのでは?と考えてしまうのだ。
こうして考えると、僧侶という存在もまた、人間の複雑さを映し出している。遊び心たっぷりで人生を楽しむ僧侶が、実は自分に一番正直で、裏表がないのかもしれない。そして、逆に、表面的には誠実で立派に見える僧侶ほど、何か隠し事をしている可能性がある。
人は皆、どこかで何かを隠して生きている。それをどう捉えるかは、結局のところ、私たち自身の感覚や価値観に委ねられているのだろう。
実際、人生を楽しむ僧侶にも信頼できる部分は多い。私が出会った「打つ、飲む、買う」系僧侶は、欲望を隠さない。その姿勢は、むしろ爽やかで、清々しい。欲望を恥ずかしがらず、むしろ正々堂々と楽しんでいる。
そんな彼らにこそ、何の隠し事もない信頼感があるのではないかと感じる。確かに、一見すると俗っぽくて軽薄に見えるかもしれないが、少なくとも彼らは「本音」で生きている。自分を隠さず、世間に迎合しない姿勢は、何よりも誠実だ。
一方で、誠実で真面目な僧侶は、表面的には完璧に見えるが、その奥に何かあるのではないかという疑念が拭えない。
「信頼できるか? 」と問われると、確かに答えに詰まる。慎重に言葉を選び、敬意を持って接してくる僧侶ほど、裏の顔があるのかもしれない、そう思ってしまうのだ。
結局のところ、どの僧侶を信頼するかは、私たち自身の直感や経験に頼るしかないのだろう。遊び心のある僧侶も慎重で真面目な僧侶も、それぞれに違った魅力があり、どちらが正しいかは一概には言えない。どちらもそれぞれのやり方で仏教の教えを体現しているのかもしれないし、またどちらも何かを隠しているかもしれない。
「仏説摩訶般若波羅蜜多心経」を唱えるべき僧侶を選ぶという行為は、単なる供養の手配ではなく、人生の選択に近いものだ。どんな僧侶を選ぶかという問いは、実は「自分はどう生きるのか?」という問いと重なってくる。欲望に正直に生きるのか、あるいは自分の本音を隠しつつも慎重に生きるのか。どちらの生き方が正解かは分からない。ただ、私たちはその選択を通じて、自分自身の生き方を見つめ直すことになる。
最終的に、私たちが信頼できるのは自分の感覚だ。僧侶の表面的な姿や言葉に惑わされず、その人が持つ本質を感じ取るしかない。どの僧侶を選ぶにしても、私たち自身がその選択に納得できるかどうかが大切なのだ。そしてその選択が、私たちの生き方そのものを映し出す鏡となる。だからこそ、僧侶選びは単なる供養の依頼以上に、私たちの人生に深く関わるものなのだ。
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